展覧会見てある記 わが青春の上杜会+コレクション展 豊田市美術館

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

令和3年の展覧会巡りは、豊田市美術館(以下「豊田市美」)から始まりました。豊田市美の受付では「『わが青春の上杜会』は美術館でチケットを販売していますが、『デザインあ展』のチケットは販売していません。『デザインあ展』は、コンビニ等で日時指定チケットをお求めのうえ、お越し下さい」との案内がありました。

「デザインあ展」の日時指定チケットは持っていないため、1階インフォメーションカウンターで「わが青春の上杜会」のチケットを購入。会場入口で手指消毒を済ませ、検温を受けて会場に入りました。

◎わが青春の上杜会 昭和を生きた洋画家たち:1F展示室8

「わが青春の上杜会 昭和に生きた洋画家たち」(以下「本展」)は、東京美術学校(現:東京藝術大学)洋画科の1927(昭和2)年卒業生の作品を展示した展覧会です。「上杜会(じょうとかい)」は卒業生で結成した団体で、「上杜」は「上野の森(=杜)」に因んだ名称です。なお、豊田市美・常設展で作品を展示している洋画家・小堀四郎は上杜会の会員。この外、文化勲章を受章した三人の洋画家・牛島憲之、小磯良平、荻須高徳に加え、猪熊弦一郎、岡田謙三、中西利雄、山口長男など著名な洋画家が会員だった、とのことです。

・序章(1 結成前夜-東京美術学校と関東大震災、2 いざ、上杜会結成)

本展は「序 1922-1927」から始まり、年代順に「Ⅰ 1927-1936」「Ⅱ 1937-1945」「Ⅲ 1946-1994」と続きます。なお、1994年は上杜会展の最終回展が開催された年です。

「序-1」は教授たちの作品を展示。和田英作《カーネーション》(1939)の色彩が鮮やかでした。次の「序-2」は学生の作品を展示。第7回帝展で特選となった小磯良平《T嬢の肖像》(1926)を見て、「首席で卒業した」ということが納得できました。

・Ⅰ章(1 画家としての始まり、パリ留学、2 それぞれの選択、3 帝展騒動と「新制作派協会」結成)

「Ⅰ-1」では、小磯良平《ブルターニュ・ソーゾン港》(1928)や中西利雄《トリエール・シュル・セーヌ》(1930)、橋口康雄《シドナム・ウエスト・ヒル》(制作年不詳)など、フォービスムの影響を受けたと思われる作品が目立ちます。「Ⅰ-2」では永田一脩《『プラウダ』を持つ蔵原惟人》(1928)や山本宣二の葬儀を描いた大月源二《告別》(1929)などのプロレタリア美術の作品のほか、山口長男《池》(1936)のような抽象画もあります。「Ⅰ-3」の猪熊弦一郎《馬と裸婦》(1936)、中西利雄《人物》(1936)は、マティス風の作品でした。

・Ⅱ章(1 戦時中の制作活動、2 戦争と疎開)

「Ⅱ-1」には、小磯良平の作戦記録画《日緬(にちめん)条約調印図》(1944)など、戦争に関連した作品が何点も出品されています。外には、同じ風景を描いた岡田謙三《ラマ寺》(1941)と荻須高徳《熱河喇嘛廟(くねっからまびょう)》(1941)を並べて展示していたのが印象的です。作風の違いなどがよく分かりました。「Ⅱ-2」では、枯れた植物や鳥の巣を描いた《冬の花束》(1946)の枯れた色彩は、「序-1」に出品されていた《カーネーション》の鮮やかな色彩と頭の中で対比させながら鑑賞しました。

・Ⅲ章(1 新たな時流の中で 葛藤と開花、2 上杜会再開-年々去来の花)

