ボストンの美術館巡り—ボストン美術館で名古屋市美術館所蔵作品に遭遇—

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 3月23日から一週間ほどのあいだボストンに出かけました。ボストンではこの期間 オペラもクラシックコンサートもなかったのでただひたすら美術館そして名所、旧跡を 訪れる旅となりました。

ボストン美術館

 まずは収蔵点数50万点を誇る美の殿堂ボストン美術館です。ミュージアムショップでmfaというロゴマークを見て最初何なのか分かりませんでしたが、正式名称がMuseum of Fine Arts, Bostonということで納得。愛称がMFAです。最初驚いたのが入場料の高さ。25ドルです。でも冷静に考えれれば企画展が二つ含まれているので妥当な値段です。驚くことにその企画展の両方ともに自分と関係があり、こんなこともあるんだと驚いています。企画展の一つが「フリーダカーロ展」。

 名古屋市美術館にはメキシコ絵画が常設展示してあります。その中でも私のお気に入りがフリーダカーロの「少女と死の仮面」です。それがボストン美術館になんと展示されているではないですか。すぐさまキャプションを見る。Nagoya City Museumと書かれている。まさしくいつも見ているあの作品が飾ってある。名古屋市美術館が評価されたみたいで単純に嬉しい。その絵の前で立ちどまる人達をすこし観察してみた。50代の夫婦、母親と3歳ぐらいの幼児、40代ぐらいの男性二人、若いカップルなど、みな足を止めて話をしている。作品の小ささにも関わらず興味を引くようで皆その絵で立ちどまる人たちが多かったように思う。  

ボストン美術館 名古屋市美術館の作品を鑑賞する人々

 もう一つの企画展〈Gender Bending FASHION〉の中でファッションデザイナーの山本耀司さんの作品が展示されていたことです。以前からアメリカで評判がいいことは知っていましたがこんなに評価が高いことに驚きました。皆さんもご存じだと思いますが耀司さんのブランドはワイズという名前です。私的なことで申し訳ありませんが、私は大学卒業後にアパレルメーカーのイッセイミヤケインターナショナルという名の三宅一生さんの服を販売する会社で働いていました。当時の会社の上司が野球好きでワイズとイッセイで野球をしようということになりました。現在あるかどうか分かりませんが、麻布球場という場所で仕事が終わってから照明をつけて野球をしました。私は入社2年目ぐらいだと思いますが、試合に打者で出させてもらいました。そのときに対戦した投手が耀司さんでした。サイドスローの球を投げられたんですが、結果がどうだったか今は全く覚えていません。試合もどっちが勝ったかさえ覚えていません。三宅デザイン事務所のデザイナーたちがチアリーダーさながらの応援を見て爆笑していたのを鮮明に覚えています。当時はアルマーニ等のイタリアファッションの勢いがある時代で耀司さんはまだ世界的にはそれほど知られている存在ではありませんでした。今から40年ほど前の話です。現在は高校で教師をしていますがイッセイやワイズの服はもう着ないと思いますが思い出もあり、いまだに捨てることができずに大切に取ってあります。  

 常設展ではゴーギャンの雑誌などでよく目にする「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」、ルノアールの「ブージバルのダンス」 モネの「日本娘」 セザンヌの「赤いひじ掛けイスのセザンヌ婦人」 を堪能。また哀愁ある印象的な絵のホッパーの「ブルックリンの部屋」など知られた画家の絵を鑑賞する。とにかくアメリカ美術、ヨーロッパ美術、日本や中国の美術、古代エジプトやギリシア、ローマ、エトルリアなどの美術とても一日でみられる規模ではなかった。 

