南禅寺界隈別荘群について(2018年春のツアー関連)

カテゴリ:アートツアー 投稿者:editor

 2018年春のツアーで最後に鑑賞する泉屋博古館(せんおくはくこかん)ですが、道路を隔てた東側に「住友有芳園」という大きな庭園があります。ネットで調べてみると住友家15代目・住友友純(ともいと)別邸として大正9年に完成した施設だと分かりました。現在も住友家の所有ですが非公開のため、普通は道路から立派な門構えを見ることしかできないようです。
「それでも」と思って探したら、「京都 東山 住友有芳園の特別鑑賞会」というブログが見つかりましたので、ご紹介します。(urlは下記の通り)
https://blog.goo.ne.jp/taizowind/e/d8fdb434070b5e831e08f39f7a24f9e0

こんなことを書いたのは、2015年1月2日にNHK・Eテレで「京都・南禅寺界隈別荘群」という番組が放映され、見入った覚えがあるからです。
「住友有芳園」については記憶がないのですが、對龍山荘(たいりゅうさんそう:現在はニトリ所有・非公開)、真々庵(しんしんあん:現在はパナソニック所有・非公開)、無鄰菴(むりんあん:現在は京都市所有・入場料410円、小学生未満は無料)などが紹介されていました。いずれの庭園も琵琶湖疎水を引き込んだ流れと池を配し、東山を借景にした回遊式庭園で、建物は上質の数寄屋造。手入れする庭師の人数・働きぶりを見て「うっとりするくらい素晴らしいけれど、パナソニックぐらいの経済力が無いと維持できないお庭なんだ」と、びっくりした覚えがあります。
2018年4月28日にはNHK総合テレビ「ブラタモリ 京都・東山」で對龍山荘が紹介されたようですが、残念ながら見逃しました。

南禅寺界隈別荘群の歴史や周辺地図については、ネット上に「第286 回京都市考古資料館文化財講座 2017年6月24日 連続講座「京の庭園を掘る!」第6回 植治の庭 −近代の庭園− (公財)京都市埋蔵文化財研究所 田中利津子」という記事がありましたので、ご紹介します。(urlは下記の通り)
http://www.kyoto-arc.or.jp/news/s-kouza/kouza286.pdf

 上記の記事では、京都大学「清風荘」に多くのページを割いています。この「清風荘」は、なんと住友友純の実兄である西園寺公望(さいおんじ・きんもち)の別邸で、昭和19年に住友家から京都大学へ寄贈されたもの。「清風荘」の所在地は京都市左京区田中関田町で、南禅寺とは離れていますが南禅寺界隈別荘群の中に含まれているようです。
Ron.

映画『モリのいる場所』

カテゴリ:ムービー 投稿者:editor

 熊谷守一といえば愛知県美術館の木村定三コレクションや岐阜県美術館のコレクションが有名で、名古屋市美術館も収蔵している郷土の画家。現在、彼を主人公にした映画「モリのいる場所」が上映されています。
 映画の冒頭は何かを真剣に見ている老人の顔のアップ。次のカットは、のし餅三枚と菜切り包丁を描いた絵に「伸餅 熊谷守一」という説明板。先ほど絵を真剣に見ていた男性がお付きの人に「これは、何歳の子どもが描いたのですか」とご下問し、お付きの人が慌てふためくという場面から「モリのいる場所」というタイトルに切り替わります。
 夜が明けたばかりのアトリエ、下絵や絵の具、筆、分解された懐中時計、大きな鳥籠とミミズクが映し出された後、食事、散歩、来客、昼寝という熊谷守一の生活が展開されます。ナレーションは一切ありませんが、カレンダーやドリフターズのメンバー交替という話題で「1974年7月のある日」と分かる仕掛け。
 映画では、熊谷邸の庭の草木や虫、鳥、カエル、魚も重要な配役です。「へたも絵のうち」や「アリは左の二番目の脚から歩き出す」等、熊谷守一にまつわる様々なエピソードを無理やり一日に押し込んだので、実際の年代とは違う点もありますが、それは映画ですからご愛敬。ただ、金ダライが落ちて来るギャグなどの小ネタはやりすぎかもしれません。
 熊谷守一夫婦を演じた山崎努と樹木希林を始め温泉旅館の主人の光石研、カメラマンの加瀬亮、マンションオーナーの吹越満など芸達者が揃っているので安心して見ることができました。
 印象に残るのは映画の終盤。慌ただしい一日が終わって「もうそろそろ学校へ行く時間やないですか?」と言われ、アトリエに入っていくシーンです。そこで画面は真っ暗になり、続いて翌朝のアトリエが映し出されますが、前の日と違っているのは懐中時計。修理済みでした。
 映画に出て来る熊谷守一の作品は木村定三コレクションの《伸餅》ほか数点ですが、「うちの子たちは、あんなに早く、死んじゃった…」というセリフから岐阜県美術館の《ヤキバノカエリ》(1956)を連想するなど、熊谷守一の生涯と作品をもっと知りたいという思いが強くなる映画でした。
Ron.