「至上の印象派」ギャラリートーク(後編)

カテゴリ:協力会ギャラリートーク 投稿者:editor

ギャラリートークの様子

ギャラリートークの様子


◆2階展示室における深谷副館長の解説
◎第1章 肖像画
本展の壁の色、章立てはビュールレ財団からの指示に従っています。2021年に公開予定のビュールレ・コレクションも本展の章立てをなぞるようです。第1章の壁の色は赤で、最初の作品はアンリ・フォンタン=ラトゥール《パレットを持つ自画像》。年代順に並べるなら、ハルス《男の肖像》が最初の作品になるはずなのですが、そうではありません。なぜか、それはビュールレ財団からの指示に従ったからです。指示は「左右対称が重要。年代順にはこだわらない」というものでした。
アングルの作品が並んでいます。《イポリット=フランソワ・ドゥヴィレの肖像》は細部まで克明に描かれていますが隣の《アングル夫人の肖像》は質感表現が十分ではありません。未完成のような絵ですが、それが、むしろ《アングル夫人の肖像》を生き生きとした作品にしています。

◎第2章 ヨーロッパの都市
第2章と第3章の壁の色は濃い緑色。ヨーロッパの都市、ヴェニス、ロンドンとパリの風景を描いた作品です。室内の真ん中の2点、カナレット《カナル・グランデ、ヴェネツィア》と《サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂、ヴェネツィア》はビュールレ美術館の写真と同じように並んでいます。
グランドツアーは貴族の子弟が行った、長期間をかけてヨーロッパの名所旧跡を回り見分を広めた大旅行で、その記念品・お土産として克明かつ緻密に描かれた風景画が描かれました。

◎第3章 19世紀のフランス絵画
第3章には1870年代のマネの作品が3点並んでいます。マネは印象派展には参加しませんでしたが、印象画風のテーマ・タッチに変わっていくのが分かります。

◎自由観覧 18:10頃~30
第4章の壁の色は薄い緑色。
縦長のマネ《ベルヴュの庭の隅》と横長のモネ《ヴェトゥイユ近郊のヒナゲシ畑》《ジヴェルニーのモネの庭》の3作が並んでいるのを見ると、一瞬、「同じ作者の作品か」と感じました。よく見ると、何か違っています。しかし、違いをうまく指摘するのは難しい。……

◆1階展示室における深谷副館長の解説
◎第5章 印象派の人物-ドガとルノワール
 第5章も壁の色は薄い緑色。
ルノワール《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢》を見てください。顔は滑らかで筆跡がありません。一方、衣装には筆跡が残っています。
この絵はダンヴェール家の庭=屋外で描いたにしては光が均一に回っています。この絵では、ルノワールの作品によくある「木洩れ日表現」はしていません。光が良く回っており、古典的な表現がされています。

◎ドガ《14歳の小さな踊り子》
この彫刻、オリジナルはワックス=蝋。ワシントン・ナショナルギャラリーが所蔵しています。展示しているのはブロンズ像で、10点ほど制作されたうちの1点です。
オリジナルの彫刻は、1881年、第6回の印象派展に出品されました。出品時、ワックスで制作した本体は胴衣、スカート、トゥシューズ、ソックスを身に着けていました。この試みに対し、当時の評価は二分。「彫刻の基本から外れる」として反対する意見とドガの意図に賛成する意見に分かれました。

◎第6章 ポール・セザンヌ / 第7章 フィンセント・ファン・ゴッホ
第6章と第7章の壁の色は黄土色。
セザンヌとゴッホはそれぞれ、一人に1章が配分されています。これは、ビュールレ・コレクションがこの二人を大切にしていることの現れです。各章とも6点の作品だけで、それぞれの作家の変化が分かるようになっています。

◎セザンヌ《赤いチョッキの少年》
国立新美術館で好きな作品のアンケートを取ったところ、第1位はルノワール《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢》、第2位はカナレット《サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂、ヴェネツィア》で《赤いチョッキの少年》がベスト10にも入っていないのは意外でした。
作品をよく見ると、右腕は白を塗り重ねて前に出てくる感じです。一方、左腕は暗く奥まって見えます。立体感がよく出ています。

◎ゴッホ《日没を背に種まく人》
本日、午後2時からの特別講演会で大原美術館・高階館長が「ゴッホの《日没を背に種まく人》はミレーの宗教的主題を引き継ぐ「聖なるもの」を描いた作品で、黄色い太陽は光背を表す」と話されましたが、私もゴッホの作品は宗教絵画だったと思っています。彼の作品は信仰告白につながっています。

◎第10章 新たなる絵画の地平
第9章と第10章の壁の色は白。第10章はモネ《睡蓮の池、緑の反映》だけを展示しています。大作であること、その後の絵画につながる作品であることから最後に置かれています。

◎自由観覧 18:40頃~19:00
セザンヌの作品の前で、ある参加者が「昔、セザンヌのどこが良いのか分からなかったけれど、最近、セザンヌはすごい、と思うようになってきた」と話しているのを聞いて、深谷副館長が「よかったですね」と声をかけてくれました。
ルノワールの絵にはサービス精神があるので万人向きですが、セザンヌの絵は求道者のようで、玄人受けはしますが初心者にはとっつきにくいですね。《扇子を持つセザンヌ夫人の肖像》も存在感はあるのですが「もう少し美人に描いてあげたら」と同情します。ただ、セザンヌ本人は「万人受け」することを微塵も考えていなかったことは確かです。
ゴッホ《アニエールのセーヌ川にかかる橋》の前で、ある参加者が「汽車の動き、川面の青がきれいで、紅一点の女性が画面を引き締めていますね」と感想を漏らしていました。私もこの感想に同調、作品を眺め直しました。仲間内の鑑賞会なので、あまり気兼ねせずにおしゃべりできるのもギャラリートークの魅力です。

深谷副館長

深谷副館長


 
◆最後に
 ギャラリートークを終えて名古屋市美術館を後にする参加者は、どなたも笑顔でした。また、「どの作品も質が高くて、満足しました」という声も聞かれました。参加者数が多いので解説の声が届かなかったらどうしようかと心配しましたが、ポータブル・アンプのおかげで参加者が多くても参加者の隅々にまで声が届き、杞憂に終わりました。
2時間もの長時間にわたりギャラリートークに協力していただいた深谷副館長はじめ名古屋市美術館のスタッフの皆さま、ありがとうございました。
本展で気がかりなのは猛暑。熱中症の予防はもちろんですが、外気の気温と美術館展示室内の室温との差が大きいので「寒さ対策」もお忘れなく。
Ron

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