ロイヤル・アカデミー展:ミニツアー

カテゴリ:ミニツアー 投稿者:editor

今年最初のミニツアーは、愛知県美術館で開催中のロイヤル・アカデミー展です。参加者は34名、先ず12階のアートスペースで小野寺学芸員のレクチャーを聴きました。

鑑賞前、レクチャの様子

鑑賞前、レクチャの様子

○ ロイヤル・アカデミーとは
小野田学芸員によれば、「ロイヤル・アカデミー」は、①展覧会を毎年開催すること、②若手芸術家を育成する学校の運営を目的にして1768年に設立された芸術家協会とのことです。
当時は今のような美術館は無く、描きたい作品を発表・販売できる展覧会を開催し、販売代金を芸術家の収入とすることで、芸術家支援を図ったそうです。また、展覧会入場料で学校の運営費を賄い、授業料は今に至るまで無料とのことです。
ロイヤル・アカデミーの会員になると代表作を1点寄託する義務があり、今回展示しているのは、この「ディプロマ・ワーク」という寄託作品が中心です。
○ 印象に残った作品など
レクチャーの後は自由観覧です。副題に「ターナーからラファエル前派まで」とあるように、18世紀から20世紀初頭までの英国美術を代表する画家の作品がⅠ章からⅣ章まで年代順に並んでおり、学生のデッサンや教育に用いられた書籍も展示しています。
「Ⅰ章 設立:名声への道」では、ターナー「ドルバダーン城」とカンスタブル「水門を通る船」が向かい合わせに展示されています。「ドルバダーン城」は明るい雲を背景にした城のシルエットを谷底の河原から見上げるという雄大、崇高な作品ですが、「水門を通る船」は水平線を画面の真ん中にとった農村風景で、風になびく右手の樹の葉に反射した光の点一つひとつが克明に描かれているという対照的な作品です。両者を対比させるため意図的に向い合せにしたのでしょうね。
「Ⅱ章 国家的地位の確立」では、オリエンタリズムの作品が印象に残りました。グドール「ヌビア人の奴隷の唄」は楽器を演奏する黒人と通りがかりの3人のエジプト女性を、ロバーツ「バールベックの大神殿入口」はレバノンの遺跡を描いています。
「Ⅲ章 名声と繁栄」ですが、コウプ「1875年のロイヤル・アカデミー展出品審査会」は、ご丁寧にも額縁に登場人物のシルエットと名前が記されています。大きな作品で登場人物も多く、思わず見入ってしまいます。何十年も昔に、テレビ番組で日展の審査風景をみたことがありますが、洋の東西を問わず審査風景はよく似ています。
ミレイ「ベラスケスの想い出」は、ベラスケスが描いたのかと思うほど作風が似ていました。ベラスケスへのオマージュでしょう。
Ⅲ章とⅣ章の間にある「アーティスト教育」では、展示している生徒たちのデッサンがモノクロ写真みたいで、技術力の高さに感心します。教材として展示されている書籍=ゴヤの「立派なお手柄!死人を相手に!「戦争の惨禍」第39図を見たら、ニュースで見たイスラム国の凄惨さを思い出しました。
「Ⅳ章 モダンの受容:黙認と妥協」ですが、サージェント「庭の女性たち、トッレガッリ城」は近くで見ると、女性の目鼻立ちも遠くの建物もはっきりしません。
クラウセン「麦畑に立つピンクのドレスの女」も女性の顔は灰色に塗られ、表情はわかりません。夕日の明るさが、やけに際立っています。いずれもⅠ章からⅢ章までの古典的な描き方とはちがっており、印象派の影響が見て取れます。
あまりなじみのない作者の作品が多かったのですが、どれも、しっかり描かれているので見入ってしまって鑑賞に時間がかかり、とても疲れました。
お話してくださった小野田学芸員

お話してくださった小野田学芸員

○ コレクション展から
ロイヤル・アカデミー展と同時開催のコレクション展(常設展)も見ました。
展示室4 グロテスク・モデルヌ
キャプションには「アカデミックな美とは異なる、さまざまな「グロテスク」なるものの芸術的力をご覧ください。」とありました。
中村正義の「おねえちゃん」を始め、岸田劉生「鯰坊主」、福沢一郎「餓鬼のわるだくみ」など奇怪な絵ばかりですが、親しみを感じます。
展示室7 新収蔵 鬼頭鍋三郎
キャプションには「平成25年度に油彩画15点を新たに収蔵したことを機に、以前から収蔵していた作品と合わせて、最初期から晩年に亘る画業をご紹介します。」とありました。
鬼頭鍋三郎の作品は名古屋市美の常設展でも目にしますが、県美では前室に展示の3点も含め全部で20点を展示しており、壮観でした。前室に展示している新収蔵品は「機銃分隊習作」という題の戦争記録画で、中国戦線で腹這いになって機銃を構える陸軍兵士を描いたものです。そういえば、今年は終戦から70年目、区切りの年ですね。
展示室8 木村定三コレクション めでたきもの
白隠慧鶴「寿老人図」「布袋図」や伊藤若冲「菊に双鶴図」「伏見人形図」などおめでたい絵や工芸品が並んでいます。目の保養になります。家の土産に、ミュージアムショップで売っている「布袋図」のせんべいを買って帰りました。
                            Ron.

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