“「エール」のまち!豊橋。”の美術博物館

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愛知県の緊急事態宣言が解除され、外出も「都道府県をまたぐ移動でなければO.K.」となったので、連続テレビ小説「エール」の舞台のひとつ、豊橋に行ってまいりました。

目的地は豊橋市美術博物館(以下「美術館」)。道すがら目立つのは“連続テレビ小説「エール」のまち!豊橋。”というポスター。美術館に近づくと「明治35年(1902年)豊橋町立高等女学校発祥の地 平成14年(2002年)愛知県立豊橋東高等学校100周年記念」という石碑。二階堂ふみさん演じる関内音(せきうち・おと)のモデル・内山金子(うちやま・きんこ)の母校ですね。美術博物館のある豊橋公園は「エール」のロケ地でした。

◎2階・常設展示室では中村正義《男と女》(1963)がお出迎え

 開催予定の企画展「芳年 激動の時代を生きた鬼才浮世絵師」は中止。見ることが出来たのは2階・常設展示室の「コレクション展」のみ、でした。企画展は有料ですが、2階のコレクション展は無料。受付カウンターにはアクリル板。係員さんはマスク着用。さすがにフェイスシールドまでは着けていません。私もマスクを着用して1階ロビーに置いてあるアルコール消毒液で手指を洗浄。

階段を上っていくと、中村正義《男と女》(162.0×226.5)が目に飛び込んできます。2011年に名古屋市美術館で開催された「中村正義展」で見た作品です。「昭和57年度 中村あや氏寄贈」と書いてありました。この作品だったかどうか定かではありませんが「中村正義は合成接着剤に蛍光塗料を混ぜて絵を描いた」と、2011年の展覧会・ギャラリートークの際に、当時、学芸係長だった山田さんから聞いた覚えがあります。右隣も中村正義の作品《妓女》(1962)。227.0×162.0の大作。しばらくの間、二つの作品を眺めていました。

◎第2展示室=歴史・芳年と、同時代の浮世絵師たち

 常設展示は「考古・考古資料から探るトヨハシの歴史」「歴史・芳年と、同時代の浮世絵師たち」「美術・木版画 北川民次・棟方志功」「美術・浮世を描く絵師たち~中村正義を中心に」「民俗・キル・ケズル」の5分野。このうち、2番目の「歴史・芳年と、同時代の浮世絵師たち」は文久3年(1863年)、14代将軍徳川家茂が上洛した時の行列を題材にした「東海道名所風景」の100枚続きから、表紙、口上、目録はじめ32点を展示しています。歌川広重と国芳は他界していたので、歌川国貞始め16人の絵師が描いています。

展示作品は月岡芳年のものが一番多くて8枚、次が河鍋暁斎の3枚です。なかでも当時25歳と、16人の中では2番目に若い絵師だった芳年の作品はクローズ・アップと遠景を組み合わせた《由比ヶ浜》《舞阪》、真ん中に煙(《石部》)や柱(《大津三井寺》を入れて画面を左右に分割するなど、工夫を凝らした構図のものが目立ちます。

◎第4展示室=美術・浮世を描く絵師たち~中村正義を中心に

 第4展示室の展示作品中、中村正義の作品は舞妓シリーズ始め6点。初期のデッサン《舞妓》(1958)は写実的な普通のデッサンですが、完成作としてパネル写真で紹介の《舞妓》(別名:白い舞妓 1958)、《舞子》(別名:黒い舞妓 1959)は大胆な表現です。2011年の中村正義展の時は、《女》(別名:赤い舞妓 1957)も一緒に展示。山田さんがギャラリートークで熱く語っていた姿が目に浮かんできました。

 2018年の「ザ・ベスト・セレクション」に出品されていた、緑色に塗られた裸の男女が登場する《終電車》(1967)を描いた大島哲以の作品、《屠殺の部屋》(1966)《優婆羅の街》(1968=羽黒洞木村東介寄贈)もありました。木村東介といえば、長谷川利行の作品をごっそり買い込んだ画商では……

◎疫病 退散 アマビエ 創業江戸 若松園

 帰り道、井上靖の自伝的長編小説「しろばんば」に出てくる老舗「若松園」の前を通ると、店先に「疫病 退散 アマビエ」という貼紙と新聞の切り抜き。「練り切り」の和菓子です。3か月半ぶりに展覧会に出かけてきたので「何かあってはいけない」と思い、二個(税込み584円)買い求めました。家に帰り、仏壇にお供えして食べましたが、おいしかったですよ。

◎最後に

 豊橋市美術博物館の次回展覧会は美術コレクション展「ゆったり、美術館散歩」会期=6月2日(火)~7月12日(日)です。観覧料は大人・大学生400円。豊田市美術館「久門剛士展」は再開ずみ、おかざき世界子ども美術博物館「これって絵画なの?超リアルと面白かたち展」も5月26日(火)~7月12日(日)の会期で再開とのこと。長い巣ごもりでしたが、ようやく外出できるようになりました。

Ron.

