展覧会見てある記 「モンドリアン展」 豊田市美術館

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

豊田市美術館で開催中の「生誕150年記念 モンドリアン展 純粋な絵画をもとめて」(以下「本展」)に行ってきました。会場は1階・展示室8。平日でしたが「入場者が多いな」と感じました。

◆ モンドリアン展 1F:展示室8

・ 印象派を思わせる風景画が並ぶ

モンドリアンといえば、中学校の美術で「風景画」から「抽象画」に画風が変化していく過程を教わった覚えがありますが、本展も「風景画」から始まります。モンドリアンの風景画は「精密描写」よりも「色面の組み合わせ」に関心があるようで、《干し物のある風景》(1897)を見ると、中央に描かれた、ロープに吊るされた白いシーツと屋根の赤、家の壁の茶色の対比が印象的です。本展には「枝を切り落とされた柳」を描いた作品が3点並んでいますが、何故かゴッホの絵を思い浮かべてしましました。

・ ルオーを思わせる肖像画2点と点描の風景画の数々

次の区画に入ると肖像画が2点。《少女の肖像》(1908)と《二人の肖像》(1908-09)ですが、ルオーのような神秘性を感じました。風景画は《ドンブルグの協会》(1909)や「砂丘」を描いた3点など、大きな斑点で描いた作品が並んでいます。ただ、《ドンブルグの協会塔》(1911)だと、背景は葉っぱを思わせる三角形や四角形の斑点で埋っていますが、ピンクの建物は点描ではなく、作風の変化を感じました。

・ キュビスム風の作品からコンポジションへ(撮影可能エリア)

細い通路を抜けると撮影可能エリアです。最初に並んでいるのはキュビスム風の《風景》(1912)と《女性の肖像》(1912)。それに続く《コンポジション 木々2》(1912-13)から数点は、画面の中に数多くの線が描かれたキュビスムの延長のような作品が並びます。次の《色面のコンポジション No.3》(1917)は色紙を切って貼り付けたような作品で、《大きな赤の色面、黄、黒、灰、青色のコンポジション》(1921)に至って「モンドリアンらしい作品」になりました。雑誌『デ・ステイル』に参加したテオ・ファン・ドゥースブルフなどの幾何学的な抽象絵画も並んでおり、展示室はとてもカラフルでした。

・ ヘリット・トーマス・リートフェルトの作品も(撮影可能エリア)

撮影可能エリアには『デ・ステイル』に参加した建築家ヘリット・トーマス・リートフェルト(以下「リートフェルト」)が設計した「シュレーダー邸」のパネルと映像資料に加え、彼が設計した椅子4脚も展示されています。椅子は全て豊田市美術館所蔵で《アームチェア》(1919年頃)と《ジグザグ・チェア》(デザイン:1932-33年、制作:1950年)は、木目を生かした透明な塗料で仕上げたものです。シュレーダー邸の映像資料は短いものですが、チラッと写った《レッドアンドブルー ラウンジチェア》(上記の《アームチェア》を、モンドリアンの《コンポジション》のように赤、黄、黒、青色で塗り分けた椅子)が印象に残ったほか、横長の窓の開閉がスイング式(窓の右寄りに支点があり、窓の左側を外に押して開く開閉方式)なので「こんなに外に飛び出して、強い風が吹いたら大丈夫か」と心配になりました。

◆ コレクション ひとつの複数の世界 2F:展示室1

モンドリアン展を後にして、2階の展示室に入ると、抽象美術の後継者たちの作品が並んでいます。岡﨑乾二郎の「おかちまち」シリーズが5点、「かたがみのかたち」が2点。色紙を切って貼り付けたように見える杉戸洋《guadⅡ》(2009)は、モンドリアン展の延長のようです。展示室の中央には巨大な「メビウスの帯」とも言うべき、徳富満《2Ⅾ or not 2Ⅾ》。寺内曜子の立体作品も3点あります。高松次郎の《板の単体(青)》《板の単体(黒)》《板の単体(赤)》(いずれも1970)の色彩もモンドリアンを想起させます。田中敦子《Work1963》は、モンドリアンとは違い、円と曲線で構成された抽象画でした。

