花見には少々早い上野公園で「VOCA展 現代美術の展望-新しい平面の作家たち」を見た。過去のVOCA展では、名古屋市美のポジション展にも出品していた大崎のぶゆき氏、坂本夏子氏、あいちトリエンナーレ2016にも出品していた佐藤翠氏、久門剛史氏も出品、受賞している。きっとおもしろい作品が見られるだろうと楽しみにしていた。
移動中の電車内でVOCA展のチラシを読み直していると、その日の夕方から今回の受賞者3名によるギャラリートーク(以下、トーク)が行われることに気がついた。直前のスケジュールを早めに切り上げれば間に合いそうだったので、聞いてみることにした。
トークの開始時刻に少し遅れて展示室に入ると、若い観客でずいぶん混雑していた。(名古屋市美のレンブラント展のトークも大混雑だったが、それよりも大変だったかも?)人垣越しにトークを聞こうとするが、マイクの調子が悪いようで、よく聞こえない。そんなこんなで、1人目、2人目とトークが進むうちに徐々に観客も減り、3人目の作品がある2階に着く頃には、半分以下になって、ようやく作家の姿を見てトークを聞けるようになった。
3人のトークを聞き終り、もう一度全体の展示を眺めてみて「氷山みたいな作品が多い」と感じた。実験的な要素を含む作品が多く、目に見える色、形、構成などの要素よりも、目に見えない制作の動機や試行錯誤の痕跡を意識させるものが多かったので、そう思った。
例えば、白地のキャンバスに透明なアクリル板を張り付けた作品(青木恵美子氏)の前に立つと、自分の姿や背景も映りこむわけで、映りこんだイメージも含めて作品なのか?という疑問がわき、イメージが描かれていたキャンバスをはがしたかのように枠だけを展示した作品(川角岳大氏)の前では、これは完成した作品なのか?という疑問がわく。
展示室を後にしても、オリジナルなものだけが作品か?目に見えなくても作品か?作品とそうでない物の境界は?・・・。さまざまな疑問が湧き上がる。どうやら今回の展覧会は、自分にとって刺激が多すぎたようだ。名古屋市美の現代美術展のトークなら、もう少しすっきりした気持ちで帰路に着けるのだが。
杉山 博之
コメントはまだありません
No comments yet.
RSS feed for comments on this post.
Sorry, the comment form is closed at this time.