イザベラ・スチュアート・ガードナー美術館

 つぎにイザベラ・スチュアート・ガードナー美術館。レンゾ・ピアノが設計した新館から入場する。この美術館、大富豪イザベラが莫大な富に任せて館を建てそこに彼女の趣味で集めた絵画、調度品を生活に根差して展示してある美術館。絵にひとつひとつキャプションがついていない。説明書が各部屋においてあり鑑賞者はそれで誰の作品かを理解することになっている。どこかでみたような作品だなと思うとそれがレンブラントだったりする。 絵の作者を当てる楽しみも出てくる。マザッチオ、ボッティチェッリ、クラナッハ、 デューラー、サージェントが部屋の中にさりげなく飾ってある。ここの中庭は殊に有名でヨーロッパから資材を運んで作ったようだ。メトロポリタン美術館別館のクロイスターズに似ている。ここの有名なテッツィアーノ「エウロペの略奪」は貸し出し中であった。

Harvard Art Museum

 三番目はHarvard Art Museum ここはフォッグ美術館、Busch-Reisinger 美術館、Arthur M.Sackler美術館 を一つにまとめたもの。さすがにハーバード大学すべてに充実している。これが大学への寄贈でなりたっているのがすごい。ゴッホ、ピカソ、モネ、セザンヌ、フラ・アンジェリコ、フィリッポ・リッピ、フランク・ステラ、マーク・ロスコ、白隠など。またこれが撮影OKで写真撮りまくりの世界にはまる。雪の田舎道を描いたモネの絵、魚を描いたモネの絵、花瓶に花があふれんばかりのルノアールの絵、農村の中の中央に白い家を描いたセザンヌの絵、特徴ある女性の絵を描いたロセッティなどあまり見る機会のない絵を鑑賞することができ大満足。

MIT博物館

 最後はMIT博物館。ここはここでまた面白い。ヨットのアメリカズカップで優勝するためにヨットをいかに設計すれば最小の動力でスピードをアップできるかというようなコーナー。そしてベアリング、ねじ、コイル、モーターなどを使った作品など意外と面白かった。またDrawing Designing Thinkingという企画展ではMITの150年に及ぶ歴史を主に建築中心にパネル展示してあり興味深った。

 アメリカ発祥の地であるボストンは結構見どころも多く名所、旧跡が比較的地区に集まっているので観光しやすい街です。アメリカ最古の公園ボストンコモン、独立宣言が読み上げられた旧州庁舎、植民地時代に独立のための集会場であったファニエル・ホール、独立戦争の英雄たちが眠るグラナリー墓地、高級住宅街のビーコン地区、ハーバード大学等を訪れた。今回はオペラがないのでひたすらボストン市内を歩き回りました。

谷口 信一

展覧会見てある記 「アイチアートクロニクル1919-2019展」

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愛知県美術館リニューアル・オープン記念の全館コレクション企画「アイチアートクロニクル1919-2019展」(以下「本展」)を見てきました。通常の企画展と違って、コレクション展(いわゆる常設展)の一部として開催されているため観覧料は一般一人500円(20人以上の団体は一人400円)と割安です。
「コレクション展」とはいうものの、愛知県美術館(以下「県美」)のコレクションだけでなく名古屋市美術館(以下「市美」)や豊田市美術館(以下「豊田市美」)、作家蔵の作品も出品されているので企画展並みの見応えがありますよ。
また、本展(展示室8は本展「9章」の続き)の他、展示室6には「愛知県美術館の名品」というタイトルで、クリムト《人生は戦いなり(黄金の騎士)》などが並び、展示室7には「愛知のやきもの」というタイトルで木村定三コレクションの中から江戸時代の祥瑞(しょんずい)写皿や織部焼、志野焼、黄瀬戸などが、藤井達吉コレクションの中から藤井達吉・加藤藤九郎《草花文花入》などが並んでいます。
つまり、「観覧料が割安」ということ以外は、通常の企画展と同様の規模の展覧会でした。以下、感想などを書かせていただきます。なお、作品名の後の(  )内の数字は作品番号です。