・ 寺内曜子 パンゲア 3F:展示室2

展示室2全部を使ったインスタレーションです。真っ白に塗られた展示室2の壁には水平に赤い線が引かれ、中央に四角柱が立っています。四角柱の上には小さな白い球体。近寄って見ると、球体の表面には細かなシワがあり、赤い線もみえます。この球体、どうやら紙を丸めたもののようです。

・ コレクション ひとつの複数の世界 3F:展示室3

展示室1の続きで、床にはカラフルなプラスチック容器の破片が敷き詰められています。トニー・クラッグ《スペクトラム》(1979)でした。その向こうには白い大理石で出来た長屋2棟の周りには白米が山並みのような形に盛られています。ヴォルフガング・ライブ《ライスハウス》(1996)でした。壁面には丸山直文《breeze of river2》(2009)、村瀬恭子《White Coat》(2009)、杉戸洋《Untitled》(2016)の3点を展示しています。

アームチェア

最初の展示は、高橋節郎が課題演習で描いた図面?ですが、抽象絵画のように見えました。展示室4の見ものだと思ったのは、椅子のコレクションです。マルセル・ブロイヤー《クラブチェア B3》の別名は「ワシリーチェア」。ワシリー・カンディンスキーが高く評価して注文リストの一番目に名前を描いてくれたことによるものとか(出典「もっと知りたいバウハウス」東京美術発行)。名古屋市美術館の地下1階ロビーには量産品が「休憩用」として置いてあり、入場者は誰でも座ることができます。オットー・ワーグナー《郵便貯金局証券取引所のアームチェア》(1918)は、クリムト関連の椅子。当然のことながら、クリムト《オイゲニア・プリマフェージの肖像》も展示されていました。フランク・ロイド・ライト設計の《アーヴェリー・クーンレイ邸の椅子》(制作・設計年不詳)やチャールズ・レニー《ヴィンディヒルのホールのハイバックチェア》(1901)などのほか、ブランクーシの抽象彫刻やジャン・アルプの抽象画(レリーフ?)、エゴン・シーレのポスターやココシュカの版画もありなど、密度の高い展示です。

・ コレクション 美術とデザイン 3F:展示室4

・ コレクション モンドリアンと同時代の日本美術 2F:展示室5

「モンドリアンと同時代」という切り口ですが、さすがに抽象画はありません。入口近くに展示されているのは豊田市出身で、主にロンドンで活動した画家・牧野義雄の《サーペンタイン橋から望むハイドパーク》(制作年不詳)と《倫敦空襲の図》(1940)。展示室の奥には岸田劉生の作品が並んでいます。《自画像》(1913)《横臥裸婦》(1913)《代々木風景》(1915)の3点でした。横井礼以《新緑の道》(1927)、熊谷守一《花飾りをつけた女》(1935頃)のほか、日本画では下村観山《美人と舎利》(1909)菱田春草《鹿》速水御舟《菊に猫》(1922)などが出品されています。抽象画ばかり見て来たので、ホッとしました。

・ コレクション 小堀四郎 宮脇晴・綾子 1F:展示室6・7

モンドリアン展の会場の隣では、定番のコレクションが展示されていました。「いつもの作家の作品が、いつもの所にある」というのは、心が癒されます。

◆ 特設フォトスポット 1F:ライブラリーの隣(無料エリア)

ジグザグ・チェア

1階ライブラリーの隣には「特設フォトスポット」が開設されていました。リートフェルトがデザインしたシュレーダー邸の写真をバックに《ジグザグ・チェア》と《レッドアンドブルー ラウンジチェア》が置かれ、椅子に座った姿を写真撮影することができます。「椅子に座るだけでなく、写真撮影もできる」というのは、楽しい企画ですね。しかも、無料エリアです。

◆ 最後に

モンドリアン展では、初期の風景画からコンポジションまでの作風の変遷を眺めることができたので、楽しく鑑賞することができました。雑誌『デ・ステイル』に参加した画家だけでなく、リートフェルトのシュレーダー邸や椅子の展示も面白いですよ。コレクション展もモンドリアン展と連動しており、特設フォトスポットもあるので、長時間楽しめます。特設フォトスポットは無料で、モンドリアン展の観覧券でコレクション展も鑑賞できますから、じっくりと時間をかけて美術館全部の展示を見ないと損、だと思います。いかがですか。

特設フォトスポット

Ron.

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