展覧会見てある記 「ストラスブール美術館展」

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

今回の展覧会の名前は「豊橋市美術博物館開館40周年記念 ストラスブール美術館展 印象派からモダンアートへの眺望」(以下「本展」)という長いものです。フランス語表記 の展覧会名 “De I’impressionnisme à l’art moderne dans les collections des musées de Strasbourg” のとおり、本展には印象派からモダンアートまで、ストラスブール美術館の収蔵品から92点が出品されています。

◆第1室(第一企画展示室)

本展は四つの展示室に分かれており、観覧券売り場に一番近いのが第1室(第一企画展示室)で「1章 印象派とポスト印象派」のうち「印象派以前の風景画」「印象派の風景画」の作品を展示しています。なかでも重要な作品は台座付きで展示。この部屋ではカミーユ・ピサロ《小さな工場》、アルフレッド・シスレー《家のある風景》、クロード・モネ《ひなげしの咲く麦畑》の3点が「台座付き」でした。ただ、中日新聞・地方版の「ミュージアムだより」で学芸員が紹介していたのはカミーユ・コロー《オルレアン、窓から眺めたサント=パテルヌの鐘楼》です。レンガの茶色を基調にした風景画で、右下に猫がいました。この外、シャルル=フランソワ・ドービニー《風景》も良いと思いましたが、「ストラスブール美術館展」ですからストラスブールの画家を外してはいけませんね。馴染みのない画家でしたが、ロタール・フォン・ゼーバッハ《ラ・ドゥアンヌからストラスブールへの道、雨の効果》には、題名の通り雨の感じがよく出ていました。同じ画家の《冬の森》は枯葉の赤と白い空の対比が美しく、垂直の木々がアクセントになっています。説明板には「アルザスの印象派」と書いてありました。また、浮世絵を思わせる作品もあります。アンリ・リヴィエールのリトグラフで、《夜の海(「自然の諸相」連作より》、《オーステルリッツ河岸「パリ風景」連作より》の2点です。説明板には「浮世絵のコレクターでもあり『エッフェル塔三十六景』の連作を制作」と書いてありました。

◆第2室(第二企画展示室)

第2室(第二企画展示室)には「1章」のうち「筆触(タッチ)」の作品と「2章 近代絵画におけるモデルのかかわり」の一部を展示しています。台座付きの作品は、ポール・ゴーギャン《ドラクロワのエスキースのある静物》、ポール・シニャック《アンティーヴ、夕暮れ》、ピエール・ボナール《テーブルの上の果物》、ラウル・デュフィ《3つの積み藁のある風景》の4点でした。ウジェーヌ・カリエールの作品が4点も展示されているほか、モーリス・ドニ《内なる光》とシャルル・カモワン《タピスリー刺繍を制作するマティス夫人》にも目が止まりました。カリエールについては説明板に「幼少期をストラスブールで過ごした」と書いてあります。

◆第3室(特別展示室)

第3室(特別展示室)は第2室の、通路を挟んだ反対側にあります。入口でロートレック《ディヴァン・ジャポネのポスター》がお出迎え。マリー・ローランサン《マリー・ドルモアの肖像》も入口近くに展示されていました。この部屋では「2章」の続きと「3章 アヴァン=ギャルド」のうち「キュビスム」の3点を展示しています。台座付きの作品ありません。その理由は「ガラスケース内に展示されている作品が多い」ためでしょうか。ストラスブールの画家を探したところ、リュック・ヒューベリック《後ろを向いてたたずむ女性、開いた窓の前》、ポール・ウェルシュ《赤いベストの女性》、ロベール・エイツ《自画像》がありました。

◆第4室(第三企画展示室)

最後の第4室(第三企画展示室)には「3章 アヴァン=ギャルド」のうち「キュビスム」の残りと「抽象絵画」「シュルレアリスム」の作品を展示しています。台座付きの作品は、モーリス・ド・ヴラマンク《都市の風景》、ヴァシリー・カンディンスキー《冷たい隔たり》、ヴィクトール・ブラウナー《求婚者》の3点です。ヴィクトール・ブラウナーの作品は、他にも6点出品されています。説明板には「ストラスブール美術館では35点以上の作品を所蔵している」と書いてありました。ストラスブールの画家といえばジャン・アルプ。本展の出品は《オーベットのフレスコ画に基づくシルクスクリーン》の1点のみですが説明板には「ドイツ人の父とアルザス人の母(略)ストラスブール美術館には約60点の作品が所蔵されている」と書いてありました。

◆最後に

調べてみると、ストラスブールはフランス北東部アルザス地方の中心都市で、欧州議会の本部が置かれています。アルザス地方は昔からドイツとフランスが争奪戦を繰り広げた地域であり、17世紀にフランス王国の支配下になったものの1871年の普仏戦争後にプロイセンの一部となり第一次大戦後の1919年にフランスが奪還しています。公用語はフランス語ですがアルザス語(ドイツ語の方言)も使われるバイリンガルの地域です。

本展の会期は3月29日(日)まで。開館時間は午前9時~午後5時(入場は午後4時30分まで)です。

Ron.

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