◆1章 愛知洋画のはじまり 1871~
珍品だと思ったのは河野次郎による題不詳の下絵(1-1)と本画(1-2)です。解説によると西洋画の写しのようですが、名古屋市博物館で開催中(4/7まで)に出品されている「西洋画を模した浮世絵」に通じるものを感じました。この作品、所蔵先に「名古屋市美術館」と表示されていましたが、初めて見る作品です。
島田卓二《湯谷渓谷「淵」》(1-9)を見て、中学生の時に湯谷渓谷で見た水の青さを思い出しました。また、加藤静児《渚》(1-12)はどこの風景を描いたものか分かりませんが、何故か懐かしさを感じました。この絵は、愛知県の風景を描いたのでしょうか。

◆2章 愛美社とサンサシオン
愛美社やサンサシオンは、市美の常設展でもおなじみのものです。見ると市美のコレクションから、鬼頭鍋三郎《手をかざす女》(2-22)始め4点の作品と資料数点の出品があります。県美のコレクションだけでなく市美のコレクションも併せて出品しているので、幅広い内容の展示になっていると感じました。
また、岸田劉生の作品が2点出品されていました。そういえば、令和2年(2020)1月8日(水)から3月1日(日)まで市美で「没後90年記念 岸田劉生展」が開催されますね。

◆3章 シュルレアリスムの名古屋
愛美社やサンサシオンと同様に、シュルレアリスムも市美の常設展でもおなじみのものですが、本展では県美コレクションの尾沢辰夫《鴨》(3-2)が目を引きました。チラシに《鴨》の画像が使われているように、何故か目が離せない作品です。なお、3章は全出品作23点中、18点が市美のコレクションです。市美でもなかなか見ることのできない規模の、郷土ゆかりの作家による「シュルレアリスム展」といえます。市美のファンとしては見逃せない展覧会ですね。

◆4章 非常時・名古屋
鬼頭鍋三郎の作戦記録画(いわゆる戦争画)が多数出品されています。ほかには、メキシコ・ルネサンスに連なる北川民次《砂の工場》(4-8)、安藤幹衛《逃走》(4-9)、伊藤高義《粘土採掘場》(4-10)(いずれも県美コレクション)が印象に残りました。

◆5章 日本画と前衛
東松照明の写真が多数展示されており、平成23年に市美で開催された「東松照明展」で見た作品もありました。臼井薫の写真4点の外3点が市美のコレクションですが、杉本健吉《名古屋城再建基金ポスター原画》(5-13)は初めて見ました。

◆6章 桜画廊とその周辺
久野真、浅野弥衛、野水信などの作品が展示されています。市美の常設展でもおなじみの作家なので、懐かしさを感じますね。

◆7章 美術館たちの集団行動
1960年代以降、栄中心にハプニングを起こした「ゼロ次元」「あさいまつおとその仲間」「ぷろだくしょん我S(がず)」などの作品・記録を展示しています。県美コレクションの岸本清子《《ナルシスの墓標》のためのドローイング》(7-4)は、インパクトがありました。なお、ぷろだくしょん我S《人形参議院選》(7-9)と写真(7-7)、資料(7-10)は市美のコレクションです。

◆8章 現代美術の名古屋
協力会のカレンダーに作品を提供していただいた久野利博の写真も出品されています。久野利博の写真は、いずれも市美のコレクションでした。また、辰野登恵子の油彩《Untitled 95-1》(8-12)には迫力がありましたね。

◆9章 現代美術の名古屋
出品リストによれば60点もの作品が出品されており、その一部は展示室8に展示されています。作家蔵の作品や豊田市美のコレクションもありました。なかでも、山田純嗣、大崎のぶゆき、田島秀彦、坂本夏子は平成24年に市美で開催された「ポジション2012」の出品作家だったので、懐かしさを感じます。
◎9章のうち展示室8の作品
展示室8には、協力会のカレンダーに作品を提供していただいた渡辺英司の作品《蝶瞰図》(9-51)を始めとする作品が展示されています。そのうち、木村充伯の彫刻《あ、犬がいる!》(9-56)は展示室の壁上方に張り付いており、同じく《祖先は眠る(2匹の猿)》(9-57)は床に転がっていました。ちょっと変わった展示方法なので、印象に残りました。

