境界のかたち 現代美術 in 大府

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 「境界のかたち 現代美術 in 大府」を見てきました。

会場の「おおぶ文化交流の杜 allobu」は、図書館、ホール、ギャラリーを併設した複合施設で、空間的にかなりゆったりした構造になっています。

展示風景

 ロビーには、鈴木一太郎の大きなドットで構成された馬の彫刻が置かれています。まるで巨大化したテレビゲームのキャラクターか、パソコンのアイコンのようです。間近から見ると、まるで立体感が感じられず、とても奇妙な作品でした。

展示風景

 エントランスの馬の彫刻に対し、松川朋奈の作品は写真と見間違うほど、細密に描かれています。作品タイトルは、絵画作品のタイトルというより、小説の一節のようで、描かれた場面の前後の情景や会話を強く想像させます。とても繊細な心理描写が込められていて、離れたり近寄ったりして、しばらく眺めていました。

展示風景

 うしおの作品は、地元の江戸時代の史実に基づいた映像作品です。室内に設置された扇風機は、換気対策ではなく、作品のある背景を暗示しています。

そういえば、愛知県美術館で開催中の所蔵作品展(~4月11日)でも彼の作品を見かけたと思います。

その他にも、折原智江、下道基行、平川祐樹の作品を見ることができます。

会期は、2月14日まで。マスク着用でお出かけください。

杉山 博之

引きこもりの中で読んだ記事

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今年2月16日の豊田市美術館「岡崎乾二郎 視覚のカイソウ」展ミニツアーを最後に、ブログ原稿を書いていません。

理由はコロナウイルスの感染拡大。不要不急の外出自粛が要請され、美術館の臨時休館も相次いでいるからです。2か月間、全く展覧会を見ていません。それでも、雑誌や新聞で読んだ記事について書くことは可能かなと思い、久しぶりに投稿しました。

◎食レポに中に「視覚のカイソウ」展の記事が=週刊文春2020.3.12号

 食べもの等をテーマにエッセイを連載している平松洋子さんが「五平餅を豊田で」という記事の中で「『これはどうしても見ないと』と決心して2月23日に豊田市美術館に駆け込んだ」と書いていました。

豊田市を訪れるのは、2013年の「フランシス・ベーコン展」以来のことだったそうです。「期待を上回るすばらしさだった」とのこと。平松さんの訪問が2月16日だったら会えたかもしれないと思ったのですが、顔を知らないので、考えただけ無駄でした。

平松洋子さんにとって「視覚のカイソウ」展も「フランシス・ベーコン展」も、はるばる東京から来るだけの価値のある展覧会だった、ということはハッキリ分かりました。

◎豊田市美術館・久門剛史(ひさかどつよし)展=中日新聞2020.4.4(朝刊・県内版)

 「久門剛史展」は杉山博之さんが協力会ブログにレポートを投稿していますが、新聞にも記事がありました。記事の中では「作品の解説は展示を見終えてから渡される。

久門さんは『解説を読みながら答え合わせをしていく展示が多い中、自由に見るという喜びを感じてもらいたい』と話した」という箇所が印象的でした。ただ、残念ながら、愛知県の緊急事態宣言を受けて4月11日から5月6日まで美術館は臨時休館となったので、しばらくは我慢の日々です。

◎京都市京セラ美術館=「pen」2020.4月号、日本経済新聞2020.4.6(朝刊・文化面)

 「pen」には、リニューアルオープンする京都市京セラ美術館の外観や内部の写真のほか、新館・東山キューブで開催される展覧会「杉本博司 瑠璃の浄土」、京都市京セラ美術館の周辺案内などが掲載されています。

日本経済新聞は主に、本館に隣接の収蔵庫を改装した面積約1000平方メートル、天井までの高さ約5メートルの現代美術展示館「東山キューブ」について書いています。土屋隆英・展覧会プログラムディレクター始め現代美術専門の学芸員が招かれ、杉本博司の個展を手始めに、アンディ・ウォーホル展や椹木野衣(さわらぎ・のい)氏が企画する展覧会を開く予定とのことです。

大いに期待していたのですが、京都市京セラ美術館の展覧会は全て開幕延期となっています。緊急事態宣言の対象区域が全都道府県にまで拡大されたので、少なくとも5月6日までは開幕延期が続くと思われます。

◎最後に

4月15日付けの「2020年 協力会イベント情報」に「協力会の活動休止」のお知らせがありました。美術館が軒並み臨時休館している間の活動休止はやむを得ないと思います。

個人的には、美術館が開館しても各種イベントが開催できる状況になるまでは活動休止が続くと感じています。当面は自分のできる範囲でコロナウイルスの感染拡大防止に努めることとします。

Ron.

