豊田市美術館 「蜘蛛の糸」展 ミニツアー

カテゴリ:ミニツアー 投稿者:editor

豊田市美術館で開催中の「蜘蛛の糸 クモがつむぐ美の系譜―江戸から現代へ」(以下「本展」)のミニツアーに参加しました。都筑(つづく)学芸員(以下「都筑さん」)のギャラリートークは楽しく、気が付けば2時間も経過していました。
◆企画は5年前から
 1階企画展示室前のロビーにある、鉄製のカゴみたいな青木野枝《Untitled(NA84-1)》の前で、都筑さんのトークは始まりました。「クモは気持ち悪い姿ですが、美しい形の巣を紡ぎだす。5年前から蜘蛛の糸の怪しい魅力をテーマにした展覧会を企画して来たが、お客が入りそうな企画とはいえず日の目を見なかった。幸い、今年は「ジブリ展」で入場者が見込め、本展が実現できた。」とのことでした。
 1階ロビーには、外に満田晴穂《自在大女郎蜘蛛》も展示。沖縄に生息する巨大グモを「自在置物」の技法で作ったもので、クモの脚は自由に動くそうです。
◆展示室をいっぱい使ったインスタレーション
本展の見ものは、何といっても2階展示室の塩田千春《夢のあと》です。黒色のハマナカ毛糸2,600玉を使って、天井から壁、床へと蜘蛛の巣のように毛糸が張り巡らされています。ドーム状の回廊が展示室内を一周。回廊の内側には白いドレスが何着も吊るされ、ドレスには蜘蛛の巣の影。怪しく、神秘的な美しさです。展覧会が終われば消えてなくなるという儚さにも惹かれました。
◆蜘蛛の巣を描いた工芸品、羽織など
 柴田是真《落葉に蜘蛛蒔絵箱》、正阿弥勝義《古瓦鳩香炉》始めの江戸・明治の工芸品や大正時代の《菊に蜘蛛の巣模様羽織》、昭和初期の《ヤツデに蜘蛛の巣模様羽織》に描かれたクモや蜘蛛の巣模様などは、いつまでも見ていたくなりました。
◆芥川龍之介「蜘蛛の糸」も
 芥川龍之介が「赤い鳥」に発表した児童文学作品「蜘蛛の糸」関連では、切り絵のアニメーションや鴨居玲による3つの作品、ムットーニのカラクリなどの展示があります。10メートルを超す高さの戸谷成雄《雷神-09》は、タイトルどおり「雷神」を表現したものですが「蜘蛛の糸」も連想させるので展示しているとのこと。
◆「蜘蛛の行い」つながりの2作品
 西川祐信《衣通姫(そとおりひめ)之図》は、「その美しさが衣を通して輝いた」とされる衣通姫を描いたものですが、姫の視線の先には下がる蜘蛛。下がる蜘蛛は「蜘蛛の行い」として恋人の訪れる予兆とのこと。その隣に展示されている山本芳翠《裸婦》にも、裸婦の視線の先に蜘蛛の巣。都筑さんから、「これも、東方から絵を学びに来たものを告げる『蜘蛛の行い』の寓意」という解説がありました。
◆見飽きない作品の数々
 この外、アリと間違えそうな熊谷守一《地蜘蛛》、蜘蛛の巣模様の着物の上村松園《焔》の下絵など、一見の価値ある作品ばかりです。会期は12月25日まで。  Ron.

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