
レクチャの様子
名古屋市博物館で開催中の「世界遺産 ポンペイの壁画展」(以下「本展」)のミニツアーに参加しました。「皇太子ご一家、ポンペイ展に」(2016.6.8)、「秋篠宮ご夫妻がポンペイ展鑑賞」(2016.6.21)という新聞記事の効果か、参加者は41名と多め。地下一階講堂で約40分間のレクチャーを受けた後は、自由観覧となりました。当日は、1階展示説明室でも「親子で探検!壁画の迷宮で宝探し」に参加した親子がレクチャーを受けていました。
◆講堂にて
レクチャーでは、「Ⅰ建築と風景」「Ⅱ日常の生活」「Ⅲ神話」「Ⅳ神々と信仰」という本展の各章の見どころとB.C.2世紀からA.D.79年(ヴェスビオ火山が噴火した年)までの壁画様式の変遷について説明があり、鑑賞の助けになりました。その外には「ポンペイではクジャク、フラミンゴ、ヤマネ(山鼠)など、全ての動物を食べていた。」という、古代ローマ人のグルメ(ゲテモノ趣味?)の話も面白かったですね。
◆Ⅰ 建築と風景
展示室を入って最初の展示は、ローマ劇場の舞台セットを描いた《赤い建築を描いた壁面装飾》。レクチャーでは、「厳密な遠近法ではないが、遠近表現を用いた「だまし絵」のような、第2様式のもの」とのこと。壁画を横から見ると、軽量化を図るためか、パネルで裏打ちした5ミリほどの厚さの漆喰壁でした。レクチャーで「絵のうまさ、丁寧さでは一番」とされた《詩人のタブロー画がある壁面断片》も見もの。装飾的な第3様式のもので、画面左下に描かれた額絵(タブロー)の人物や果実、葉の色の鮮やかさ、細密描写が見事です。
◆Ⅱ 日常の生活
ぶさかわ犬を描いた《犬のシュンクレトゥス》に注目です。犬の右には“SYNCLETVS”と書いてあるそうですが、YやT、最後のSは古い筆記体のようで、どれもY、T、Sとは読めません。また、当時はVが「ウ」で、Uという文字は無かったようです。《カルミアーノの農園別荘、トリクリニウムの壁画》は三方を壁画で囲まれ食堂(トリクリニウム)を再現したもの。レクチャーでは、「食堂にはベッドが置かれ、客はベッドで寝そべりながら食事した。」とのことでした。ずいぶん行儀の悪い食べ方をしたものですね。
◆Ⅲ 神話
レクチャーでは、「見どころは、第二のポンペイと言われる、エルコラーノ(ポンペイの北の都市)の《ケイロンによるアキレウスの教育》《赤ん坊のテレフォスを発見するヘラクレス》《テセウスのミノタウロス退治》の三作。いずれも巨大で構図が素晴らしい。全て第4様式のもの。第3様式に似た平面的、装飾的な画面の中に、豪華な大理石を模して顔料で描いた第1様式の壁面や第2様式の建築画が混在している。」とのこと。当時は、ギリシア神話をモチーフにした壁画で邸宅を装飾することがステイタスシンボルだったようです。
◆Ⅳ 神々と信仰
レクチャーでは「《有翼のウィクトリア》について、勝利の女神ウィクトリア(ギリシアではニケ)は畏れ敬うと同時に鑑賞の対象。美人画でもあります。また、居酒屋の壁画《フェニックスと2羽のクジャク》には“PHENIX FELIX ET TV”、訳すと“フェニックスは幸せである、あなたもそうでありますように”と書いてあります。私も、同じ言葉を皆さんにお贈りして、今日の解説の結びとします。」とのことでした。会期は9月25日(日)まで。 Ron.

お話してくださった学芸員横尾拓真さん
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