卒展、修了展(名古屋芸大)(その4)

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:editor

「回生の苗床」 光内惟奈

 先日、名古屋市美術館で「真島直子 地ごく楽」展を見た。
会場にはカラフルでぐるぐる、うねうねした様々な作品が並んでいた
が、後半から”人の形のようなもの”が多く現われてきた。 
(展示内容の詳細は省略。会期は2018年4月15日まで)
”キレイだけど少々不気味”な展示を見終え、その後、近隣の芸大の
卒業・修了展を観に行くことにした。名古屋芸術大学と愛知県立芸術
大学の展示を見たのだが、その会場でビックリ。”キレイだけど少々
不気味”は静かに拡散しているようだ。

「回生の苗床」 光内惟奈

「回生の苗床」 光内惟奈


 光内氏の作品を見たのは、名古屋芸術大学の会場だった。薄暗い展
示室の奥の方に2体の人形が横たえられていた。一方の人形の手足の先
は木の枝に変化しており、もう一方は腹部からキノコのようなものが
伸びていた。どちらも目は大きく、虚ろに開かれており、死体の様を
表現していた。

 人形は石粉粘土を素材に、キレイに彩色され、構造的に球体関節と
なっていた。(ハンス・ベルメールや四谷シモンを連想させる)
説明によれば、氏は以前より生死について考えることが多かったこと、
人形の中身は空洞になっていて、その空間を魂を入れるための空間と
考えていることがわかった。

「回生の苗床」 光内惟奈

「回生の苗床」 光内惟奈


 動物も植物も、死ねば徐々に腐敗し、いずれ消滅するが、無機物で
ある人形は誰かに破壊されるまで変わらずに存在する。氏の作った
人形は新しい生命の苗床として、永遠に鑑賞者の目にさらされる。
もし、遠い未来に氏の魂を宿した人形が再生するとしたら、彼女たちは
やはり新たな人形を作るのだろうか。
”キレイだけど少々不気味”。ヒンヤリとした予感を感じる展示だった。

杉山博之

ボストン美術館の至宝展

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

2月18日から7月1日まで名古屋ボストン美術館で開催中の「ボストン美術館の至宝展」(以下「本展」)に行ってきました。文字どおり、古代エジプトから現代までの4500年間に東洋、西洋で制作された数々の至宝を集めた展覧会でした。それだけでなく、収集者の写真、経歴などの紹介もあります。展覧会の概要は以下のとおり。先ず、3階から。
◆古代エジプト美術
展示品は《メインカウラー王頭部》(紀元前2490-2472)から《人間と雄羊と頭部型装飾の首飾り》(紀元前270-50)まで、時代の幅は2500年!もあります。出土地も、カイロ近郊のギザからヌビエ(スーダン)まで。古代エジプトが支配した地域の広さを再認識しました。また、後日、「ヌビエ人がエジプトを支配した時代があった」ということも知りました。
なお、《メインカウラー王頭部》の材質はトラバーチン。辞書には「緻密・硬質で縞状構造をもつ石灰石。水に溶けている炭酸カルシウムが沈殿してできたもの。」とありました。
◆中国美術
展示品は、北宋の皇帝・徽宗《五色鸚鵡図巻》を始め、陳容《九龍図巻》、周季常の五百羅漢図2幅など北宋・南宋の絵画。五百羅漢図の解説には「明治27年(1894)京都・大徳寺は五百羅漢図(全百幅)の一部をボストン美術館に貸し出し、その十幅がボストン美術館の所有となる。」と、書いてありました。
◆日本美術
 江戸時代の工芸、絵画を展示。チラシでは「170年ぶりの修理を経た巨大涅槃図、初の里帰り!」というキャッチコピーの英一蝶《涅槃図》始め、曽我蕭白《飲中八仙図》や喜多川歌麿《三味線を弾く美人図》を紹介しています。この外、岸駒、呉春など五人の絵師共作による二曲一双の屏風や与謝蕪村の屏風も見応えがあります。
◆フランス美術
「ボストン美術館のミスター&ミセス、そろって登場!」というキャッチコピーのゴッホ《郵便配達人ジョゼフ・ルーラン》と《子守唄、ゆりかごを揺らすオーギュスティーヌ・ルーラン夫人》を目指して4階へ。ミレー《洋梨》には「3点しか知られていないミレーによる静物画の一つ」、セザンヌ《卓上の果物と水差し》には「スポルディングのお気に入り」という解説がありました。モネの絵画4点は、どれも見逃せません。
◆アメリカ美術
展示室に入ると正面のパネルにオキーフ《グレーの上のカラー・リリー》。パネルの裏側には同じ作者の《赤い木、黄色い空》。どちらも具象画だけれど抽象画にも見える作品です。
◆版画・写真
 奥まったところに展示しているので素通りするところでした。写真は、さらに奥の部屋で、現代美術の《静物》(果物がカビに侵され、やがて崩れていく動画)と一緒に展示。
◆現代美術
展示作品はアンディ・ウォーホルや村上隆などの外、黒人の肖像画も。この作者=ケヒンデ・ワイリーについては、ネットのニュースが「オバマ大統領を描いた肖像画が2018年2月12日にスミソニアン博物館・国立肖像画美術館でお披露目された。」と報じていました。
                            Ron.

