先日開催された「マリー・ローランサンとモード」の協力会向け解説会で解説された勝田学芸員から「バイアスカット」という言葉が出てきました。その場で質問すればよかったのですが、気後れして質問を回避。以下は、「バイアスカット」について、ネット等で調べた内容です。ただし、正確さは保証の限りではありません。
1 マドレーヌ・ヴィオネについて
マドレーヌ・ヴィオネ (Madeleine Vionnet:1876 – 1975)は、シャネルと同様、第一次世界大戦後に活躍したデザイナー。マドレーヌ・ヴィオネは立体裁断の技法を追求し、バイアスカットやサーキュラーカットなど、新しいパターンの衣服を提案。彼女の衣服は、のちのデザイナーたちに強い影響を与えたとのことです。
出典:『世界服飾史のすべてがわかる本』能澤慧子 監修 発行所 株式会社ナツメ社 2012.03.12初版発行
2 バイアスカット (Bias Cut) について
1920年代に確立されていった、洋裁での生地の使い方のひとつ。生地の縦と横の地の目に対して斜め方向を利用したカッティングのこと。伸縮性が生まれると同時に動きが出せるので、フィット感があり、きれいなドレープを形作ることができる、とのことです。
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3 立体裁断 (Draping) について
洋裁での制作過程のひとつ。トルソー(人台)に布を当てて、立体的に型紙(パターン)を作ること。マドレーヌ・ヴィオネは、1/2の縮小サイズのトルソーを用いた立体裁断で、バイアスカットを生かしたドレスを作っている、とのことです。
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4 山崎豊子が描写した「立体裁断」(『女の勲章』より)
マドレーヌ・ヴィオネが追求した「立体裁断」の技法ですが、山崎豊子が1961年に発表した小説『女の勲章』に、その様子を描写した箇所があります。それは、主人公の大庭式子(服飾デザイナー・聖和服飾学院長)が、ドレスの型紙を手に入れる交渉をするため、フランスの著名なデザイナー・ランベール(モデルはクリスチャン・ディオール:Christian Dior、1905 – 1957)を訪ね、「立体裁断」の実技を見学する場面。作業の様子が目に浮かぶ文章なので、以下に引用します。
ランベールは(略)仮縫室の前へ来ると(略)仮縫室にいるマヌカンの体に、トワール(実物の布地で服をつくる前に木綿や麻で作る実物見本)を巻きつけ、マヌカンの体の上で大胆に鋏とピンを使ってドレープの多いブラウスの形を作り出した。まるで頭の中にある布地の彫刻を創るような奔放さで、人間の体の上で自由自在に布地を操り、自分のイメージに合うシルエットになると、トワールを解いて、それを製図用紙の上へ平らに広げて、トワールから型紙を創り出した。細かく鉛筆を動かしながらランベールは、式子の方へ強い語調で話しかけた。
「優れた服は、尺度(メジャー)とコンパスでひかれた型紙を基にして、いきなり美しい布地を裁断し、縫製するのではありません、最初に服の形をデッサンし、デザイン画が出来上がると、それをトワールにして十分、シルエットの検討をするのです。このトワールによる検討は、美しい色や材質に惑わされず、シルエットそのものの検討が出来るから、これでシルエットの基礎を決め、それから流行の色や柄を取り上げることです、どんなに目新しい色や柄を駆使しても、美しいシルエットが出ていなければ、それは良く出来た衣装の白粉(おしろい)の役を果たすだけで、ほんとうに完成された服ではありません。私は美しいシルエットを出すために、一着の服を作り上げるのにも、何度もトワールで服のシルエットを検討し、納得してから初めて、それを製図用紙の上に写すのです、だから私の型紙は紙の上に、尺(さし)とコンパスで安易に引かれた平面製図ではなく、トワールから割り出された立体製図なのです」(略)
新潮文庫『女の勲章』下巻 p.189-191
<補足>
1961年に京マチ子主演の映画『女の勲章』が制作され、最近では、2017年に松嶋菜々子主演のテレビドラマが放送されました。(1962年、1976年にもテレビドラマの放送があります)
5 FASHION PRESS 『ディオール「バー」ジャケットの歴史』
これは、ネット上に掲載された記事で、クリスチャン・ディオールが新しいドレスのデザイン画を描いてから、ドレスを制作し、ファッションショーで発表するまでを記録した動画を収録しています。動画では、『女の勲章』の描写のとおり、ディオール本人がマヌカンの体にトワールを巻きつけ、自分のイメージに合ったシルエットになるまでトワールに手を加える、という様子を見ることが出来ます。
YouTubeのURLなど
URL: ディオール「バー」ジャケットの歴史、ニュールック誕生から最新作まで進化するメゾンのアイコン – ファッションプレス (fashion-press.net)
収録している動画の題名:The world of Monsieur Dior in his own words
Ron.
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