コレクション解析学2011第2回「生命のかたち」を聴講した。今回は青木野枝氏の版画作品《水天1,14》を中心に、市美の角田学芸員にお話を伺った。ご存知のように青木氏は鉄を素材にした彫刻作品を制作の中心にしており、市美の南庭にも大きな卵型の骨組みのような作品が設置されているが、今回の講座では鉄の作品にも通じる版画作品独特の世界観を感じることができた。
《水天》は縦横が100cmx100cmもある大型の銅版画で、画面を覆う涼しそうなブルーの濃淡が心地よい。《水天1》はあまり深くない水中から水面を見上げているような印象で、他方の《水天14》は水面に近いところから水中を上ってくる気泡を覗き込んでいるようだ。氏の作品には上昇感を感じるものが多いが、最近では逆に下降するイメージを作品名に持つものも作られているそうだ。双方で「循環する水」を表現しているわけだ。
確かに、雨として降った水は蒸発して空に昇り、また降ってくる。そして植物も、動物もその水に命を養われている。そういえば、雨の表現に「慈雨」という言葉があるが、氏の作品に感じられる穏やかさ、おおらかさは、アートワールドの「慈雨」なのかもしれない。
話を聞き終わり、南庭の卵型の作品を見に行ったら、その根元あたりに茶色のマフラーのようなものが落ちている。と思ったら、気持ちよさそうに昼寝している猫だった。「慈雨」は人だけでなく、猫にも平等に降るものらしい。
杉山 博之
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