芦屋市立美術博物館について

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:editor

前日投稿した芦屋市立美術博物館について、19日付けの神戸新聞につぎのような記事が掲載された。

学芸員4名全員が、大幅な人件費削減などに反発し、3月末で全員が退職することになった、ということ。
この美術博物館は、1991年に開館したが、財政難などの理由で、2006 年からAMMというNPO法人に運営委託されており、2011年度から は、AMMを含む新しい組織が指定管理者となり、3100万の人件費を2000万に減額し、学芸員を2名にするという方針を決めた。
このことに反発して4名全員が辞表を提出することになった。
これを受けて、美術館に作品を寄託している地元の人々が、不安を感じて作品を引き上げることを検討しているという。

以前、名古屋ボストン美術館でも、待遇を巡って美術課長が辞任に追い込まれることがあったが、折角地元の文化向上のために設立された美術館が,経営難で閉館に追い込まれたり、入場者が伸び悩むために大幅に路線変更されることは、文化を愛する人々にとって悲しむべきできごとである。

こういうことに対して、私たちに何ができるか、考える必要があろう。

会員 林 葉子

参考 神戸新聞

http://www.kobe-np.co.jp/news/bunka/0003813530.shtml

あいちトリエンナーレ勉強会Vol.12

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:editor

 2011年2月12日、旧ATカフェでトリ勉Vol.12が行われた。
今回は名古屋市美術館で展示されたジェラティン(Gelitin)とフランツ・ヴェスト(Franz West)について、名古屋市美術館の笠木学芸員をゲストに迎え、展示作品以外にも多くの作品のスライド、ビデオを見せてもらいながら話を聞いた。

 展示作品は一方が金属粉を使ったインスタレーション、他方が不定形な立体彫刻。一見するとタイプの異なる作品のようだが、どちらも1960、70年代のウィーン(オーストリア)の美術状況のみならず、精神的にアンビバレントな社会動向の影響を今でも色濃く反映しているのだそうだ。
 たしかに、上映されたスライドの中にはある種のノイローゼの症状にも似た行動を意図的に取り入れたと思えるものも含まれ、見ていて心地良いとは言い難い、刺激的な印象を受けるものが多かった。

あいちトリエンナーレ勉強会V12

あいちトリエンナーレ勉強会V12


 ゲストの話が終わり、会場からのQ&Aの中で次回のトリエンナーレにも期待しているという発言もあったが、トリエンナーレの掲げるカッティングエッジを表現する作品群には!もあれば??もあり、作品を前にして困惑することもしばしばだ。美術に限らず、革新的で時代を先取りしたものほど評価に時間を要することは理解しているつもりなのだが。
【あいちトリエンナーレ勉強会Vol.12】 続きを読む

いよいよ始まる、ゴッホ展

カテゴリ:アート・ホット情報,ボギー鈴木 投稿者:editor

2月22日(火)から、待望の「ゴッホ展」が始まりますが、NHK教育テレビの「日曜美術舘」(日曜朝、9時~9時45分、再放送、翌週日曜日、夜8時~8時45分)で、ゴッホが取り上げられます。放送は20日朝8時からと、27日夜8時からです。興味のある方はぜひ。
ボギー鈴木(会員)

ご参考
http://www.nhk.or.jp/nichibi/weekly/2010/1128/index.html

福沢一郎絵画研究所展

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:editor

福沢一郎研究所展図録

福沢一郎研究所展図録


20年ほど前に、名古屋市美術館で『日本のシュールレアリスム』展という企画展が開催されました。200頁を超える図録も記録性が高く、当時高い評価を得た好企画の展覧会でした。
その展示の中に、福沢一郎のコラージュ手法を用いた絵画作品が数点出品されていた記憶があります。福沢一郎(1898~1992)は戦前の日本画壇に、本場ヨーロッパのシュールレアリスム芸術を紹介した画家として有名です。その福沢一郎は、戦前、自宅のアトリエで絵画研究所を主宰していたそうです。画塾というより欧米の新しい芸術思潮に触れるというサロンの雰囲気もあったそうです。そこに集まった作家約30人の当時の作品に照射した企画展が開催されました。東京・板橋区立美術館主催『福沢一郎絵画研究所』展(2010.11.20~2011.1.10)です。

余談ですが、板橋区立美術館(写真)はハッキリ言って、交通が不便。大手町から地下鉄都営三田線の終着駅「西高島平」駅まで約1時間、さらに陸橋や坂道をテクテクと徒歩10数分。幸い、上京した日は陽気で好天気でしたが、悪天候なら途中で引き返したかもしれません。

板橋区立美術館

板橋区立美術館正面


 板橋区立美術館は小規模な2階建ての造りで、展示は2階の2室とロビーを使っていました。まず、福沢一郎の当時の代表作9点が展示されています。題名と作品を交互に見ながら進むと、福沢一郎は徹頭徹尾、シュールレアリストではなかったとわかります。また、後に社会派的作風に転じた山下菊ニ(1919~1986)、名古屋から上京した吉川三伸(1911~1985)や眞島建三(1916~1994)らの福沢一郎絵画研究所で学んだ当時の作品群が整理されて展示されています。吉川三伸は2点。「葉に因る絵画」(1940)は名古屋市美術館所蔵です。また、眞島建三は4点。ギリシャ神話の牛頭人身の怪物を描いた「ミノタウルス」(1940)、ダリ風の「パンの詩」(1951)などです。彼らがヨーロッパのシュールレアリスム芸術に感化を受け、同化・消化・異化そして独自の画風を確立していったことが想像できます。ヨーロッパからのシュールレアリスム直輸入のような作品から、治安維持法が闊歩する時代を背景に、何かを模索していそうな作品まで、重い作品展示です。

 今展は見終わると、エルンスト、ダリ、キリコ、ミロといった比較的見慣れた作品と違って、少々疲れる展覧会ですが、太平洋戦争前後の美術史断面を丁寧に検証した、学芸員の地道で真摯な姿勢がよくわかります。

(写真:板橋区立美術館、『福沢一郎絵画研究所』展と『日本のシュールレアリスム』展の図録)

入倉則夫(協力会会員)