◆愛知県美術館の名品
本展は「郷土ゆかりの作家の展覧会」ですが、常設展でおなじみのゴーギャン、レジェ、ムンク、マティス、ピカソ、藤田嗣治などの作品は、ちゃんと展示室6にあるのでご安心を。

◆愛知のやきもの
木村定三コレクションは、祥瑞写皿など白地に鮮やかな青藍色の模様を施した江戸時代のやきものが綺麗です。木村定三が数多くの祥瑞写を収集した理由がよくわかりました。

◆最後に
本展は「県美のコレクション展」ですが、市美や豊田市美の作品も出品されているので「市美や豊田市美のコレクション展」としても楽しむことができます。本展の会期は6月23日(日)までと長いので、期間中、何度も来館できますよ。
県美の出口に「大浮世絵展」(歌麿、写楽、北斎、広重、国芳 夢の競演)のチラシが置いてありました。五人の中に「国芳」が入っているのが、今風です。県美の会期は、令和2年(2020)4月3日(金)~5月31日(日)。主催に「国際浮世絵学会」も入っているので、期待できそうですね。
Ron.

「imagine the crowd」 松本 千里

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 先日、アートフェア東京の若手作家の特集コーナーで見かけた不思議な作品のレポートです。

松本千里 imagine the crowd

松本千里 imagine the crowd

 それは白色で、凹凸があり、立ち上る煙のようにも、足を広げた海星のようにも見えました。表面には光沢があり、細い糸が無数に絡みついていました。プラスチックなのか?、粘土なのか?。どうやら素材は「布」のようでした。側にいた作家に話を聞いたところ、専門は染織で、絞りの要領で布に糸をかけ、モコモコした立体(彫刻?)を制作しているそうです。染織の作品とすれば、着色前の未完成なのでしょうが、立体として、その存在感には十分なものがありました。

 作家仲間からは「色を付けたほうがいい」とアドバイスされるそうですが、なかなか着色に踏み切れないそうです。確かに、目の前の作品に色を付けるとしても、赤も緑も青も似合いそうにありません。むしろ、照明による陰影のみの方が作品をすっきりと印象的に見せていると思いました。もちろん、作品の見方は人それぞれで、色を付けたがる人もいるでしょうが、この作家にとって、今回はここが制作の手の止め時だったのでしょう。とても独特で、存在感のある作品を楽しませてもらいました。

アートフェア東京会場にて
(会期終了)

杉山 博之

ソフィ カル「限局性激痛」展

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 原美術館で開催中の「限局性激痛」展をはじめ、都内で3つのソフィ カルの展示を見てきた。聞くところによると、最近の女性作家の展覧会は、どれも人気があるそうで、前日に行った「イケムラレイコ 土と星 Our Planet」展のギャラリートークも混んでいた。原美術館は展示室がこじんまりとしているので、心配しながら美術館の玄関をくぐった。

 案の定、館内はショップもカフェも、展示室も混雑しており、楽しみにしていた作品を見ながらのギャラリートークはなく、入口前の開けたところで概要の説明があった。状況からすれば致し方ないが、少々残念。
 今回の展示は、1999年から2000年にかけて原美術館で開催された同名の展覧会の再現展。展示室には時間の経過をたどるように作品が配置され、前半がカウントダウン、後半がカウントアップしながら失恋による作家の心情の変化を表現していた。

 原美術館の後、ペロタン東京とギャラリー小柳に行った。最後に行ったギャラリー小柳の展示が一風変わっていて印象的だった。展示室の壁面には、文字を刺繍した布(フェルト)で前面をふさいだ木製の箱が並んでいた。写真や映像が見当たらず戸惑っていると、他の観客が布をめくるようにしていたので、ギャラリースタッフに聞いてみたら、セルフサービスということだった。

 高価なものなのでドキドキしながら、布をめくってみると、布の後ろにはテキストに対応した写真が貼られており、見比べながらセルフサービスで鑑賞した。普段、美術館では作品に手を触れないので、とても新鮮な鑑賞体験だった。

原美術館 2019年3月28日まで

杉山 博之