「ポジション2014」アーティストトークと作家を囲む会

カテゴリ:作家を囲む会 投稿者:editor

作家伊藤正人さんを囲んで

作家伊藤正人さんを囲んで

◆「ポジション2014」 伊藤正人「水性であること」
 現在、名古屋市美術館では、名古屋市とその近隣地方を拠点に活躍する作家を取り上げる≪ポジション展≫として、伊藤正人さん(1983~)の「水性であること」を、地下1階の常設展示室3にて12月3日(祝)まで開催しています。
 先日、作品を見ようと展示室入口に立ったところ、何も展示してないのでびっくりしました。受付の人に聞くと「作品は展示されています。」というので、半信半疑で奥の方に進んでいくと、壁に小さな水色の文字が波打つように横書きで書かれています。書かれているのは、散文詩のようです。
 文字を読むには壁に近づかなくてはなりません。上の方に書かれた文字を読んでいると首が痛くなるので、少し下がると、文字列が山の稜線のように見えます。すると、入口近くまで下がっても、さすがに文字は判読できないものの、壁に描かれた線がはっきりと見えます。「入った時には見えなかったものが、今では見える。」という、不思議な体験ができますよ。
◆アーティストトーク
 作家に興味を持ったので、11月15日(土)に開催されたアーティストトークに参加しました。自分の心の中を見つめながら注意深く話す、伊藤正人さんの姿が印象的でした。
 市美術館学芸員の角田美奈子さんが「なぜ、万年筆を使い、ロイヤルブルーのインクで壁に文字を書くという表現を始めたのですか。」と問いかけたところ、「早朝の、東京・青山の公園のベンチに座って目の前の景色を文章で綴ってみた。すると、目の前のことを文章で書くことに「もどかしさ」の感覚を覚えた。それが、今のような表現を始めたきっかけ。」と答えが返ってきました。
 また、「今までは、ずっと四畳半くらいの狭い空間の中で表現してきた。今回、今までの個展すべてを足したよりも広い空間を与えられた。文字を読んでもらえるか不安だったが、作品に「うごき」が出て、「跳び越えた」という感覚を覚えた。」とも、話されていました。
なお、書いているものは「詩ではなく、目に見える景色(風景ではない)を詩情を挟まず、客観的に描写したもの。」とのことで、伊藤さんは、文学者であり、視覚の芸術家でもあるという、ジャンルを超えたartistです。
お料理を囲んで、会長のあいさつ

お料理を囲んで、会長のあいさつ

◆作家を囲む会
 アーティストトークの当日、午後5時から、伊藤正人さん、伊藤さんのパートナーである吉田知古(よしだ・ともこ)さんと学芸員の角田美奈子さんをお招きして、市美術館1階の「おはな」で名古屋市美術館協力会主催の「作家を囲む会」を開催しました。軽食、ソフトドリンク、アルコール類等を楽しみながら、様々な話題が飛び交いました。
ある協力会員が、「壁に文字を書くという以外に、どんな創作活動をしていますか。」と質問したところ、「最近は、古い家具に文字を書いてほしいとか、民家を解体した古い材木に文字を書いてほしいなどの注文がある。」とのお答え。吉田さんは、「展示の準備として、常設展示室3の壁の穴を埋め、礬砂(ミョウバンとニカワを混ぜたもの)を塗り、サンドペーパーをかけて滑らかにするという作業を、仲間でやった。疲れたけれど、楽しかった。」などの裏話を披露されました。
 会期が終わると、壁に書いたロイヤルブルーの文字は「水を含ませた布で拭って消す」とのことで、作品はこの世から消えて無くなります。見るなら、今のうちです。
   Ron.
作家、パートナーさんと角田学芸員

作家、パートナーさんと角田学芸員

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