藤田嗣治《二人の祈り》《夢》のことなど

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あいちトリエンナーレ2019に並行して、名古屋市美術館常設展・名品コレクション展Ⅱの展示が始まりました。今回の展示の目玉は何といっても、本年6月21日に寄贈を受けた藤田嗣治の《二人の祈り》(1952)と《夢》(1954)。これで、藤田嗣治コレクションの厚みが増しましたね。評価額に触れると興ざめですが、6月22日(土)付け中日新聞には「鑑定評価では少なくとも計3億5千万円相当という」と書いてありました。

◆「藤田嗣治作品解説会」が開催されます  《二人の祈り》と《夢》が寄贈されて、名古屋市美術館が所蔵する藤田嗣治の絵画が全9点になったことを記念して、9点の作品の解説会が開催されるそうです。期日は10月5日(土)午後2時~3時半(受付は午後1時半~)。場所は名古屋市美術館2階講堂、講師は深谷克典・名古屋市美術館副館長。受講料は無料で、申込不要・先着順とのことです。楽しみですね。

◆「小さな藤田嗣治展」(2015年・岐阜県美術館)の思い出  私が最初に《二人の祈り》と《夢》を見たのは、2015年に岐阜県美術館で開催された「小さな藤田嗣治展 レオナール・フジタからの贈り物」の会場です。9月27日開催の協力会ミニツアーで、岐阜県美術館の廣江康孝学芸員による1時間にわたる熱いギャラリートークを聴きながら鑑賞しました。参加者は11人。小ぶりな作品が多くて文字通り「ミニツアー」でしたが、収穫はビッグでした。展示のテーマは「こども」「女性/猫」「Pour Kimiyo」「フジタの夢」の四つ。《二人の祈り Adoration》と《夢 Le Rêve》は「フジタの夢」に展示されており「印象深い作品だった」と記憶しています。当時の図録には「個人蔵」と記載されていましたね。

◆コシノ・ジュンコのおかっぱ頭、お手本は「モンパルナスのキキ」  

藤田嗣治に関連して、8月9日(金)付け日本経済新聞「私の履歴書」に面白い文章がありました。

(略)デビューに当たり、私は2つのことを心がけた。1つはおかっぱのヘアスタイル。もう一つは名前の表記だ。  おかっぱ頭にしたのは初対面でも相手の記憶に残るインパクトを残したかったから。外見は自分の存在を相手に伝える有力な武器になる。  もともと私は幼少からおかっぱ頭だった。途中で違う髪型を試しても結局は元に戻ってしまう。それが一番自分らしいと感じるから。実は心の中に一人のアイドルがいた。  「モンパルナスのキキ」  20世紀前半、パリで活躍した謎の女性で、キスリングや藤田嗣治らが競ってモデルにしたことで知られる。私は美術の本を読むうちにキキに憧れるようになり、そのユニークな髪型をまねていたのだ。  名前の表記をカタカナにしたのは、小篠という姓が珍しく、「コシノ」となかなか読んでもらえなかったため。カタカナならば間違える心配はないし、印象も強い。国際的なイメージも演出できる。(略)  

現在、岡崎市美術博物館で開催中の「キスリング展」には「キキのコーナー」があり、キスリングと藤田嗣治の交流について書いたパネルもあります。偶然ですが、コシノ・ジュンコ「私の履歴書」の中で、キキ、キスリング、藤田嗣治という3つの名前が繋がったので、引用させていただきました。  

Ron.