卒展、修了展(東京藝大)(その3)

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:editor

燃やせないもの

燃やせないもの


 展示室の入り口から眺めたときは、洗ったシャツがたくさん干してあるように見えた。近寄ると大勢の観客が作品を指さして、ガヤガヤと話をしていた。何を騒いでいるのだろう?と思って近寄ると、床に白っぽい破片と粉が散らばっているのが見えた。

 「?」と思って眺めていると、わずかに揺れるシャツの揺れ方が何やら変なことに気がついた。裾の方が揺れるのではなく、まるでベニヤ板をぶら下げたようにシャツ全体が揺れていた。シワの形も変わらない。さらに「?」と思って、キャプションを読むと、素材は「陶」となっていた。

 ようやく他の観客がざわめいていた理由がわかった。この作品は「だまし絵」になっていて、みごとにひっかかってしまったわけだ。

 その他の会場にも、美麗な絵画や彫刻が多数展示されていたが、紹介したように普段美術館ではお目にかかれなさそうな作品の方が印象に残った。

 愛知県の芸術系学校でも、今月、来月と卒業・修了作品展が行われる。今年は栄の芸術文化センターギャラリーではなく、各学校が展示会場になっているようだ。好奇心を刺激してくれる作品を見つけに、ぶらりと出かけてみてはどうだろう。

杉山博之

卒展、修了展(東京藝大)(その2)

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:members

「park」 長谷川博子

「park」 長谷川博子 卒展、修了展(東京藝大)

 東京藝術大学美術館の中の作品を見終え、中庭に出るとそこにもかなりの雪が残っていた。中庭にも数点の作品が設置されており、とりわけ目を引いたのが透明なビニールのテントの作品だった。
周りにグリーンを主とした布を幟のように張りめぐらし、さながら温室のようだ。入口は開けっ放しだが、中に入ると以外に暖かく、寒さからの避難先として他の鑑賞者にも好評だった。

 テントの中には様々な制作手法による衣装が多数、ぶらさがっていた。手芸を趣味とする人には、相当に興味深い展示なのだろう。あるものは着られそうであり、あるものは着心地の想像もつかないのだが。テントの中から、ぼんやりと中庭を眺めているうちに、気分が落ち着いてきた。

「park」 長谷川博子 卒展、修了展(東京藝大)

 残りの作品を見るためにテントを出て、歩きながらふと思ったのだが、この作品のテントは衣装をかけておくためのクローゼットのような装置ではなく、衣装とセットの空間として、中に入る人を包み込むように提示されていたのだろう。
例えるなら、テント、幟、衣装は、ファミレスのキッズランチのように、彩の楽しいワンプレート全体を楽しむ、そんな見方がちょうどいいのだろう。

 今後、この作家は、いわゆる美術の領域よりも、身近な生活の領域で心地よい作品を展開していくのかもしれない。
そんな予感のする作品だった。

(その3に続く)

杉山博之

泉屋博古館にて まずは講堂でレクチャを聴く会員たち 会長の乾杯の音頭に合わせて、いただきます! 「回生の苗床」 光内惟奈 燃やせないもの 夢見たものは 展示室で解説を受ける会員たち プティパレ まずはエントランスホールでの解説 2017_ジャコメッティ_1 富山県立美術館にて