新聞を読む 愛知県美術館「近代明治の視覚開化 明治」展 関連記事

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2023.05.21

愛知県美術館で開催中の「近代明治の視覚開化 明治」展(以下「明治展」)関連の記事が2023年5月20日付の日本経済新聞「文化」欄と週刊文春5月25日号に掲載されました。また、日本経済新聞「文化」欄で連載中の「写真と絵のはざまで 十選」でも明治展で紹介された五姓田芳柳と横山松三郎を取り上げているので、ご紹介します。

〇日本経済新聞 2023年5月20日(土)「近代日本の視覚開化 明治」展(執筆:客員編集員 宮川匡司)

 「混沌とした時代情勢の中で生まれ育った明治の美術、再発見の試みを見つめてみよう。」という前書きに続き、「教科書的な明治の美術史とはずいぶん趣が異なる。(略)重点を置くのは、従来の美術史が見過ごしがちだった明治初期から中期の、すそ野の広い技術や造形の姿である」と、明治展を紹介。

図版は、高橋由一《甲冑図》(1877)、橋本雅邦《水雷命中之図》(明治時代)、「大倉孫兵衛旧蔵錦絵画帖」より《菊に尾長鳥》(明治10年代)の三点。記事では《甲冑図》を「新時代の西洋画法による、傷つき敗れ去る者の魂を鎮めるような入魂の描写は、江戸と明治という二つの時代を生きた由一ならではだろう」と評し、図版はありませんが、近年新しく発見された五姓田義松の《鮭》についても触れています。《水雷命中之図》については「まぎれもない油彩画である」と、《菊に尾長鳥》については「絵師は不明だが、深い紅色を背景にして菊や桔梗、鳥や蝶を配した濃密な画面に目を奪われる」と、評しています。

最後に、展覧会の構成を「出品は約300点。教科書、雑誌、愛知の陶磁器や写真館にまで対象を広げ、名品ばかりの美術展とは対照的な構成だ」と書いています。記事のとおり、企画者の意気込みが伝わる展覧会です。

〇 週刊文春 2023年5月25日号 その他の世界㉕(執筆:静岡県立美術館館長 木下直之)

 記事は、明治展と東京静嘉堂@三の丸で開催中の「特別展 明治美術狂想曲」に関するもの。明治展の印象は「オモチャ箱をぶちまけたような展覧会」というもの。複数の写真を重ねて焼き付ける技法で特許を取った、名古屋の写真家・宮下守雄の「ハテナ写真」について「嘆き悲しむ男の背後に、女の姿がすーっと立っている。いや、足がないから浮かんでいる(略)深刻ぶってはいても、演出過剰で笑える」と書き、「混沌とした明治の美術にふれる意義は大いにある」と締めくくっています。明治展に注目していることは、確かです。

〇 日本経済新聞 2023年5月16日(火) 写真と絵のはざまで 十選(5)

(執筆:江戸東京博物館学芸員 岡塚章子 (7)(8)も同じ)

 写真と絵画の関係について書いた記事で、期せずして明治展と重なっています。(5)で取り上げたのは五姓田芳柳《牧口義規矩十歳》。明治19(1886)年4月8日に撮影した写真を元に製作した絵。慶応技術への入学記念として絹地に描いた西洋風の肖像画で、明治展に並んでいた絹本著作の肖像画と同種のものです。「見栄えのする彩色された大きな肖像画には、依頼者の思いが込められている」と、記事は書いていました。

〇 日本経済新聞 2023年5月18日(木) 写真と絵のはざまで 十選(7)

 明治展で展示している旧江戸城写真を撮影した横山松三郎が制作した「写真油絵」に関する記事です。「写真油絵は、撮影した写真の表面の画像だけを残して裏紙を削り取り、裏から油絵の具で着色する技法である」と書いています。明治展でも、名古屋の宮下写真館が制作した「写真油絵」を展示していましたね。

 

〇 日本経済新聞 2023年5月19日(金) 写真と絵のはざまで 十選(8)

 横山松三郎が没した翌年の明治18(1985)年、横山の弟子・小豆澤亮一と同門で画家の亀井至一との間で起きた、「写真油絵」を巡る訴えに関する記事です。この訴えは「特許審決第1号となった」とのことでした。

◆最後に

 日本経済新聞(2023.5.20)と週刊文春(2023年5月25日号)の内容が重なるのは分かりますが、「写真と絵のはざまで 十選」までも重なっているので、ブログを書いた次第です。

Ron.

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