名古屋市美術館の春のツアーに参加して

カテゴリ:アートツアー 投稿者:editor


ミホミュージアムも陶芸の森美術館も行ったことがあるのだが何年だったかまったく記憶にない。ミホではガンダーラの仏立像と陶芸の森美術館ではイタリア陶器の展覧会だったことだけを覚えている。今回参加する前に3月末ニューヨークの歴史協会でのCHINESE展でIMペイのデザインのコンセプトが何であるのかというコメントを見てきていたので建物のほうにどうしても意識が向いてしまう。いい展示作品があるのにそれぞれの作品の印象が希薄になってしまった。ペイがこの山地をどのような思想の中で位置づけ具現化していったかを彼の言葉を踏まえながら改めて自分の中で問い直すことができた有意義な時間でもあった。ペイの建築とニューマンの絵画とを比べること自体がナンセンスであるのは充分承知しているが、もしその壮大な思想での建築物と哲学的な小さな抽象作品とを比較したらどちらが衝撃をあたえられるかを考えれば勝者は一目瞭然だと思う。精神性の高いニューマンの作品であるが故に鑑賞者には絶対にもっと広いスペースを与えないといけない。そうしないと彼の思想は伝わらない。私はいい作品に出会うと心の中に音楽を感じるときが時々あるのだがニューマンの作品の前では今回残念ながら感じることができなかった。ミホの都合だから仕方がない。多分スペースがなかったのだろう。違う環境だったらと強く思う。一方天台宗のお寺であるがこれがすばらしい。十一面観世音の落ち着いた表情、堂々たる体躯。そばで拝観するだけでおごそかな真摯な気持ちになる。平安、鎌倉期の他の仏像も拝観。ツアー参加者全員が熱心に話に耳を傾けていた。帰りのバスでは恒例の学芸員の山田さんの熱い語り。今回は特に河原温と自分との関わり合いについて過去をふりかえりながら説明。山田さんにとってその作家がどれほど重要で意味があるのかよく理解することができた。ニューヨークのグッゲンハイムでの河原温の展示会に行かなかったことを後悔。もう何十年と彼の展覧会はないだろうとの話であった。そういえば何年か前ニューヨークに行ったときグッゲンハイムで見たのはナムジュンパイクのヴィデオインスタレーションだったことを思い出した。
                       (谷口 信一)

館内風景(ミホ・ミュージアム)

館内風景(ミホ・ミュージアム)


櫟野寺

櫟野寺

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