展覧会見てある記 「アイチアートクロニクル1919-2019展」

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

愛知県美術館リニューアル・オープン記念の全館コレクション企画「アイチアートクロニクル1919-2019展」(以下「本展」)を見てきました。通常の企画展と違って、コレクション展(いわゆる常設展)の一部として開催されているため観覧料は一般一人500円(20人以上の団体は一人400円)と割安です。
「コレクション展」とはいうものの、愛知県美術館(以下「県美」)のコレクションだけでなく名古屋市美術館(以下「市美」)や豊田市美術館(以下「豊田市美」)、作家蔵の作品も出品されているので企画展並みの見応えがありますよ。
また、本展(展示室8は本展「9章」の続き)の他、展示室6には「愛知県美術館の名品」というタイトルで、クリムト《人生は戦いなり(黄金の騎士)》などが並び、展示室7には「愛知のやきもの」というタイトルで木村定三コレクションの中から江戸時代の祥瑞(しょんずい)写皿や織部焼、志野焼、黄瀬戸などが、藤井達吉コレクションの中から藤井達吉・加藤藤九郎《草花文花入》などが並んでいます。
つまり、「観覧料が割安」ということ以外は、通常の企画展と同様の規模の展覧会でした。以下、感想などを書かせていただきます。なお、作品名の後の(  )内の数字は作品番号です。

◆1章 愛知洋画のはじまり 1871~
珍品だと思ったのは河野次郎による題不詳の下絵(1-1)と本画(1-2)です。解説によると西洋画の写しのようですが、名古屋市博物館で開催中(4/7まで)に出品されている「西洋画を模した浮世絵」に通じるものを感じました。この作品、所蔵先に「名古屋市美術館」と表示されていましたが、初めて見る作品です。
島田卓二《湯谷渓谷「淵」》(1-9)を見て、中学生の時に湯谷渓谷で見た水の青さを思い出しました。また、加藤静児《渚》(1-12)はどこの風景を描いたものか分かりませんが、何故か懐かしさを感じました。この絵は、愛知県の風景を描いたのでしょうか。

◆2章 愛美社とサンサシオン
愛美社やサンサシオンは、市美の常設展でもおなじみのものです。見ると市美のコレクションから、鬼頭鍋三郎《手をかざす女》(2-22)始め4点の作品と資料数点の出品があります。県美のコレクションだけでなく市美のコレクションも併せて出品しているので、幅広い内容の展示になっていると感じました。
また、岸田劉生の作品が2点出品されていました。そういえば、令和2年(2020)1月8日(水)から3月1日(日)まで市美で「没後90年記念 岸田劉生展」が開催されますね。

◆3章 シュルレアリスムの名古屋
愛美社やサンサシオンと同様に、シュルレアリスムも市美の常設展でもおなじみのものですが、本展では県美コレクションの尾沢辰夫《鴨》(3-2)が目を引きました。チラシに《鴨》の画像が使われているように、何故か目が離せない作品です。なお、3章は全出品作23点中、18点が市美のコレクションです。市美でもなかなか見ることのできない規模の、郷土ゆかりの作家による「シュルレアリスム展」といえます。市美のファンとしては見逃せない展覧会ですね。

◆4章 非常時・名古屋
鬼頭鍋三郎の作戦記録画(いわゆる戦争画)が多数出品されています。ほかには、メキシコ・ルネサンスに連なる北川民次《砂の工場》(4-8)、安藤幹衛《逃走》(4-9)、伊藤高義《粘土採掘場》(4-10)(いずれも県美コレクション)が印象に残りました。

◆5章 日本画と前衛
東松照明の写真が多数展示されており、平成23年に市美で開催された「東松照明展」で見た作品もありました。臼井薫の写真4点の外3点が市美のコレクションですが、杉本健吉《名古屋城再建基金ポスター原画》(5-13)は初めて見ました。

◆6章 桜画廊とその周辺
久野真、浅野弥衛、野水信などの作品が展示されています。市美の常設展でもおなじみの作家なので、懐かしさを感じますね。

◆7章 美術館たちの集団行動
1960年代以降、栄中心にハプニングを起こした「ゼロ次元」「あさいまつおとその仲間」「ぷろだくしょん我S(がず)」などの作品・記録を展示しています。県美コレクションの岸本清子《《ナルシスの墓標》のためのドローイング》(7-4)は、インパクトがありました。なお、ぷろだくしょん我S《人形参議院選》(7-9)と写真(7-7)、資料(7-10)は市美のコレクションです。

◆8章 現代美術の名古屋
協力会のカレンダーに作品を提供していただいた久野利博の写真も出品されています。久野利博の写真は、いずれも市美のコレクションでした。また、辰野登恵子の油彩《Untitled 95-1》(8-12)には迫力がありましたね。

◆9章 現代美術の名古屋
出品リストによれば60点もの作品が出品されており、その一部は展示室8に展示されています。作家蔵の作品や豊田市美のコレクションもありました。なかでも、山田純嗣、大崎のぶゆき、田島秀彦、坂本夏子は平成24年に市美で開催された「ポジション2012」の出品作家だったので、懐かしさを感じます。
◎9章のうち展示室8の作品
展示室8には、協力会のカレンダーに作品を提供していただいた渡辺英司の作品《蝶瞰図》(9-51)を始めとする作品が展示されています。そのうち、木村充伯の彫刻《あ、犬がいる!》(9-56)は展示室の壁上方に張り付いており、同じく《祖先は眠る(2匹の猿)》(9-57)は床に転がっていました。ちょっと変わった展示方法なので、印象に残りました。

◆愛知県美術館の名品
本展は「郷土ゆかりの作家の展覧会」ですが、常設展でおなじみのゴーギャン、レジェ、ムンク、マティス、ピカソ、藤田嗣治などの作品は、ちゃんと展示室6にあるのでご安心を。

◆愛知のやきもの
木村定三コレクションは、祥瑞写皿など白地に鮮やかな青藍色の模様を施した江戸時代のやきものが綺麗です。木村定三が数多くの祥瑞写を収集した理由がよくわかりました。

◆最後に
本展は「県美のコレクション展」ですが、市美や豊田市美の作品も出品されているので「市美や豊田市美のコレクション展」としても楽しむことができます。本展の会期は6月23日(日)までと長いので、期間中、何度も来館できますよ。
県美の出口に「大浮世絵展」(歌麿、写楽、北斎、広重、国芳 夢の競演)のチラシが置いてありました。五人の中に「国芳」が入っているのが、今風です。県美の会期は、令和2年(2020)4月3日(金)~5月31日(日)。主催に「国際浮世絵学会」も入っているので、期待できそうですね。
Ron.

コメントはまだありません

No comments yet.

RSS feed for comments on this post.

Sorry, the comment form is closed at this time.

会場にて「inferno」 解説してくださった特別主任学芸員の北川智昭さん、ありがとうございます 2018ArtLabTokyoここにもアートラボ 石切り場 前室にて 音のアーキテクチャ トンネルでピクニック 佐川美術館 ギャラリートークの様子 展示会場で話をきく会員たち 泉屋博古館にて まずは講堂でレクチャを聴く会員たち 会長の乾杯の音頭に合わせて、いただきます! 「回生の苗床」 光内惟奈 燃やせないもの