体験しました「シャンパーニュの夕べ」

カテゴリ:協力会事務局 投稿者:editor

名古屋市美術館で開催中の「シャガール 三次元の世界」展の関連イベント「シャンパーニュの夕べ」を体験しました。
◆受付
当日は、美術館2階・講堂入口の受付で参加料5,000円を支払い、関係資料と観覧券1枚、シャンパン引換券2種・各1枚が入った透明ビニールの手提げ袋を受け取りました。イベント開始まで資料を眺めながら、講堂内で暫しの休息。
◆展覧会の見どころ解説
 午後5時から、深谷副館長による「展覧会の見どころ解説」が始まりました。深谷副館長によれば、「シャンパーニュの夕べ」は「ランス美術館展」の関連イベントとして開催したのが初の試み。幸いに評判が良く、今回、2回目となる「夕べ」の開催に至ったとのことでした。
◆ギャラリートークと自由鑑賞
 午後5時半に1階の展示室へ移動。展示室内で絵画と彫刻の《誕生日》、《座る赤い裸婦》、《彫刻された壺》などについてギャラリートークがあり、その後は自由鑑賞。午後6時には2階の展示室に移動。《エルサレム〈嘆きの壁〉》、《過越祭》、《アルルカン》、羊の骨を素材にした《二重の横顔》、《ヴァヴァの肖像》などについてのギャラリートークの後、自由鑑賞となりました。
◆シャンパンと軽食のサービス
 午後6時半頃には展覧会の鑑賞を終え、地下1階のロビーに移動。ロビーでは数か所にテーブルが置かれ、テーブルごとに8つのプレート。各プレートには一人分の軽食とおつまみが盛り付けられ、参加者は机・プレートを一つ選ぶことができます。
自分の机・プレートを決めて一杯目のシャンパンを賞味。イベントに協力の「株式会社ヴァンパッシオン」がシャンパーニュ・ジャクソン(Champagne Jacquesson:小売価格10,000円)を細長いフルート型シャンパングラスで提供。「少しずつ口に含んで、味わいながらお楽しみください。」というアドバイスに従いジャクソンを飲み終えた頃、二杯目のエグリ・ウーリエ(Domaine Egly Ouriet:小売価格12,000円)の提供が始まりました。こちらは、広口のクープ型シャンパングラスに注がれ、「グラスを水平にゆっくり回し、香りを楽しんでください。」とのアドバイス。
ペンネやソフトドリンクの提供も始まり、ケーキなどのデザートも出ました。気が付くと午後7時半。「シャンパーニュの夕べ」は続いていましたが、ほろ酔い気分で美術館を後にしました。
◆感想など
 解説がわかりやすく、ギャラリートークと自由鑑賞の時間配分は半々で、存分に展覧会を楽しめました。閉館後のイベントですから、まさに「貸し切り」。贅沢なひと時が味わえます。シャンパンと軽食のサービスも、普段は「飲食禁止」の地下1階ロビーを使うのですから、これも「スペシャル・タイム」。いま流行りの「コト消費」を満喫しました。
 ただ、「発展途上」のサービスもあります。一回目の時は、「食べ物がない」という参加者が居たとか。今回は各参加者に一つプレートがあるので、安心して食べることができました。なお、チケットをすでに持っている方からは「チケットを持っているのに、何で観覧料まで払うの?」という声もあがりました。
また、会場では「ペンネがアルデンテじゃない。」「シャンパンに合ったおつまみにして。」などの声も聞かれました。次回はどんな進化を遂げているか、楽しみです。
Ron.

シャガール展 ギャラリートーク

カテゴリ:協力会ギャラリートーク 投稿者:editor

名古屋市美術館で開催中の「シャガール展」(以下「本展」)のギャラリートークに参加しました。担当は深谷克典副館長(以下「深谷さん」)、参加者は58人。以下、深谷さんのトークを要約しました。

まずはエントランスホールでの解説

まずはエントランスホールでの解説


◆エントランスホールで展覧会の概要を解説。こぼれ話も披露
名古屋市美術館で開催するシャガール展は、本展が2回目。前回開催は、開館2年目の1990年。前回はシャガールの回顧展で、ロシアのトレチャコフ美術館・ロシア美術館の所蔵品を中心に、個人蔵も併せて150点を展示。本展の展示作品は173点、うち陶器・彫刻が62点。シャガールが制作した陶器・彫刻は300点だが、売り物では無かったので、大半をシャガールの遺族が所有。そのため、シャガールの陶器・彫刻が多数展示される機会は稀。3年前に愛知県美術館で開催されたシャガール展では十数点の立体作品を展示。ヨーロッパでも47点を展示したのが最高。本展の62点という立体作品数は世界一。
エントランス正面に掲げている大きな写真は1924年の撮影。シャガール本人と妻のベラ、娘のイデが写っている。シャガールは、写真撮影の前年に革命後のソ連からドイツ経由でフランスに戻っている。この頃が作家としても家庭的にも一番充実していた時期。
写真では壁に《誕生日》が写っている。なお、本展で展示の《誕生日》(1923)は、オリジナルの《誕生日》(1911)をシャガール本人がコピーしたもの。写真には有名な《私と村》も写っている。この作品もオリジナルは1911年制作、1923~24年にシャガール本人がコピー。
何故、自分の作品をコピーしたのか。それは、シャガールが20代から30代前半にかけて描いた絵が全て、彼の手元から失われたから。1911年から1914年にかけて描いた作品は、ドイツで個展を開催した後、画商が勝手に売却。1914年から1921年にかけて描いた作品は、トレチャコフ美術館・ロシア美術館の所蔵品となった。そのため、フランスに戻ってから、オリジナルの作品をシャガール本人がコピーして自分の手元に置いた。

