名古屋市美術館協力会 「北斎展」ミニツアー

カテゴリ:Ron.,ミニツアー 投稿者:editor

レクチャ室にて、学芸員の話に集中する会員一同

レクチャ室にて、学芸員の話に集中する会員一同

 1月26日(日)に行われた「北斎展」ミニツアーに参加しました。
 ミニツアーは、名古屋市周辺で開催中の展覧会を「現地集合・現地解散」で鑑賞するという、気軽に参加できる行事です。平成23年に始まり、今年は足掛け4年目。平成26年最初のミニツアーは、金山の名古屋ボストン美術館で開催中の「ボストン美術館 浮世絵名品展 第三弾 北齋」です。
 当日は、名古屋ボストン美術館のある金山南ビル1階の壁画前に午前10時集合。ボストン美術館の入口を見上げると長い行列ができていました。我々33名のミニツアー参加者は集合場所でチケットをもらえたので、開館と同時に、行列を横目で見ながら5階レクチャールームに直行し、学芸員の解説を聞きました。
 解説によれば「今回の北斎展は142点の作品が展示されている。これまで名古屋市博物館や名古屋市美術館で記載された北斎展にくらべ、数は少ないが、世界でボストン美術館にしかない作品(役者絵「難波六郎常任」、団扇絵「菖蒲に鯉」、狂歌本「花の兄」)を含め、これまで日本で展示されていない作品が9割を占めており、保存状態の良いものを揃えているので見ごたえがある。」とのことでした。
 40分ほどの解説を聞いた後、各自、自由行動となりましたが、「4階は混んでいるので、5階から鑑賞するのがお勧め」というアドバイスに従い、後期の作品から見始めました。「芥子」や「文鳥 辛夷花」などの花鳥図や「百物語 小はだ小平二」などの錦絵、いずれも色彩が鮮やかで「保存状態が良い」という解説は嘘ではないと感心しました。「百人一首うはかゑとき 持統天皇」「百人一首うはかゑとき 小野小町」では、線彫りだけの「校合摺(きょうごうずり)」も併せて展示されており、浮世絵は絵描きだけでなく、彫りや摺りの技量にも支えられていることを強く感じました。5階には、名古屋で出版された「北斎漫画」(個人蔵)も、名古屋ボストン美術館限定で特別展示されています。
 4階には「神奈川沖浪裏」「凱風快晴」などの代表作が展示されており、とても見ごたえがありますが、見ている人が多く、体力を消耗します。5階を先見ておいてよかったです。本物を見ると、空摺り(?)による凹凸(エンボス)で表現したトンボの羽根や波などもわかり、一見の価値があります。まだ見てない人は、ぜひどうぞ。(もちろん、市美もよろしく)
 翌日の新聞には「北斎展、来館者3万人達成」という記事が載っていました。                                                                              会員 Ron.
ユーモアたっぷりのお話をしてくださった鏡味千佳学芸員

ユーモアたっぷりのお話をしてくださった鏡味千佳学芸員

鑑定士と顔のない依頼人(The Best Offer)

カテゴリ:アート・ホット情報 投稿者:editor

名古屋のデパートで新春セールを一回りした後、気になる映画を見たのでレポートします。

「鑑定士と顔のない依頼人」
監督・脚本/ジュゼッペ・トルナトーレ 音楽/エンニオ・モリコーネ 
出演/ジェフリー・ラッシュ、ジム・スタージェス、シルヴィア・ホークス、ドナルド・サザーランドほか
http://kanteishi.gaga.ne.jp/

 市美のエコパリのコーナーでは、モディリアーニ、シャガール、藤田嗣治などの描いたポートレイトを多数、見ることができます。市美の展示室でポートレイトに囲まれているときはあまり感じないのですが、他館の美術展でずらりとポートレイトが並んだ展示室に入ると、多少の居心地の悪さを感じることがあります。たわいないことですが、画中の人物の意味ありげな視線に、つい恥ずかしくなるのです。
これが風景画なら、ゆっくり眺められるのですが。

 さて、今回の映画の主人公は「鑑定士」。仕事でも美術品に囲まれ、自宅でも名画に囲まれ暮らしています。ミステリーなので、あれこれトリックめいた設定もあるのですが、骨董家具や絵画の修復や鑑定の様子、オークションで作品が落札されていく様子がリズミカルに描かれ、どんどん作品に引き込まれていきました。

あらすじは省略。

 見終って感じたのは「余白に込められた意味深さ」というか、すてきな「だまし絵」に遭遇した、というものでしょうか。作中でも「本物」と「偽物」のあいまいな関係について、繰り返しエピソードが語られていたので、ハッピーエンドか、バッドエンドか、どこからが偽物だったのか、思い返しながら映画館を後にしました。

とても印象に残る作品でした。

会員:杉山 博之