豊田市美術館『ブリューゲル』展ミニツアー

カテゴリ:ミニツアー 投稿者:editor

 7月14日土曜日、前の週から続くうだるような暑さのなか、11名の会員が集まり豊田市美術館『ブリューゲル』展ミニツアーが開催されました。集まった人数は少なかったのですが、ブリューゲル展の担当学芸員の北谷正雄さんの「暑いですね、よくぞたどり着かれました」の一言から解説が始まりました。
 この展覧会は、まずはピーテル・ブリューゲルさんから家系が始まり、その子であるピーテル2世、ヤン1世に引き継がれ、そのまた子たち(ピーテル3世やヤン2世ら)につながっていくという画家一族及びその工房のブリューゲル一族の画業を紹介してくださっています。そしてその多くの作品をテーマごとに分けて展示し、その特色について分りやすく解説してくださっています。
 ブリューゲル一族の風景画は、一見フランドル地方の一風景を写生しているように見えますが、実は身の回りの自然をそのまま描いているだけでなく、現実にはそこにはありえない山や川、崖や森などを併せて描いたりして、世界中の風景をちりばめた、いわば世界風景の絵に仕上げているそうです。それは一種の理想的な風景とも言えるのですが、宗教的な要素から逸脱出来ない、宗教画としての役割もあるとのこと。宗教的に良く耕された心の持ち主(つまり、信仰心のある者)には、絵の表す教えが浸透していくといったような側面もあったようです。
 冬の風景画はフランドルでは人気が高かったようです。凍った川の上でスケートやゲームをして遊ぶ子どもたちや民衆を描いたりしたものなど、楽しげな様子が描かれていますが、じつはそんなポジティブな要素だけでなく、いったん氷が割れてしまえば冷たい川のなかに人々が落ちて沈んでしまうといった不安や暗い影が絵には含まれているということです。つまり幸せな営みのなかにも、いつ不幸な災難が訪れるかは分らず、その不幸の訪れを危惧するような要素が含まれているともとれるそうです。
 旅の風景は、当時世界的にも商業が盛んになり、交易などによって富がもたらされることにより描かれるようになったようです。
 寓意画は、16世紀17世紀に古典を復興させようという動きが強まり、愛とか勇気といった抽象的観念を表すものとして描かれるようになったようです。
 その他静物画や昆虫の絵も人気があったようです。そして、よく知られている農民の風景も多く描かれていて、現代を生きている私たちに当時の民衆の生活の様子を伝えてくれています。
 暑い中、私たちにお話してくださった担当の北谷正雄学芸員に感謝の意を表したいと思います。ありがとうございました。
名古屋市美術館協力会

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