百舌鳥・古市(もずふるいち)古墳群のこと

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 2019年7月6日に、仁徳天皇陵古墳(大山古墳・堺市)を含む49基の古墳で構成される、大阪府の百舌鳥・古市古墳群が世界文化遺産に登録されました。協力会・秋のツアー(2015.10.31~11.1)に参加した時、堺市役所に百舌鳥・古市古墳群の世界遺産指定を目指すキャンペーンが掲示されていたのを思い出し、他人事とは思えない気持ちで新聞記事を読みました。当時のメモと昨日・今日の新聞記事を照らし合わせながら、百舌鳥・古市古墳群について少し書いてみます。

 秋のツアーでは11月1日(日)午前に堺市の大仙(だいせん)公園内にある堺市博物館、仁徳天皇陵と堺市役所21階展望フロアを見て回り、仁徳天皇陵の見学からはNPO法人堺観光コンベンション協会のガイドボランティア・川上浩さん(以下「川上さん」)が案内してくれました。後で知ったことですが、川上さんはNPO法人堺観光コンベンション協会の理事長。知識豊富で、熱心にガイドしてくれた理由がよく分かりました。

  川上さんの話では、昭和30年(1955年)、私有地であった堺市の「いたすけ古墳」が住宅開発のために古墳がつぶされそうになったが、堺市は資金難で買い取りが難しかったため、市民のナショナルトラスト運動によって保存された。そして、その時に出土した衝角付冑型埴輪(しょうかくつきかぶとがたはにわ:堺市博物館所蔵)が、現在、堺市の文化財保護のシンボルマークになっている、とのことでした。2019.7.7付け日本経済新聞(朝刊)の社会面、竹内義治編集委員の署名記事も「いたすけ古墳」の話を取り上げています。

(略)世界遺産に登録された古墳の一つ、堺市のいたすけ古墳の周濠(しゅうごう)にコンクリート橋が朽ちた姿をさらしている。1955年、土砂採取のため墳丘を壊そうと架けられた。市民や研究者が反対の声を上げたことで開発計画は中止され、国史跡となって保存された。橋は市民による文化財保存運動の証人とされている。(略)

 川上さんは「仁徳天皇陵の南の履中(りちゅう)天皇陵(仁徳天皇の長男の墓)の方が古い形式の墳墓であるため、どちらが仁徳天皇陵か争いがある」とも話していました。このことについて上記の記事は、次のように書いています。

(略)心配もある。構成資産名として「仁徳天皇陵古墳」など宮内庁による陵墓名だけを表記している点だ。学術的には被葬者が未確定である実情が誤解されかねない。「大山古墳」など学術的な遺跡名を併せて紹介し、丁寧に説明する必要がある。(略)

 また、ツアー当日は観光客をはるかに上回る人数の清掃ボランティア「仁徳陵守り隊」が活動していたのが印象的でした。上記の記事は、この清掃活動について「2018年度、百舌鳥・古市古墳群の陵墓を所管する古市監区では延べ約1400人が清掃など勤労奉仕活動に参加した」と、書いています。

 なお、仁徳天皇陵の遥拝所からみると「巨大な墳墓」であることは実感できますが、全体の姿は分かりません。ツアーでは堺市役所21階展望フロア(高さ約80メートル)まで移動して、仁徳天皇陵を見学しました。しかし、川上さんからは「残念ですが、300メートル以上の上空でないと仁徳天皇陵の全貌を見ることはできません」との言葉。これについて2019.7.8付け日本経済新聞(朝刊)に、こんな記事があります。

(略)堺市博物館(同市堺区)を運営する堺観光コンベンション協会の担当者は「古墳の巨大さをVRで体感してもらいたい」と話す。2017年から、ドローンで天皇陵などを上空から撮影した映像をVRで楽しめるようにしている。(略)7月下旬にもVR映像視聴のためのゴーグル型機器を2倍の約40台に増やす。(略)上空から古墳群を楽しめるツアーを計画する旅行会社も登場した。阪急交通社(大阪市)はヘリコプターを利用し、堺市の古墳群の上空を周遊するツアーを検討中で、7月下旬にも発売する予定という。

VRゴーグルについては2019.7.8付け中日新聞(朝刊)も紹介しています。また、上記2019.7.8付け日本経済新聞は「登録決定から一夜明けた7日、古墳群を代表する仁徳天皇陵古墳は早くも観光客でにぎわった」とも書いています。「ゆったり見学できる時期のツアーに参加することができて良かった」と思いました。

Ron.