碧南市藤井達吉現代美術館「生誕130年 佐藤玄々(朝山)展」

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

碧南市藤井達吉現代美術館(以下「美術館」)では「生誕130年 佐藤玄々(朝山)展」(以下「本展」)を2月24日(日)まで開催しています。「天才と呼ばれた稀代の彫刻家」という副題に誘われ、碧南まで足を伸ばしました。以下は、作品を見た感想です。
◆展示の構成
本展の入り口は2階。「碧南市制70周年記念事業」かつ「開館10周年記念」という位置づけで、1階と2階にある4つの部屋すべてを使った大掛かりな展示でした。2階は概ね時代順の展示、1階は東京・日本橋三越本店の《天女(まごころ)像》関連の展示です。
佐藤玄々の本名は清蔵、旧号は朝山。作品の制作時期ごとに使っていた名前が違うため、本展の名称が「佐藤玄々(朝山)」となっているようです。出品リストも時代区分ごとに(清蔵)(朝山)(玄々)と、その時期に使っていた名前を添えていました。
◆Ⅰ.修業時代(清蔵)
 本展のキーワードは「天才」。10代で制作した木彫からも「天才」ぶりを感じました。墨絵の展示もありました。木彫だけでなく、墨絵も上手いですね。
◆Ⅱ.大正期 留学まで(朝山)
 デビュー作の《永遠の道(問答)》でびっくりしたのは、向かい合っている師(婆羅門)弟子(釈迦)が異常に接近していることです。黒澤明監督の映画「椿三十郎」ラストの「椿三十郎」を名乗る素浪人(三船敏郎)と室戸半兵衛(仲代達也)の決闘シーンのような緊迫感がありました。《沙倶牟多羅姫と陀遮迦陀王》は台座にも彫刻をしている大作です。
《花林》は、何故か前のめりになった女性像。「芸術新潮」2018年11月号特別企画の対談では、増淵鏡子・福島県立美術館学芸員が「おそらく、木の流れをそのままに彫っているのではないかと思います。(略)木への信仰心のようなものでしょうか」と話していました。
《上宮太子(聖徳太子像)》はシンプルなフォルムで、愛知県三河地方各地に伝わる素朴な土人形を連想し、《鹿》からは新年に熱田神宮で買った一刀彫の「えと守」を連想しました。
大正期に佐藤玄々が渡仏してブールデルに弟子入りして制作した、ブロンズ像の《女性像》《達磨》も展示されています。
◆Ⅲ.昭和初期(朝山)
昭和初期の展示は、二つの部屋に分かれています。二つの部屋の境に展示されているのが《白菜》と《筍》。どちらも「食べ物」ということで、美術館のカフェではこの《白菜》《筍》をイメージした和菓子セットを期間限定メニューとしています。
最初入った部屋最後の展示《白菜》はリアルに彩色された作品ですが、敢えて鑿跡を残し「私は木彫ですよ」と主張している作品でもあります。見飽きません。
次の部屋最初の展示《筍》は本展チラシの表面に使われている作品です。「当然のことだけど、実物は2次元のチラシ画像より遥かに迫力があるな」と思ったら、同じ題材の作品が二つ展示されているではありませんか。二つの作品は「まったく同じ」ではなく、微妙に違っています。何度も見比べ「部屋の入り口ではなく、その奥に展示されている作品をチラシに使ったのでは」と最終的に判断しましたが、果たして正解だったでしょうか。佐藤玄々は《筍》の他にも、「鼠」「鷹」「銀鳩」など同じ題材で、少しずつ異なる複数の木彫を制作しています。
小品ですが、「これは凄い!」と思ったのが《蜥蜴》です。トカゲが枯れた竹にまたがっているという作品ですが、トカゲも竹も同じ木を彫ったのだとは信じられないほどリアルです。《冬眠》は一見大きな土の塊。説明を読んでようやく、ヒキガエルだとはわかりました。「リアルだが抽象彫刻のようにも見える」という趣旨の説明もあり、その通りだと思いました。
◆Ⅳ.昭和戦中戦後(清蔵)
 戦中戦後の作品で一番目を引くのは《神狗》。オオカミのような極彩色の狛犬で、迫力があります。大小2点の作品が展示されており、小さな作品は熱田神宮所蔵、大きな作品は妙心寺大心院所蔵。小さな作品は習作で大きな作品が最終作品だと思いましたが、よく見ると大きな作品の頭部には切り込みがあります。どちらも習作で「完成品は熱田神宮に鎮座している」ということなのでしょうか。
ツギハギの《和気清麻呂(習作)》も見ものです。展示室にあるパネルの解説を読むと、佐藤玄々はブロンズ像の試作を木彫で作ったので「木材をツギハギして作品のボリュームを変更した」というのです。完成したブロンズ像がどこにあるのかと探したら、2階の本展入り口を入ったところに皇居大手濠に設置されている和気清麻呂像(1940)の写真パネルがありました。
◆Ⅴ.《天女(まごころ)像》(玄々)
 1階に降り向かって左側の部屋に入ると、東京・日本橋三越本館の《天女(まごころ)像》(以下《天女像》)関連の展示があります。入口の脇に展示されているのはド派手な《麝香猫》。《天女像》との関連はわかりませんが、「極彩色の木彫」という点では同じですね。
佐藤玄々のアトリエがあった妙心寺大心院が所蔵している《天女(まごころ)像(習作)》は真っ黒で、シルエットのような木彫。これが《天女像》の原点なのでしょう。この部屋に展示されている手、腕、花弁、雲など様々な《天女像》関連の試作を見て、「佐藤玄々は膨大な人手と時間とお金をかけて《天女像》を制作したのだ」ということがわかりました。
◆《天女(まごころ)像》の3D映像
 本物の《天女像》は高さ11メートル総重量6,750トンで、日本橋三越本店から美術館まで運んで展示することは不可能。本展では最後の部屋で《天女像》の3D映像を上映していました。3D映像を見ると、「天女」よりも光背のほうが遥かに大きいのです。また、背面には飛んでいる鳥の彫刻が数多く配置され、「背面のほうが豪華なのでは」と思うくらいでした。
最初は「天女の表情がどぎつすぎる」と感じたのですが、「日本橋三越本店の《天女像》は間近ではなく遠くから眺めるものなので、これくらいどぎつくて丁度いいのかもしれない」と思うようになりました。舞台俳優の化粧がどぎついのと同じです。
◆1階ロビーでは《天女(まごころ)像》除幕式の記録を上映
1階ロビーではTV受像機で昭和35年(1960)4月19日に開催された《天女像》除幕式の記録映画を上映していました。上映時間は17分。映画のラスト近くで「《天女像》には化学的に合成した岩絵の具を使用。一部には木彫原型を使用した金属や化学合成素材も使われている」という説明がありました。
◆最後に
 「天才と呼ばれた稀代の彫刻家」という本展の副題は間違っていませんでした。おすすめです。見逃せませんよ。
なお、名古屋市美術館協力会では2019年2月17日(日)午後2時から「生誕130年 佐藤玄々(朝山)展」鑑賞ミニツアーを開催します。詳しくは、協力会のホームページをご覧ください。
                            Ron.

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