「藤田嗣治展」速報

カテゴリ:協力会ギャラリートーク 投稿者:editor

「生誕130年記念 藤田嗣治展 ―東と西を結ぶ絵画―」の記念講演会「藤田とランス」が開催された日に、併せて展覧会も見ました。講演会で紹介された《少女と猫》は後期展示(5/31~)のため、見ることができませんでしたが、「藤田ワールド」をたっぷり楽しめました。
◆6つの章は壁の色で区別、第1章は緑
 第1章は「模索の時代」。卒業制作やキュビスム、ギリシャ彫刻風の絵など、我々の知っている「フジタ」になる前の模索期の絵ばかりです。面白い。
◆エコール・ド・パリ、壁の色は赤
第2章「パリ画壇の寵児」は、エコール・ド・パリの作品。特等席には映画「Foujita」に登場した《五人の裸婦》。また、東京国立近代美術館蔵と名古屋市美術館蔵の二つの《自画像》が並んでいます。金屏風を背景にした《坐る女》は、まさに東と西が結ばれた絵でした。
キャプションには数多くの国内美術館の名前。エコール・ド・パリ時代の藤田の絵の、日本での人気の高さを再認識しました。ただ、展覧会のために集めるのは、大変だったでしょうね。
◆カラフルになる第3章、壁の色は濃緑
第3章「さまよう画家」は、中南米、中国など転々としながら制作した作品。《カルナバルの後》や《室内の二人の女》は、いずれもカラフルな絵で、特に赤と緑が目を惹きます。また、《北平の力士》は群像を描いており、「乳白色のフジタ」からの脱却を図っていることを感じます。
この章では、キャプションに「公益財団法人平野政吉美術財団」とある作品が目立ちます。
◆戦争画、壁の色は青
 第4章「戦争と国家」には、昨年の「画家たちと戦争」展では写真パネルだった《猫》の外、映画「Foujita」に登場した《自画像》《アッツ島玉砕》《サイパン島同胞臣節を全うす》が展示されています。
また、《ソロモン海域に於ける米兵の末路》では、兵士の背後で飛び跳ねる鮫を見て、スピルバーグの「ジョーズ」に登場する、鮫狩りの達人のセリフを思い出しました。それは、乗っていた巡洋艦が日本の潜水艦の魚雷で沈没し、海に投げ出された仲間たちが次々に鮫の餌食となって、「明日は我が身か」と怯える恐怖体験です。どの戦争画も、凄惨です。
◆「乳白色」ではない裸婦、壁は灰色
 第5章「フランスとの再会」には、フランスに戻ってからの作品の外、《猫を抱く少女》や《カフェ(習作)》のように戻る途中にニューヨークで描いた作品も展示されています。
 この章の見どころは、デッサンだと思います。特に、迷いなく描かれた線の美しさには息を呑みます。《ヴィクトールの姉》をはじめ、デッサンで見えてくる藤田の技量の高さには脱帽です。
また、《夢》は「乳白色」ではない裸婦で、エコール・ド・ パリ時代とは違う茶褐色の美しさがあります。背景の黒が絵を引き締めています。
 深谷副館長が「この展覧会の見どころは、線の美しさと、藤田の多様性です。」と言っていましたが、まさにその通りですね。
◆宗教画の壁は、暗赤色
 第6章「平和への祈り」は宗教画の展示です。《マドンナ(習作)》は講演会で「ランス美術館に遺贈された」と紹介された《マドンナ》のデッサンで、《聖母子》(ノートルダム大聖堂に寄贈)も講演会で紹介されていました。この章では、どの絵も青色がきれいだと思いました。
◆お知らせ
 5月15日(日)17:00から、協力会会員を対象とした、深谷副館長のギャラリートークが開催されます。どんな話が聞けるか、今から楽しみです。申し込み締め切りは5月11日。  Ron.

コメントはまだありません

No comments yet.

RSS feed for comments on this post.

Sorry, the comment form is closed at this time.