映画『ジャコメッティ 最後の肖像』

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

 名古屋市美術館のシャガール展で目にしたチラシに惹かれ、伏見ミリオン座で上映中の映画「ジャコメッティ 最後の肖像」(原題:Final Potrait)を見てきました。
ストーリーは、主人公のアメリカ人作家ロードがジャコメッティから引き受けた、「2、3時間ですむ」というモデルの仕事が来る日も来る日も終わらず、すったもんだの末、18日目に完成?するというもの。帰国後のロード宛にジャコメッティから「すぐに戻ってくれ。もう一度最初から描きたいから」という手紙が届いたというナレーションが、最後にあります。
何故、18日間もかかるのかというと、ジャコメッティは肖像画の出来に満足できず、完成したかと思うと白や灰色の絵の具で塗りつぶし、最初から描き始めるからです。(そういえば、ジャコメッティ展で見た《マルグリット・マーグの肖像》(1961)も、修正を繰り返したために、顔の部分が絵の具で盛り上がっていましたね。)
映画では、豊田市美術館のジャコメッティ展の写真にあった、絵筆や石膏像、粘土像が所狭しと並んで雑然としたアトリエの内部が再現されており、それを見ているだけでも満足できます。なので、アトリエで肖像画を描くシーンが多くても退屈しません。まさに、アトリエも重要な役者でした。アトリエの描写も、最初は薄暗くモノクロームに近い色調だったのが、後半では日光に照らされカラフルになっていきます。
ジャコメッティ展では「矢内原伊作」というセクションがありましたが、この映画で矢内原伊作が出て来るシーンは僅か。いつの間にかジャコメッティの家の寝室に入り込んでジャコメッティ夫人のアネットと親しげに話しながらジャコメッティに挨拶するシーンと、主人公がアトリエを後にするときに寝室の窓のカーテンを閉めるアネットの後ろで矢内原伊作がベッドに座っているという意味深なシーンの2つだけでした。
ジャコメッティがピカソとの裏話を語るシーンもあり、お勧めです。
なお、油絵風のアニメ映画「ゴッホ 最期の手紙」(原題:Loving Vincent)の予告編がありました。伏見ミリオン座で1月20日(土)から上映です。
Ron.

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