「ゲルハルト・リヒター展」に関するノート

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

6月25日付日本経済新聞文化欄で岩本文枝記者による「ゲルハルト・リヒター展」の展覧会評を読んだ翌日、名古屋市美術館に出かけると、ミュージアムショップに「ゲルハルト・リヒター展」を特集した「美術手帖」が何冊も並んでいました。巡回先は豊田市美術館ですが「名古屋市美術館のショップとしても無視できない」ということですね。また、youtubeを検索すると、数多くの「ゲルハルト・リヒター展」関連の動画がアップされています。展示風景を見ることや、展覧会の感想を語り合う声、2020年に公開された映画「ある芸術家の数奇な運命」の感想などを聞くことも出来ます。2022.06.30には「美術展ナビ」の「ゲルハルト・リヒター展」の特集も掲載され、家にいながら展覧会情報を得ることができました。以下は、検索した中で、気になった記事です。

◆『美術展ナビ』 「ゲルハルト・リヒター展」絵画の可能性とものを認識する原理を追求 2022.06.30

URL: https://artexhibition.jp/topics/news/20220630-AEJ863199/

・鏡を生かした展示

展示室の写真と文章を交えながらのレポート。最初の写真は《ビルケナウ》の展示室。向かって右が《ビルケナウ》2014、左が《ビルケナウ(写真バージョン)》2014、正面は《グレイの鏡》2019。《グレイの鏡》は灰色に塗った鏡で、左右の作品だけでなく、観客と《ビルケナウ》の元になった4枚の写真も写り込んでいます。『美術展ナビ』は「リヒター自身が日本側と直接ディスカッションを行い、構成を考えた」と書いています。《ビルケナウ》が鏡の写り込みを生かした展示構成になっているのも、リヒター自身のアイデアに基づくものなのでしょう。なお、《鏡》1968の写真にも《4009の色彩》2007が写り込んでいました。

・《ビルケナウ》について

高さ2.6m、幅2mの巨大な4点の油彩画《ビルケナウ》については「この絵の下には、収容所内で密かに撮影された写真のイメージが描かれています。鑑賞者は直接そのイメージを目にすることはできません。よって自ずと知識や記憶、想像力を働かせ、絵具の下に隠れたイメージを思い描くことになります」と書いています。何か肩透かしを食らった気分になりますが、日本経済新聞は「リヒターは1960年代以降、ホロコーストという主題に何度か取り組もうとし、その深刻さゆえに断念してきた。ようやく到達した本作によって芸術的課題から『自由になった』と語る」と書き、この作品の手法を認めているようです。

・フォト・ペインティング

 『美術展ナビ』は「リヒターの代名詞ともいえるフォト・ペインティングやアブストラクト・ペインティングから、肖像画やオイル・オン・フォト、そして最新のドローイングまで、その画業を通覧するにふさわしい内容となっています」と書き、フォト・ペインティングとして赤ちゃんを描いた《モーリッツ》と、ピンクのセーター女の子を描いた《エラ》(本展のチラシに使用)の写真を掲載しています。

 写真を絵画に写し取った作品が、ボケやブレなどを書き加えているとはいえ、なぜ高い価格で買われるのか不思議ですが「リヒターがフォト・ペインティングで作家としての評価を得た」ことは事実です。

 残念ながら知識不足のため、これ以上掘り下げることはできませんでした。「IMA LIVING WITH RHOTOGRAPHY」というサイトに「東京国立近代美術館 『ゲルハルト・リヒター展』より 写真と絵画、どちらが客観か主観か」という、東京国立近代美術館主任研究員・桝田倫広さんへのインタビュー記事(URL: https://imaonline.jp/articles/archive/20220527gerhard-richter/#page-1)が掲載されていますので、ご覧ください。

◆「ゲルハルト・リヒター展」の動画

 検索ワードを「youtube ゲルハルト・リヒター展 / Gerhard Richter – 東京国立近代美術館」と打ち込んで検索したところ、3分51秒の動画と2分12秒の動画がヒットしました。いずれも開幕早々に撮影した動画のようで、短い時間で展覧会の雰囲気をつかむことができます。

Ron.

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