読書ノート 「週刊文春」(2021年9月23日号)ほか

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

◆「週刊文春」 名画レントゲン(21) 秋田麻早子  情念の色味・配色・筆致を味わう

フィンセント・ファン・ゴッホ「夜のプロヴァンスの田舎道」(1890)

 名古屋市美術館に巡回予定の「ゴッホ展―響きあう魂 ヘレーネとフィンセント」(2022.2.23-4.10)(以下「ゴッホ展」)出品作品の解説です。秋田麻早子はこう書いています。

〈この短くうねる筆触で埋め尽くされた画面は、ゴッホらしさそのもの。(略)この特徴的なスタイルを確立したのは最後の数年のこと。(略)この絵が描かれたのは、療養のために1889年から1年ほど過ごしたサン=レミ時代も終わりに近い最晩年。(略)絵の解釈についても(略〉詩を読むようなイメージの広がりを見出すでしょう。この構図は現実の風景そのままではなく、ゴッホが再構成したものだけに一層そう感じられます。糸杉は単なる木ではなく、古来より生と死の両方を象徴してきたもので、この絵を見る人に約2か月後のゴッホの死をどうしても連想させます。(略))(引用終り)

 映画「ゴッホとヘレーネの森」でも、キュレーターが〈1890年4月20日の夜は、水星と金星が重なり合い、三日月に接近していた。彼は、このイメージを心に刻み、1カ月後、月と星を対照的に描いた。プロバンス滞在時の要素を詰め込んだ、一種の集大成だ〉と解説していました。

 傑作の呼び声が高い作品です。こんな記事を読むとゴッホ展が待ち遠しくなります。

◆AERA mook「ゴッホ展―響きあう魂 ヘレーネとフィンセント 完全ガイドブック」2021.9.30  INTERVIEW  ヘレーネ・クレラー=ミュラーって どんな女性ですか?

 上記のインタヴューの中で「ヘレーネはゴッホのどこに惹かれたのでしょうか」という質問に対し、名古屋市美術館学芸員・森本陽香さん(以下「森本さん」)は「ヘレーネは最初、アルルやサン=レミ時代の、力強い作品に惹かれたんですね」と答えていました。また、「イチオシ来日作品Best3」として、①《夜のプロヴァンスの田舎道》、②《悲しむ老人「永遠の門にて」》、③《レモンの籠と瓶》の3点を挙げています。《夜のプロヴァンスの田舎道》は、森本さんも「イチオシ」です。

森本さん「イチオシ」のNo.3=《レモンの籠と瓶》については、映画「ゴッホとヘレーネの森」の中でナビゲーターが、次のように話していました。「ヘレーネも、彼の絵で無限の世界に浸った。“レモンの静物画”(注:《レモンの籠と瓶》のことです)を何時間も眺め、手紙に書いた。『絵から万物の完全性を見て取った』『神聖な原則があるの』と」

なお、「名古屋市美術館の巡回展の見どころは」という質問もあり、森本さんは「ヘレーネの美術館に入っていくワクワク感を演出したいです。(略)ヘレーネの理想を再現したいと計画中です」と答えています。展覧会では、どんな風にワクワク感が演出されるのか?楽しみですね。

◆蛇足

ゴッホ展は「サンエイムック 時空旅人 別冊」2021.10.14発行 にも、特集記事があります。

なお、AERA mook の記事ですが、p.52の《麦束のある月の出の風景》と、p.53の《サン=レミの療養院の庭》の説明に「※本展には出品されません」と書かれていますが、ゴッホ展の出品リスト(https://www.tobikan.jp/media/pdf/2021/vangogh_worklist.pdf)には、出品作として掲載されています。ご注意ください。

 Ron.

コメントはまだありません

No comments yet.

RSS feed for comments on this post.

Sorry, the comment form is closed at this time.