豊田市美術館:東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画展

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

 豊田市美術館で開催中の東山魁夷唐招提寺御影堂障壁画展(以下「本展」)に行ってきました。混雑を避けるため平日の昼に出かけたのですが、美術館の出入口に近づくと出て来る人が予想外に多いのでびっくり。すれ違う時に「企画がいいんだよ。」という声が聞こえてきました。
 期待に胸を膨らませながら展示室に入ると、最初の部屋は小下図(1/20)、中下図(1/5)、割出図(1/5)、本制作と同じ画材を使った試作(1/5)及びスケッチの展示。障壁画完成までに十年をかけたというだけあって、何段階もの準備を経て完成に至ったことが分かりました。
 お目当ての障壁画は、作品保護のためか薄暗い部屋に展示されています。御影堂(みえいどう:鑑真和上の座像を祭っている建物)の部屋割りだけでなく、畳や柱も再現しています。「御影堂とは雰囲気が違う。」という声も聞こえましたが、大勢の人が鑑賞することを考えると、全く同じものを求めるのは無理でしょう。当然のことながら、襖は開閉しません。展示室に収めるために、御影堂とは違う位置に展示されている障壁画(《揚州薫風》のうち厨子の裏側の襖絵)もあります。
 「御影堂とは違う」といっても、普通の人が唐招提寺の御影堂68面の障壁画全てを見ることはできません。本展は、御影堂が改修工事に入ったことで実現した、普通の人では見ることができない障壁画が鑑賞できる稀有な展覧会です。
 日本の国土を象徴する《濤声》と《山雲》、鑑真和上の故郷《揚州薫風》、李白も愛した《黄山暁雲》、中国を代表する名勝《桂林月宵》。どれも、東山魁夷が最も充実していた時期の作品で、見ごたえ十分でした。
 ただし、鑑真和上座像の厨子絵《瑞光》(鑑真和上が最初に日本の地を踏んだ薩摩半島・秋目浦の景色)だけは試作の展示です。厨子を持ち出すことはできないでしょうから、仕方ありませんね。
 なお、68面の障壁画は全期間展示ですが、下図、割出図、試作及びスケッチは展示替えがあり、5月16日からは後期の展示となります。また、「再入場不可」なので注意しましょう。
Ron.

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