「大浮世絵展」ミニツアー

カテゴリ:Ron.,ミニツアー 投稿者:editor

 今年度の協力会ミニツアーは、名古屋市博物館で開催中の国際浮世絵学会創立50周年記念「大浮世絵展」で幕開け。4月6日(日)午前9時30分集合でしたが、9時過ぎから人が集まり始めました。ミニツアー参加者は40数名。開場と同時に1階の展示説明室に移動し、副館長の神谷浩さんからレクチャーを受けました。神谷副館長の話によれば、今回の展覧会は「浮世絵の教科書をめざして、みたことのある絵を世界中から集めた」夢のような企画です。しかし、浮世絵は展示期間が制限されるので、国内3会場で巡回するという展覧会を実現するのは、至難の連続であったようです。それだけに期待が増します。約40分のレクチャー後、展示会場に足を運びました。

レクチャしてくださった神谷浩氏

レクチャしてくださった神谷浩氏

「浮世絵の教科書をめざした」という言葉どおり、浮世絵の歴史をたどって作品が展示されています。「1章 浮世絵前夜」「2章 浮世絵のあけぼの」で素晴らしかったのは2つの重油文化財、菱川師宣「歌舞伎図屏風」と宮川長春「風俗絵図」。特に「歌舞伎図屏風」は芝居小屋の入口から、舞台、舞台裏、楽屋までのパノラマ。動画のような描写は圧巻です。
真剣に話に聞き入る会員たち

真剣に話に聞き入る会員たち

「3章 錦絵の誕生」の主役は鈴木晴信。「雪中相合傘」の二人はいずれも中性的で、男の黒い着物と女の白い着物のコントラストが美しく、黒い着物の人物は謎の美女「黒蜥蜴」ではないかと妄想していました。雪の「きめ出し」白い着物の「空ずり」が綺麗です。
磯田湖龍斎「江戸見立六玉川 調布」は鈴木春信とよく似ていて素人には区別ができません。また、あの山東京伝が北尾政演という名で浮世絵を描いていたとは知りませんでした。
「4章 浮世絵の黄金期」の最初は鳥居清長。「大川端夕涼」を始め、どの美人もスーパーモデル並みの小顔・長身で、当時の日本人には無かった体型。でも、ナイスです。「駿河町越後屋正月風景」は、注文主の期待に応えた綺麗な絵でした。
喜多川歌麿も見ごたえのある絵が出ています。「歌撰恋之部 深く忍恋」は、神谷副館長のレクチャーどおり背景のピンクが美しく、心理描写も見事です。重要文化財の「納涼美人図」も収穫でした。「虫籠」は籠の網を透けて虫が見え、「錦織歌麿形新模様 白打掛」は輪郭線がほとんどなく色の面だけで構成され、「「難波屋おきた」は表・裏の両面から鑑賞できるなど、歌麿が様々な工夫を試していたことがわかります。
 東洲斎写楽は大英博物館とギメ美術館から大首絵、計4枚が出ていました。重要文化財の「市川鰕蔵」と「大谷鬼次」は後期の展示なので見られません。神谷副館長が言っていた「展覧会の後半になるに従って良いものが出ます」とは、このことだったのですね。
 「5章 浮世絵のさらなる展開」では「みたことのある絵」には欠かせない、北斎の「凱風快晴」「山下白雨」「神奈川沖浪裏」がちゃんと出ていました。「神奈川沖浪裏」のもとになったといわれる「おしをくりはとうつうせんのず」も展示されており、二つを比べると面白いと思います。肉筆画の「弘法大師修法図」は大きくて迫力がありました。
 歌川広重の東海道五拾三次からは「日本橋 朝之図」「蒲原 夜之雪」「鞠子 名物茶屋」「庄野 白雨」と「みたことのある絵」を押さえています。鞠子の丁子屋は昨年春の協力会ツアーの際に昼食を食べましたが、今でも描かれた当時の面影が残っています。外には、名所江戸百景から「浅草田甫酉の町詣」「浅草金龍山」、切手になった「月に雁」などが展示されていました。
歌川国芳は「猫の当字 かつお」を始めダジャレとサービス精神が面白く、「其まゝ地口猫飼好五十三疋」では、宿場名とダジャレ、猫の絵の三つを一つひとつ見比べていたので、見終わるまでに随分時間がかかってしまいました。
最後「6章 新たなるステージへ」は幕末明治の作品。月岡芳年「奥州安達がはらひとつ家の図」は逆さ釣りの妊婦の姿が印象的。また、新版画に橋口五葉や伊東深水の作品があるとは知りませんでした。最後の展示は川瀬巴水「東京十二景 春のあたご山」満開の桜。楽しく花見ができました。
                                 Ron.
終了後、博物館の外で。抜けるような青空でした

終了後、博物館の外で。抜けるような青空でした

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