「park」 長谷川博子
東京藝術大学美術館の中の作品を見終え、中庭に出るとそこにもかなりの雪が残っていた。中庭にも数点の作品が設置されており、とりわけ目を引いたのが透明なビニールのテントの作品だった。
周りにグリーンを主とした布を幟のように張りめぐらし、さながら温室のようだ。入口は開けっ放しだが、中に入ると以外に暖かく、寒さからの避難先として他の鑑賞者にも好評だった。
テントの中には様々な制作手法による衣装が多数、ぶらさがっていた。手芸を趣味とする人には、相当に興味深い展示なのだろう。あるものは着られそうであり、あるものは着心地の想像もつかないのだが。テントの中から、ぼんやりと中庭を眺めているうちに、気分が落ち着いてきた。
残りの作品を見るためにテントを出て、歩きながらふと思ったのだが、この作品のテントは衣装をかけておくためのクローゼットのような装置ではなく、衣装とセットの空間として、中に入る人を包み込むように提示されていたのだろう。
例えるなら、テント、幟、衣装は、ファミレスのキッズランチのように、彩の楽しいワンプレート全体を楽しむ、そんな見方がちょうどいいのだろう。
今後、この作家は、いわゆる美術の領域よりも、身近な生活の領域で心地よい作品を展開していくのかもしれない。
そんな予感のする作品だった。
(その3に続く)
杉山博之
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