展覧会見てある記 愛知県美術館「近代日本の視覚開化 明治」 2023.05.01 投稿

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愛知県美術館(以下「県美」)で開催中の「近代日本の視覚開化 明治」(以下「明治展」)に行ってきました。展示室には300点を越える品物が犇(ひし)めき合い、駆け足で見ても1時間半近くかかりました。明治展は品数の多さと、展示品が持つ迫力に圧倒されて疲れます。疲れないように鑑賞するコツは、ズバリ「見たいものを見る」ということです。

ただし、体力に自信のある方は「何でも見てやろう」と駆け回ってください。何時間見ても、飽きることがありません。それは、明治展が「展示物が持つ迫力を、サーフィンするように楽しむ」展覧会だからです。以下、展示品のなかから幾つかをご紹介します。

◆第1章 伝統技術と新技術

 見ものは、先ず「五姓田派」(ごせだは:横浜を拠点とした絵師の集団)の作品が「これでもか」と、並んでいることです。渡辺崋山の国宝《鷹見泉石像》へのオマージュが並んでいるような感覚を覚えました。《鷹見泉石像》は、西洋絵画と同じ技法・テーマを目指した幕末の肖像画、五姓田派の肖像画は日本の伝統技法を土台にした油絵への挑戦ですから、気持ちが通って当然。「幕末と明治は、一続きのものだ」と感じました。

次に、東京国立近代美術館で開催中の「重要文化財の秘密」では高橋由一の《鮭》を展示していますが、県美でも小さな作品ながら「鮭」を鑑賞できます。それは、五姓田義松の油絵です。池田亀太郎の《川鱒図》も見もの。ただ、作者の説明を見落としたのは残念。

最後に、明治展では、名古屋市美術館で開催中の「コレクションの20世紀」(以下「20世紀展」)と同じ画家の作品が鑑賞できました。画家の名前は野崎華年。20世紀展の出品は1点ですが、明治展は3点。しかも、明治展のうち1点は名古屋市美術館蔵でした。

◆第2章 学校と図画教育

 思わず立ち止まったのは、小栗令裕の石膏像《欧州婦人アリアンヌ半身》と寺内信一《裸婦像》です。しかも、《裸婦像》は「陶」つまり「せともの」なのです。

◆第3章 印刷技術と出版

 きれいな地図や昔の写真がたくさん並んでいる中で、岡田三郎助《ゆびわ》に目が留まりました。岡田三郎助の原画を元に、多色石版の技術で印刷したもの。雑誌の付録として印刷されたものですが、明治の終わりごろの印刷技術の高さに感心しました。

◆第4章 博覧会と輸出工芸

 何といっても高度な技術を凝らした陶磁器や七宝、錦絵が目を引きます。でも、個人的には寄木細工の「チェステーブル」に注目。用途はチェスですが、寄木細工の柄は日本調。面白いと思ったのは、二つの工夫です。一つは、折りたたみ式の天板。折りたたむとチェス盤、広げるとテーブルに早変わりします。もう一つは、引出しの一番下の板。引き出すと、飲み物などが置ける棚になるのです。この「折りたたみ式の天板」と「引き出せる棚」、二つともジェイアール名古屋タカシマヤで開催された「北欧デザイン展」で見ました。食器棚で「引き出せる棚」を、テーブルで「折りたたみ式の天板」を取り入れていました。いずれの工夫についても「日本の箪笥の影響を受けている」との説明がありました。

Ron.

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