「中心軸とブタの鼻」

カテゴリ:アート・ホット情報 投稿者:editor

 トリエンナーレスクール、「原っぱと鉄の浮遊する粒子」を聴講した。ゲストは青木野枝氏(彫刻家)、青木淳氏(建築家)、五十嵐太郎氏(建築史家)の3名。トークの様子は後日、ネット配信されるそうなので、ここでは省略。現在、名古屋市美と豊田市美で展覧会が開かれている青木野枝氏のトークで面白かったことをいくつかレポートしよう。青木氏の話し方はとても率直で、わかりやすかった。

「建築に異を唱えない、全部受け入れる気持ちで」

 今回の2つの展覧会も含め、物事に対する作家の基本的な姿勢。たしかに、豊田市美では展示室ごとの独立性が強いので、作品も部屋ごとに傾向の異なるものが配置され、作風の変化をたどりやすい展示になっていた。一方、名古屋市美では展示用の可動壁がすべて取り払われ、ひとつの大きな空間内の作品を鑑賞することで、類似性を強く感じる展示になっていた。

「軸線の考え方」

 建築家と美術家が共同作業をすると、お互いにストレスを感じるそうだが、軸線の重要性に関しては意見が一致しているようだ。名古屋市美の最初の展示室の「ふりそそぐものたち」の足元から次の展示室を眺めたとき、天井の黒いセンターラインに沿うように左右に配置された作品のバランスの良さに感心した。でも、そのまま視線を少し上に向けるとピンクと黒に塗られた通風孔が目に入る。作品よりも目立つこの部分を「ブタの鼻」と呼ぶあたりに、建築家と作家のジレンマがあるのかもしれない。

「こんなもの見たことないと自分が思うものを作る」

 制作に対する作家の意気込み、基本スタンスのようなので、来年のトリエンナーレも楽しみ。そういえば、豊田市美の最後の展示室にあった新作(4つの隆起がある白い大きな石膏の作品)も、以前の青木作品とは隔絶した印象だった。次回、12月1日の作家本人によるギャラリートークの折、ぜひこのあたりの制作エピソードを聞いてみたいものだ。

 会員 杉山博之

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