観るカルパッチョ

カテゴリ:アート見てある記,旅ジロー 投稿者:editor

 カルパッチョと云えば先ず料理を思い浮かべてしまう。この料理名がヴェネツィアの画家ヴィットーレ・カルパッチョ(Vittore Carpaccio)から来ていることはこのブログの読者ならご存じだろう。料理の名前が画家カルパッチョと関係していることは確かなのだが、いくつかの説が伝えられている。イタリア人の多くが信じているのは、次のような話だそうだ。「1950年のある日ヴェネツィアのハリーズ・バーと云うレストランでの出来事。モチェニーゴ公爵夫人が「主治医から肉は生で食べるように言われている」と料理を注文した。そこでオーナーは薄切りの生の牛ヒレ肉にマスタードソースをかけて供した。

江戸東京博物館外観

江戸東京博物館外観

 折からカルパッチョの500年回顧展が開かれていて、彼の色使いに似ているところから料理を「カルパッチョ」とオーナーのジュゼッペ・チプリアーニが名付けた」。ほかには、「画家のカルパッチョが生の薄切りの牛の赤身肉にパルミジャーノ・レッジャーノを振りかけた料理が好きだったから」とか、単に「生肉の色が画家カルパッチョの描く「赤」に似ているから」と云う説などがあるそうだ。ヴィットーレ・カルパッチョは15-16世紀にヴェネツィアで活躍した画家だ。正確な生没年は伝えられず、1455年頃-1525年頃とされている。「世界遺産 ヴェネツィア展」がこの秋から日本全国を巡って開かれている。
カルパッチョの「サン・マルコのライオン」が案内看板に

カルパッチョの「サン・マルコのライオン」が案内看板に


その最初の会場が江戸東京博物館、年末には名古屋にも来る(名古屋市博物館:12/22-3/4)。数多くの展示物の中にカルパッチョの絵が4点あった。料理に関係する赤と白を使った作品は2点、「聖母子と洗礼者聖ヨハネ」と「二人の貴婦人」だ。
赤が基調の展覧会会場入口

赤が基調の展覧会会場入口


 後者の「二人の貴婦人」は、元々家具の2枚組の扉の板絵で、その右側下半分を切り取ったものと云うことが、比較的最近発見されて話題になっている。上半分は「潟(ラグーナ)での狩猟」としてロサンジェルスのJポール・ゲッティ美術館にあり、左側の扉は未発見だ。カルパッチョの作品の多くはヴェネツィアにあって、日本では観る機会がとても少ない。しかも、本邦初公開の「二人の貴婦人」は東京会場だけの展示だ。この展覧会はTBSが絡んでいるので、テレビでご覧になった方も多いだろう。この絵を「世界でいちばん美しい板絵」と言っている評論家もいる。牛肉のカルパッチョは、ユッケ食中毒事件のため、日本で食べるのは難しくなるだろう。12月11日までに東京に行く機会があれば、両国までカルパッチョを観に行ってはどうか。
展覧会のチラシには「二人の貴婦人」

展覧会のチラシには「二人の貴婦人」


旅ジロー

写真説明
(1) 江戸東京博物館外観
(2) カルパッチョの「サン・マルコのライオン」が案内看板に
(3) 赤が基調の展覧会会場入口
(4) 展覧会のチラシには「二人の貴婦人」

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