元永定正さんを送る会

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:editor
お別れ会の祭壇

お別れ会の祭壇

  名古屋市美術館地下の常設展示室に、現代美術作家の元永定正さんの作品があります。「具体」時代のペイントが激しく流れる作品やユーモラスな画風の大作です。氏は戦後日本の、いや世界のアンフォルメル絵画の代表的な作家のお一人です。その元永さんが、10月3日兵庫県宝塚市でご逝去されました。ご存命であれば、満89歳のお誕生日の11月26日に、ご冥福を祈って、ご自宅近くの宝塚ホテルにて、「もーやん さようならの会」が、600人近い美術関係者や元永さんのファンが集まり開かれました。

星影のワルツを熱唱する元永さん

星影のワルツを熱唱する元永さん

  会場一角の祭壇には、笑顔の元永さんの遺影とご自身作のユーモラスな屏風が飾られていました。兵庫県立美術館の木村重信名誉館長のあいさつでは、生前の元永さんに「世界一の画家と評してくれた」と、恩人扱いされたというお話がありました。「はて、私はそんな批評文を書いたことはないのに」と。これは、世界における革新的な画家の一人、と評したところ、彼が「…の一人」を読み飛ばしたらしい、とのエピソードを披露され、会場に笑いが流れました。元永さんらしい楽しいお話でした。また、兵庫県知事の井戸敏三氏による県立こどもの館における児童画の審査時の思い出話や、兵庫陶芸美術館の乾由明館長のあいさつ、献杯も故人の明るく元気なお人柄を表わすものでした。

  奥様で美術家の中辻悦子さんからは、まだまだ大作を描きたい、グッケンハイム美術館におけるインスタレーションの展示構想なども考えていた、と最近の元永さんの止むことのない旺盛な作家精神のお話もありました。会場には、9月の最後の個展に出品した版画作品も展示され、「まだまだ頑張るで」と、氏の関西弁が聞こえてくるようでした。

  スクリーンには、若いころからのスナップ写真や国内外での作品展などがスクロールされ、演歌が大好きだった元永さんが、西宮市のホールの舞台で「星影のワルツ」を熱唱するシーンを最後に、「死ぬまで生きた」元永さんに別れを告げました。

合掌

入倉 則夫(会員)

元永定正氏遺影

元永定正氏遺影

 追記:写真は「もーやん さようならの会」実行委員会の許可を得て掲載しています。

事務局注:元永定正さんの略歴

1922年、三重県伊賀上野生まれ。漫画を描きながら多くの転職を経て、1955年、「具体」リーダーの吉原治良氏に誘われて具体美術協会に参加。以降、平面、オブジェ、パフォーマンスなど広く国内外で活躍。1966-1967年、ニューヨーク滞在。その後は作風がエアブラシによるユーモラスな形態になる。1970年、大阪万国博「お祭り広場」のイベント演出。1983年、日本芸術大賞受賞。1991年、紫綬褒章受章。詩人・谷川俊太郎氏と絵本を多数共同制作。名古屋では、桜画廊、名鉄百貨店、JR高島屋名古屋店などで個展開催。1991年と2009年に三重県立美術館で大規模な個展が開催された。

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