巣ごもり読書とネット検索の日々

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◎「当たり前」再考→「非日常」が当たり前に?

愛知県は政府の緊急事態宣言の対象から外れましたが、名古屋市美術館の「ミュシャ展」は「中止」になってしまいました。協力会の会員から読むことを勧められた5月19日付朝日新聞文化・文芸欄の[美術館の「当り前」再考]によると、各地で展覧会の中止が相次いでいるとのことです。「ミュシャ展」だけではなかったのですね。

記事は、京都市京セラ美術館が「一つの展覧会では30分で50人までの入場」とする事前予約制を始める、とも書いています。「人気展は密集する」のが「当たり前」では無くなり「30分で50人が入場」という「非日常」が当たり前になるのでしょうか。

◎名画はインターネットで見る時代?

 上記の記事は「名品の画像を70億画素で見せるグーグルのサービスには、2012年からの東京国立博物館などをはじめ、すでに国内の多数の美術館が参加」とも書いています。

「名古屋市美術館はどうなっているの?」と思い美術館のホームページを見ると、トップページの「トピック」4月16日に「インターネットで楽しむ名古屋市美術館」という項目があります。クリックするとGoogle & Culture(外部リンク)に移動。スマホのGoogleアカウントとパスワードでログインできました。名古屋市美術館の休館が続く間は「オンライン鑑賞」で我慢することにしましょう。

◎厄災退散を願う絵をインターネットでGET

 5月11日付中日新聞・20面の「厄災退散願う絵 西尾の岩瀬文庫 HPで公開」という記事によれば、九州の浜に出現して江戸時代に「コロリ」と呼ばれたコレラの流行を予言し「私の絵姿を家に貼ればコロリにかからない」と告げて海に消えたという「姫魚(ひめうお)」をHP(htttps://iwasebunko.jp/)で公開しているそうです。早速、画像をGET。全国的に話題になっているのは「アマビエ」ですが、このような画像を見ていると巣ごもりの息苦しさが和らいできます。

◎パンデミックを描いた美術

 5月4日付日本経済新聞・文化面「疾病の文化論 ①描かれた恐怖=中野京子」は、19世紀フランスの歴史画家ドローネが描いた衝撃的な「ローマのペスト」について「この時代にはもうペストの大規模な流行は収まっていた。だが当時はそれに代わってコレラが蔓延し、フランスでは首相ペリエ、ドイツでは哲学者ヘーゲルが命を落としており、人々はこの疫病がペスト化するのではないかと心底恐れているのだった。つまり「ローマのペスト」は、遠い過去の疫病と眼前の疫病の恐怖を重ね合わせた作品なのだ」と、解説しています。江戸時代の日本だけでなく、19世紀ヨーロッパでもコレラが蔓延していたのですね。

◎21世紀でもベストセラー=巣ごもり読書にお勧め

 5月9日付日本経済新聞「活字の海で」は「フランスの作家カミュが疫病の恐ろしさと不条理を描いた小説『ペスト』(新潮文庫)が話題を呼ぶのも「こんな時」だからだろう。今年2月以降、増刷を繰り返し4月末で累計は121万部に上る。電子書籍の販売も好調だ。電子書籍化された2017年3月から19年12月の累計ダウンロード数と比べ、今年1~4月の累計は約13倍と急増した」と書いています。
私は4月11日(土)にNHK・Eテレが4回分を一挙に再放送した「100分de名著」を視聴して、買うことにしました。どの書評も文庫版245ページ「ペストと戦う唯一の方法は、誠実さということです(略)僕の場合には、つまり自分の職務を果たすことだと心得ています」を引用していますが、ラストの「市中から立ち上がる喜悦の叫びに耳を傾けながら、リウーはこの喜悦が常に脅かされていることを思い出していた。(略)ペスト菌は決して死ぬことも消滅することもないものであり(略)いつか、人間に不幸と教訓をもたらすために、ペストが再びその鼠どもを呼びさまし、どこかの幸福な都市に彼らを死なせに差し向ける日が来るであろうということを。」も印象的でした。

◎最後に

 現在、新型コロナウイルスの新規感染者数は減っており学校の再開も間近ですが、第2波、第3波への警戒を怠ることなく「自分の職務を果たすこと」を心がけたいと思います。

Ron.