三重県立美術館 フリオ・ゴンサレス展・舟越桂展 ミニツアー

カテゴリ:ミニツアー 投稿者:editor

三重県立美術館で開催中の「フリオ・ゴンサレス展」「舟越桂展」を鑑賞する名古屋市美術館協力会ミニツアーに参加しました。参加者は18名。地下1階の講堂前で待ち合わせて今年の3月末に退職される毛利伊知郎館長の最終講演を聴いた後、自由観覧となりました。
◆毛利伊知郎館長の最終講演
 演題は、開催中の「フリオ・ゴンサレス展」と「舟越桂展」に因み「20世紀彫刻の一側面」。講演によれば、19世紀までの彫刻は粘土や大理石、木材を素材に、主として人体を表現してきたが、20世紀に入って既成の彫刻表現を破壊する動きが出現したとのことです。フリオ・ゴンサレスは、このような背景の下、鉄板や鉄棒を素材にした熔接による造形を始めたのですが、鉄を使ったのは「単に、比較的安価に入手できた。」からだそうで、鉄という素材へのこだわりは無かったようです。また、あのピカソも、一時期、ゴンサレスとのコラボレーションで彫刻を制作していたとのことでした。(ピカソがゴンサレスに作品の熔接を依頼)
一方、舟越桂は日本の戦後第2世代に属する具象系の作家ですが、必ずしも「リアリズム」を目指しているわけではないそうで、一つの胴体から2つの頭が出ていたり、腕が背中についていたり、首が異様に長かったり、両性具有だったりと、「異形」の作品を制作しています。それは「作家と同時代の人間を追求する」ためのとのことでした。なお、彫刻の素材はクスノキ(仏像の用材。ヒノキよりは安価)で、鉄をはじめ多様な素材を使ったゴンサレスとは対照的です。
◆フリオ・ゴンサレス展の見どころ
 展示室は大・小2室に分かれ、大きい方の部屋にはアクセサリーから始まり、初期の金属板叩き出しレリーフ、金属板に切り込みを入れた彫刻、ピカソとコラボレーションを行った頃の熔接による「空間の中のドローイング」までの作品を年代順にデッサンと合わせて展示していました。小さい方の部屋では、もう一つの作品群である石彫の頭部(多くはブロンズ鋳造による複製)の展示です。2つの部屋に展示されている作品の作風は全く違いますが、いずれもロダンやブールデルの彫刻とは全く違う「20世紀の彫刻」でした。
◆舟越桂展の見どころ
 舟越桂の彫刻の画像は小説の装丁などで目にする機会が多いのですが、本物が何体も並んでいる光景はまさに壮観でした。これぞ「本物の力」ですね。展示室は4つに分かれ、美術館でもらった小冊子によれば、前半の2室が「私に見える人たち」というセクション、後半の2室が「私の中のスフィンクス」というセクションのようです。
今回展示されている作品は「私に見える人たち」に展示の1体だけが木彫の目で、他は全て大理石の玉眼となっています。リアルな人形に向き合うと、怖くなることがありますが、展示されている作品の玉眼は、いずれも左右の視線が外側に開き気味になっており、向き合っても視線が合わないので怖くはありませんでした。何かを考えながら遠くを見ている目ですね。
なお、「私に見える人たち」は着衣の半身像ばかりですが、「私の中のスフィンクス」は前半が両性具有のスフィンクス(顔は男性的だが体は女性的、耳は獣)、後半は裸婦像です。
「異形」の作品の前に立つと、心はざわつくのですが目は強く惹きつけられます。これが舟越桂の魅力ですね。なお、今回の作品で一番惹かれたのは、最後の部屋にあった裸婦像≪森のようにひとり≫です。とても穏やかな表情をしており、しばらく見とれてしまいました。
◆コレクション展でも木彫の特集あり
同時開催のコレクション展でも「橋本平八の芸術」と題して、伊勢市朝熊町生れの作家(1897~1935)による木彫などの特集を開催していました。会期は4月10日(日)まで。   Ron.

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