「Ⅲ-1」の高野三三男《デコちゃん(高峰秀子)》(1953)は、人物は丹念に描かれているのですが背景がほぼ真っ白な作品。ソファも単純な線で描かれているだけなので、デコちゃんが宙に浮いているように見えました。牛島憲之《まるいタンク》(1957)は、ガスタンクを描いた写実画ですが、単純化した描写なので抽象画のような雰囲気があります。「Ⅲ-2」の牛島憲之《青田》(1992)は「人が空に浮かんでいる不思議な絵」だと思ったのですが、よく見ると空は描かれておらず「空だ」と思ったのは水田でした。

・感想など

協力会から郵送されたチラシだけでは本展のイメージがつかめなかったのですが、時代の移り変わりや画家の個性などを知ることができる面白い展覧会でした。小堀四郎は豊田市美術館、荻須高徳は稲沢市荻須記念美術館、小磯良平は神戸市立小磯記念美術館、猪熊弦一郎は丸亀市猪熊弦一郎現代美術館に、まとまったコレクションがあるとはいうものの、これだけの規模で上杜会会員の展覧会を開催するための準備作業は大変だったろうと思われます。来てよかったですね。2月9日からは後期の展示になるので、それも楽しみです。

なお、当日中であれば、本展チケットの提示で再入場可。また、本展チケットで常設展と「開館25周年記念コレクション展VISION」、高橋節郎記念館の観覧もできます。

◎常設展:1F展示室6、展示室7

 展示室6は「わが青春の上杜会」の関連で、小堀四郎だけでなく和田英作、藤島武二、荻須高徳の作品も展示。また、2階の展示室を「デザインあ展」に使っているので、クリムト《オイゲニア・プリマフェージの肖像》と、その習作の外、エゴン・シーレ《カール・グリュンヴァルトの肖像》の展示もありました。一方、展示室7では通常通り、宮脇晴・綾子夫妻の作品を展示しています。

◎開館25周年記念コレクション展VISION:作っているのは誰?―「一つの私」の(非)在について:1Fギャラリー

 「開館25周年記念コレクション展VISION」の3回目となる「作っているのは誰?-『一つの私』の(非)在について」は、1階のギャラリーで開催していました。コロナ禍に伴う日程調整の結果、「わが青春の上杜会」と「デザインあ展」も同時に開催されるので、これまでの2回に比べると小規模です。

会場に入ると、ムンクの版画、イケムラレイコの彫刻に並んで古池大介のヴィデオ《ディソリューション》(1998)が上映されています。キリスト像が溶解して、次々と別のイメージに変わっていくという作品でした。

外には、女性の写真家ナン・ゴールディンの作品が4点あります。キリストが磔になるまでの14の場面を描いた、村上友晴《十字架の道》(1994)は、どれも全面を黒く塗っているので同じように見えましたが、解説に書かれていたことを一口でいえば、「一つ一つに祈りを込めて描いた作品」ということのようです。イヴ・クライン《Monochrome IKB 65》(1960)は、199×152.2㎝の大画面を全て、あの独特の青色で塗った作品で、迫力がありました。

また、徳富満《My Attribute》(1966)は台形のカンヴァスに本人の名前(MITSURU TOKUTOMI)を描いた作品のほか、(MY BLACK)を始め、白、赤などの色の名前を描いた8点、計9点の作品で河原温の ”Today” シリーズを想起させるものでした。今回のコレクション展では外にも、青いボールペンで塗りこめられた11点組の、アリギエロ・ボエッティ《ONONIMO》や、黒い地に白い絵の具で数字を描き続けるローマン・オパルカの作品3点に加え、2人の作家の「河原温の ”Today” シリーズを想起させる」作品が展示されています。

◎コロナ禍でミュージアムショップは入店制限、年間パスポートも……

帰りがけにミュージアムショップの前を通ると行列が出来ていました。ショップ内の三密を避けるため、お客の人数が一定数を超えると「入店ストップ」になるのです。先客が買い物を済ませショップを出るまで、じっと我慢して行列に並ばなければなりません。

豊田市美の年間パスポートも「新型コロナウイルスの感染拡大が収束するまで、販売の予定はありません」とのこと。今はただ、ひたすら感染予防を心がけ、コロナ禍が終息する日を祈るばかりです。

Ron.