展覧会見てある記 「印象派からその先へ」

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

名古屋市美術館(以下「市美」)で「印象派からその先へ ― 世界に誇る吉野石膏コレクション」(以下「本展」)が開幕しました。展覧会のチラシには、こんなことが書いてあります。

(略)石膏建材メーカーとして知られる吉野石膏株式会社は、1970年代から本格的に絵画の収集を開始し、2008年には吉野石膏美術振興財団を設立。(略)そうして形成された西洋近代美術のコレクションは、質量ともに日本における歴代のコレクションに勝るとも劣らぬ内容を誇っています。現在、その多くは創業の地、山形県の山形美術館に寄託され、市民に親しまれています。本展ではバルビゾン派から印象派を経て、その先のフォーヴィスムやキュビズム、さらにエコール・ド・パリまで、大きく揺れ動く近代美術の歴史を72点の作品によってご紹介します。とりわけピサロ、モネ、シャガールの三人は、各作家の様式の変遷を把握できるほどに充実しており、見応え十分です。(略)中部地方では初めて。知られざる珠玉の名品を、どうぞこの機会にご堪能ください。

 「でも、大したことないんじゃないの」と、少し馬鹿にして市美に出かけたのですが、結果は良い方に大ハズレ。「へへー、おみそれいたしました」と、なりました。本展を舐めていたことを大いに反省しています。「見応え十分」というだけでなく、コレクターの感性によるのでしょうか、「見ていて気持ちが良い」のです。 「印象派」だけでなく、「その先」の展示も充実しています。また、わかりやすくて簡潔な「子供向け解説」は大人でも十分、読み応えがあります。本展は、見逃せません。

◆1章:印象派、誕生 ~革新へと向かう絵画~ ◎エントランスホールでモネ《睡蓮》と《サン=ジェルマンの森の中で》が出迎え  市美1階の橋を渡って企画展示室のエントランスホールに入ると、正面の壁に拡大されたモネ《睡蓮》と《サン=ジェルマンの森の中で》が並んでいます。「ピサロ、モネ、シャガールの三人」のうち、先ず、モネが出迎えてくれました。展示は、バルビゾン派からクールベ、マネ、ブーダンと続き、印象派はシスレーから始まります。作品は年代順に並んでいますが、《モレのポプラ並木》の前で思わず足が止まってしまいました。  続くのはモネ。なかでも《サン=ジェルマンの森の中で》は不思議な作品です。見ていると、絵の中に引き込まれそうになります。映画「となりのトトロ」に出てきた“秘密の抜け穴”を思い出しました。《睡蓮》と《テムズ河のチャリング・クロス橋》は、「モネ それからの100年」以来1年ぶりの再会。去年の展覧会を思い出します。

◎特等席はルノワール、ドガ、ゴッホ  1章では、ルノワール《シュザンヌ・アダン嬢の肖像》とドガ《踊り子たち(ピンクと緑)》が水色の壁、ゴッホ《静物、白い花瓶のバラ》が茶色の板の特等席に展示されていました。ルノワールとドガが特等席なのは納得できますが、ゴッホの静物画が特等席なのは何故でしょうか?重要な作品だとは思うのですが……。

◎パステル画を堪能 コレクターの好みなのか、本展ではパステル画が目立ちました。水色の特等席の2作品だけでなく、メアリー・カサット《マリー=ルイーズ・デュラン=リュエルの肖像》、ピカソ《フォンテーヌブローの風景》がパステル画です。鮮やかな中間色のふわっとした感じがいいですね。癒されます。

◆2章:フォーブから抽象へ ~モダン・アートの諸相~  2章で強烈な印象を受けたのはヴラマンク。《セーヌ河の岸辺》は「どこがセーヌ河?」という感じの赤と緑のコントラストが目に飛び込んでくる作品。しばらく眺めていて「左上の白っぽいところがセーヌ河?」とわかりました。でも、このめちゃくちゃな色使いは癖になりますね。静物画が2点並んで、最後の《村はずれの橋》は正に「万緑叢中紅一点」。ワンポイントの赤が効いています。 マティス《緑と白のストライプのブラウスを着た読書する若い女》はストライプが印象的な作品。「子ども向け解説」を読みながら鑑賞することをお勧めします。

◎2章は、アンリ・ルソーから2階に展示 2階は抽象画が中心。カンディンスキーの作品は「音楽」を感じさせます。また、ルソー《工場のある風景》も、ここで見ると抽象画のような感じがします。

◆3章:エコール・ド・パリ ~前衛と伝統のはざまで~ ◎ユトリロとマリー・ローランサン 3章はユトリロとローランサンから始まります。ヴラマンクと違って、ドキドキせず、安心してみることのできる作品が並びます。この中では、群像を描いたローランサン《五人の奏者》がいいですね。

◎これは「小さなシャガール展」です  本展の最後を飾るのは、吹き抜けの上の広い空間に展示されたシャガールの作品です。数えると、シャガールだけで10点。そのうち3点に「子ども向け解説」が付いていました。シャガールは学芸員さんの「お気に入りの作家」なのでしょうか?それとも、「子どもを引き付ける作家」なのでしょうか?いずれにせよ、吹き抜けの手すり近くから、L字型の壁に並ぶシャガールを眺めるのは壮観です。

◆最後に  名古屋市美術館協力会では4月14日(日)午後5時から、会員向けに「印象派からその先へ ― 世界に誇る吉野石膏コレクション」のギャラリートークを開催します。詳しくは、名古屋市美術館協力会のホームページをご覧くださいね。                             Ron.

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