「暑い日なら空いているだろう」と思い、先週の猛暑日に碧南市藤井達吉現代市美術館で開催中(9/9まで)の「長谷川利行展」(以下「本展」)を鑑賞。外気温が40度近くでも展示室内はひんやり。羽織るものを持ってこなかったことを後悔しました。
◆大盤振る舞いの展覧会
順路は2階の展示室から。作品リストの点数は144点ですが、うち6点は本展に出品されず、15点は後期展示(8/14~)なので前期の展示作品は122点。写真パネルや歌集「長谷川木葦(きよし)集」などもあるので、作品・資料が1階、2階の展示室4室にぎっしりと展示されています。しかし、入場料は900円と大盤振る舞い。お得感いっぱい、大サービスの展覧会です。英語の展覧会名は ”HASEKAWA Toshiyuki Retrospective”。「はせがわ りこう」ではないのですね。
◆Ⅰ 上京-1929 日暮里:震災復興の中を歩く
展示は年代順に3章で構成。第1章は《自画像》や二科展に初入選した《田端変電所》から始まっています。肖像画ではチラシに載っていた《靉光像》のほか《針金の上の少女》に目が留まりました。《夏の遊園地》《汽罐車庫》は大画面で迫力があります。TV番組の「開運!なんでも鑑定団」に出された《カフェ・パウリスタ》や神谷バーを描いた《酒売場》も目を惹きます。
どれもフォーヴィスムの作家のような荒いタッチの描き方で、人により「好き・嫌い」がはっきりと分かれる作品です。「感想ノート」を開くと熱狂的な書き込みが目立ち、「好き」な人にとってはたまらない展覧会だと感じました。
◆Ⅱ 1930-1935 山谷・浅草:街がアトリエになる
《岸田国士像》の解説に「4~5日かけて制作。小遣いをねだる。」と書いてあり「身近には居てほしくない」人に思えます。半面、写真パネルの解説を読むと麻生三郎などの後輩作家からは慕われていたようです。また、「へたも絵のうち」を読むと熊谷守一は長谷川利行の振舞いに呆れながらも、好意を持って接していたようです。
《酒祭・花島喜世子》は髪の毛が4本の角のように横に突き出たユニークな女性像。《水泳場》の解説には「隅田公園の屋外プールを田中陽の元で30分ぐらいかけて制作」と書いてあり、他人の家を転々としながら描いたことや早描きの作家だったことが分かりました。
なお、中日新聞に掲載されていた展覧会会場の写真には《女》《鉄道の見える風景》が写っていましたね。
◆Ⅲ 1936- 死 新宿・三河島:美はどん底から生じる
第3章の解説には2年間に14回も長谷川利行展を開催した天城画廊の天城俊明(本名:高崎正男)のことが書いてありました。確かに1936年(昭和11)から1937年(昭和12)に制作された作品が「これでもか」というほど展示されています。「無理やり」だったかもしれませんが、天城俊明がいなかったらこれほど多数の作品は制作されなかったと思われます。この章の《白い背景の人物》は新たに発掘された作品。《ハーゲンベックの少女》は現代アートみたいです。千住火力発電所のお化け煙突絵を描いた《荒川風景》には「死」を感じました。
また、愛知県美術館・木村定三コレクションから《霊岸島の倉庫》《伊豆大島》《ノアノアの少女》《パンジー》などが出品されています。長谷川利行は「木村定三好み」の作家の一人だったのですね。
《裸婦》(洲之内コレクション)など、ガラス板の裏から描いたガラス絵も多数展示されています。どれも小さなサイズですが、きれいな作品です。
◆おまけ=大正館で昼食
昼食は名鉄・碧南駅前の「大濱旬彩 大正館」。大正3年創業、100年以上続く老舗ですが建物は平成28年完成の新店舗。カウンター席やテーブル席もありますが、大広間を区切った部屋に案内されました。食卓はテーブルと座卓の中間の高さで、椅子も机に合わせた低いもの。「畳にテーブル」の違和感がなく、椅子なので座りやすくて快適です。天井が高く、ゆったりできました。お味にも満足です。
◆最後に
協力会から「鑑賞ミニツアーおよび『大正館』お食事会の実施について」というお知らせが届いています。
お食事会は、8月26日正午から 旬彩御膳「碧」(2,000円・当日支払)
ミニツアーは、8月26日午後2時 碧南市藤井達吉現代美術館1階ロビー集合 です。
是非、ご参加ください。
Ron.
2018年
8月3日
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