展覧会見てある記 豊田市美術館のコレクション展 第2幕

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豊田市美術館(以下「豊田市美」)開館25周年記念展の第2幕が始まったので、行ってきました。第1幕のテーマは「光について/光をともして」でしたが、今回のテーマは「DISTANCE いま見える景色」。展覧会は5展示室から第8展示室までを使った「豊田市美術館25年のあゆみ―展覧会ポスターとコレクション」と、第1展示室から第4展示室までを使った「距離のたのしみ―所蔵作品にみる遠近の感覚」の2つで構成され、2階通路でも特集展示「岡﨑乾二郎 TOPICA PICTUTUS こざかほんまち」を開催しています。

◎「豊田市美術館開館25周年のあゆみー展覧会ポスターとコレクション」

 1階の第8展示室に入ると、最初に展示されていたのはコロマン・モーザー《花入れ》(製作1904;→1724)とヨーゼフ・ホフマン《フラットウエア・サーヴィス》(製作1904:ナイフ、フォークのセット)。続いて、マルセル・ブロイヤー《ワシリーチェア》(デザイン1925;→117)、ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ《アームチェア(MR534)》(デザイン1927;→352)などの名作椅子も展示。前者はオーストリア(ウィーン工房)、後者はドイツ(バウハウス)のデザインですが、オランダのデ・スティルに参画したヘリット・トーマス・リートフェルト《ベルリン・チェア》(デザイン1923、再製作1958;→1794)の展示もありました。蛇足ですが《ワシリーチェア》は名古屋市美術館のロビーに置かれており、来館者は自由に腰掛けることができますよ。

ワシリーチェア

次に目を引いたのが、プラスチックの破片を虹のように散りばめた、トニークラッグ《スペクトラム》(1979;→1737)。2011年に開催された「Play / Pray あそぶ美術、おもう美術」に出品された作品です。森村泰昌《なにものかへのレクイエム(創造の劇場/ヨーゼフ・ボイスとしての私》(2010)は、デュッセルドルフ芸術アカデミーで講義しているボイス(?)に扮した作品。豊田市美術館では来年、「ボイス+パレルモ」の開催を予定しているので出品したのでしょうか。先日見た、ゲルハルト・リヒターをモデルにした映画『ある画家の数奇な運命』の講義シーンを思い出しました。

「1億1000万円で購入」と新聞報道のあった奈良美智の大きな(220×195cm)作品《Through the Break in the Rain》(2020)は第8展示室にあり、その左の床には同じ作者の人形《Girl on the Boat》(1994;→11267)も出品されています。第6、第7展示室は、いつもどおり小堀四郎と宮脇晴・綾子の作品を展示。

2階に移動して「距離の楽しみ――所蔵作品にみる遠近の感覚」を鑑賞した後、第5展示室で目を引いたのがフジイフランソワの作品《鶏頭蟷螂図》(2008)《コブコブラ》(2008)《桃太郎》(2007;→17675)の3点です。遠目には「明治の日本画?」と思ったのですが、展覧会ポスターには「綯交(ないまぜ)-remix- フジイフランソワ、いったいこやつのアートはいかに。2008.04.22-06.27」という文字が印刷されています。家に帰って豊田市美術館HPで「過去の展覧会」を検索すると「名古屋在住のコテコテの日本人でありながら、フランソワという男の名を語る女絵師、フジイフランソワ」という解説がありました。摩訶不思議な作品です。また、黒田辰秋《拭漆家具セット》(1964;→6986)は、とても立派なもの。岸田劉生の《自画像》(1913→4773)《麗子洋装之図(青果持テル)》(1921;→462)も出品されています。

黒田辰秋の家具

◎「距離のたのしみー所蔵作品にみる遠近の感覚」

 2階の第1展示室に入ると、アルベルト・ジャコメッティ《ディエゴの胸像》(1954;→1291)が展示され、その向こうには若林奮の作品が「これでもか」というほど並んでいます。3階の第2展示室には松江泰治の写真などが、第3展示室には中西夏之、設楽知昭の作品などが、第4展示室には河原音温の「Todayシリーズ」などが並んでいます。抽象的な作品が数多く並んでいるなかで、山本丘人の日本画《海の微風》(1936;→7658)を見つけた時は、思わずホッとしました。

◎「岡﨑乾二郎 TOPICA PICTUS こざかほんまち」

 2階の廊下には、コロナ禍のなかで岡﨑乾二郎がアトリエに籠って集中的に描いた150点を越える絵画シリーズ「TOPICA PICTUS」の中から10点が展示されています。作品リストはありませんが、作品ごとにリーフレットが印刷されケースに入っているので、自由に持ち帰ることができます。

◎最後に

 年間パスポートを購入しようとしたのですが「現在は販売していない」との回答なので、観覧券を購入して展覧会を鑑賞しました。豊田市美術館の全館と高橋節郎館を見て300円ですから「とてもお値打ち」ですよ。

 家に帰ってから作品リストを読み返し、作品リストのコレクション・オーディオガイド番号(上記「;→」の後に記載)を豊田市美術館HPで入力して音声ガイドが聞けることを知りました。「利用の際は当館Free Wi-Fi(Museum_Toyota_Free_Wi-Fi)をご活用ください」とのこと。音声ガイドを聞くときはイヤホンをお忘れなく。

Ron.

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