協力会からチラシが送られた「ゴーギャン タヒチ、楽園への旅」(原題:Gauguin Voyage de Tahiti)を、先週、見ました。ゴーギャンのタヒチ滞在時(第1期:1891~1893)の出来事を描いた映画です。
粗筋は、タヒチに来たゴーギャンが現地の少女テフラを妻にして彼女をモデルに絵を描くが、テフラは他の男と通じ、ゴーギャンは病気治療のため本国に送還されるというもの。映画の最後に「その後、ゴーギャンは再びタヒチに滞在して傑作を描き、マルケサス諸島に渡って死去。二度とテフラに会うことはなかった。」という字幕が出ます。
これだけだと悲惨なお話ですが、前面に出てくるのはタヒチの自然やゴーギャンが絵を描くシーンなので、余裕をもって映画を楽しむことが出来ます。
映画なので実話かフィクションかは不明ですが、近所の赤ん坊を肩に乗せたテフラを見ながら《イア・オラナ・マリア=マリア礼賛》を描く姿は、とても満足した様子です。この場面の後、テフラのことを「彼女はマリアだ。」と言う医師に対し、ゴーギャンは「彼女はイブだ。」と、答えていましたね。一方、別れを告げに来たテフラを前にして《テハマナの祖先たち》を描くシーンは、実に切ないものでした。また、ゴーギャンがアトリエ兼住居として使っている竹の小屋には、葛飾北斎《神奈川沖浪裏》が貼ってありました。
映画の中でゴーギャンが描く絵は、外に幾つもあります。エンドロールで紹介されるので、エンドロールが終わるまで席を立たないようにしましょう。
残念ながら、ミッドランドスクエアシネマ2での上映は2月16日まで。しかも、1日1回の上映。上映時間は、2月13日から15日までは8:45~10:30。2月16日は8:55~10:40です。
Ron.
2018年
2月9日
映画『ゴーギャン タヒチ、楽園への旅』
2018年
2月7日
卒展、修了展(東京藝大)(その1)
例年、この時期の楽しみの一つが各芸大の卒業・修了作品展を見ることだ。普段、美術館の展覧会ではお目にかかれない実験的な作品に出会うことができる。今回は、東京藝術大学の卒業・修了作品展を見て、気になったものを数点紹介させていただく。
今回は、例年にない大寒波に遭遇し、上野公園はいたるところ雪と泥。公園を横切り藝大に着くまでにジーンズは泥だらけ。たどり着いた正門前にも雪の山。とにかく寒かった。
「夢見たものは」 今西茉莉子
金色に光る直径1mくらいのリングの内側に、ビーズや金属のパーツをつなげたものをすだれのようにつりさげた作品。数種類の金属加工技術が使われているとのこと。黒門前に設置され、屋根から落ちてくるしずくと、すだれのような部分が親和し、キレイだった。後光のようなパーツがついていることから、何かしら高貴な存在を示しているのだろうか。
屋根はあるけど、展示場所は吹きさらしなので立ち会っていた作家の方も寒さで大変そう。なぜ、室内ではなく、黒門前を展示場所に選んだのか。夢見たものは、かなったのか、ちょっと気になるところ。
(その2に続く)
杉山博之
2018年
2月7日
グリーンランド 中谷芙二子+宇吉郎展
霧の彫刻で有名な中谷芙二子氏の「GreenLand」を見た。以前にもヨコハマトリエンナーレと豊田市美で体験したが、作品に大量の水を使うためどちらも屋外での展示だった。今回はなんと室内、しかもほぼ密閉空間での展示。例えるなら、白川公園の科学館の南側にある噴水を名古屋市美の地下ロビーに引っ越しさせるようなもの。(ちょっとおおげさ)さて、どうなることやら。
展示室に入ると、モニタの入った白い小屋、黄色のドラム缶、ふたの開いた木箱、大量の石、ハンマー、手袋などが見えた。床には所々に水たまり。それから登山で使うようなヤッケ。(鑑賞者貸出し用)
ベンチ代わりのドラム缶に腰掛け、しばらく待っていると、ザーッという音と同時に霧が出始め、あっという間に室内は五里霧中。一緒にいた観客のあいだにもざわめきが広がった。
上演時間は約8分間。終了後、数分で霧は晴れ、霧の濃さを思えば、意外に小さな水たまりが床に残っていた。都会のきらびやかなビルの中で、雪山遭難のような、とても興味深い体験をした。
今回の展示のチラシを読み、雪の研究で有名な中谷宇吉郎氏が中谷芙二子氏の父であること、石川県加賀市に「中谷宇吉郎 雪の科学館」があること、その科学館には常設で「Greenland Glacial Moraine Garden」があることを知った。ぜひ出かけてみたいと思う。
杉山博之
展覧会情報
「グリーンランド 中谷芙二子+宇吉郎展」
会期:2018年3月4日まで
会場:銀座メゾンエルメス フォーラム
2018年
2月6日
木彫りどうぶつ美術館ミニツアー
記録的な寒波に見舞われるなか、2月4日日曜日に名古屋市美術館協力会のミニツアーとして、市内のヤマザキマザック美術館で開催されている『木彫りどうぶつ美術館』を鑑賞しました。
当日は15名が見学に参加し、学芸員の吉村有子さんに解説をしていただきながら展示室を観覧しました。展覧会場は混みすぎることもなく、ときおり吉村さんの解説に一般の入場者の方も耳を傾けながら、みなゆっくりと展覧会を見て回りました。
展示されている動物の種類は実に多様で、最初「どうして?」と疑問に思っていましたが、吉村さんのていねいな解説に納得。はしもとさんが制作されたどうぶつの作品は、もちろん彼女が興味を持って取材し、制作されたものもありますが、彼女の作品に様々な場面(インターネットや展覧会などでしょう)で出会った方々が、ご自分の飼っているどうぶつの作品制作を彼女に依頼したというケースもあったとのこと。あの動物たちの彫刻は、はしもとさんと依頼主さんたちとの出会いや、はしもとさんご自身の、取材を通じてのどうぶつたちとの出会いの記録のようなものではなかったのかなと感じました。
作品は、実物大ほどのものも多く、木の厚みや質感がまるでどうぶつたちが生きているような錯覚を起こさせるようです。そして、半数ほどの作品が触ってもよいと表示されているので、みんな作品をなでるように優しく触っていました。癒されます。
最後に、展示室を案内してくださり、作品を情熱をもって解説してくださった学芸員の吉村さんに、心より感謝申し上げます。ありがとうございました。
名古屋市美術館協力会