◆第1章 絵画から彫刻へ ~ 《誕生日》をめぐって
本展は、5章立て。テーマ別なので、展示作品の制作年代は入り乱れている。
第1章のテーマは「絵画から彫刻へ」。シャガールが立体作品の制作を始めたのは、米国への亡命(1941~1948)からフランスに戻った翌年の1949年。陶芸・彫刻のテーマ・モチーフは絵画で表現したものを、そのまま使用。
第1章に展示の彫刻《誕生日》(1968)も、絵画の《誕生日》と同じモチーフの作品。しかし、「絵画の焼き直し」ではなく、新たな表現になっている。絵画についても「後年のシャガールは代り映えせず、マンネリでは?」と思われるかもしれないが、晩年の作品は色彩が綺麗で、進化し深みが増している。「同じモチーフでも表現がこれほど違うのか。」という体験を楽しんでもらうのが、本展の趣旨

◆第2章 空間への意識 ~ アヴァンギャルドの影響
 絵画《座る赤い裸婦》(1909)はゴーギャンの影響がみられる作品。19010年頃のロシアではゴッホ・ゴーギャンの影響が強かった。シャガールはシチューキンやモロゾフの絵画コレクションを見ていたかもしれない。
 シャガールがパリに出てきた1911年頃、最先端の潮流はキュビスム。第2章ではキュビスムの影響を受けた作品を展示。パリに出て来てから半年から1年という短い期間で自分の様式に到達していることは注目に値する。

◆第3章 穿たれた形 ~ 陶器における探求
 陶器の作品は1949年から制作を開始。その彫刻は2年後から彫刻も始めた。立体作品の制作は、1950年代から1960年代初めに集中。陶器《把手のついた壺》(1953)は壺の一部が上に広がり、女性の顔が描かれている。形がユニーク。シャガールは、下絵を描いてから陶芸作品を制作している。《把手のついた壺》のための下絵を見ると、マグカップから立ち昇る湯気が髪の毛になり、そして女性の顔になったのではないかと、想像される。
 シャガールは自己流で陶器を制作。それが作品の魅力になっている。先生に付いて指導を受けていたら、ここまで自由な造形は無かった。「売り物」ではなく「自分の楽しみ」として制作していることが自由さにつながっている。

◆第4章 平面と立体の境界 ~ 聖なる主題
 第4章に展示のレリーフや絵画は、旧約聖書を主題にした宗教的なテーマの作品。
エコール・ド・パリの作家のほとんどはユダヤ人だが、宗教的なテーマを取り上げているのはシャガールだけではないかと思われる。
1910年代のフランスには、ユダヤ人に対する偏見が残っていた。そのため、シャガール以外の画家はユダヤ教をテーマにすることを回避したと思われる。シャガールがユダヤ教をテーマとした理由はよくわからないが、有力な画商にはユダヤ系が多いので、ユダヤ・コネクションに乗るために宗教的なテーマの作品を制作したのであろうか?
ユダヤ教をテーマにした作品を残すことにより、シャガールは独自の位置を占めている。

◆第4章 平面と立体の境界 ~ 素材とヴォリューム
 シャガールの彫刻は大理石以外にも、ヴァンスの石など様々な素材を使用。シャガールの彫刻は、①本人が下絵を描き、②下絵をもとに専門の石工が石を彫り、③本人が最終的な仕上げをする、という流れで制作している。陶器については、①本人が土を練って造形、②専門家が焼成、という流れ。また、版画は本人が彫っている。
 シャガールの発想は自由で、版画《野蛮人のように》で使ったブーツの版木を、《時の流れに〈逆さブーツのマントを着た男〉》では、上下を逆にして使っている。
絵画《アルルカン》は色鮮やかな作品だが、その下絵では色鮮やかな端切れをコラージュしている。本展では、赤や青など鮮やかな色彩を楽しんでほしい。

◆第5章 立体への志向
《二重の横顔》は羊の骨を拾って来て、片面に目、鼻を描き、もう一方の面に女性の上半身を描いた作品。シャガールは「素材に対して素直でなければならない。」と言っており、素材に寄り添うように作っている。新しいおもちゃを手に入れたような気持ちで作品を制作したのだろう。
 
◆自由鑑賞
 作品解説後の自由鑑賞では、絵画の《通りの魚》(1950)、《魚のある静物》(1969)について「二匹のニシンの横に描かれている物体は、ジャガイモなのか、パンなのか、ローストチキンなのか」ということが話題になりました。色や形はジャガイモみたいだけれど、ジャガイモにしてはサイズが大きすぎる等、議論百出。深谷さんに尋ねると「シャガール本人は何を描いたのか残していない。パンという説が有力だが、本人が何も言っていないので、決め手はない。」と解説。どうでもよい話題でその場が盛り上がりましたが、それもギャラリートークならではのことですね。
 彫刻の中には、少しこすっただけでも表面が削れてしまいそうな堆積岩を素材にしたものもあり、設置には気を使ったとのこと。また、柱状の彫刻は転倒防止の金具でしっかり固定されています。立体作品の展示は大変ですね。
 また、深谷さんから解説があった通り、晩年の作品は色彩が綺麗でした。
 会期は、来年の2月18日(日)まで。
Ron.

ギャラリートークは大盛況でした

ギャラリートークは大盛況でした

2018年美術展ベスト25(芸術新潮12月号)

カテゴリ:アート・ホット情報 投稿者:editor

11月25日発売の「芸術新潮」12月号の特集は「これだけは見ておきたい2018年美術展 ベスト25」。

愛知県内の美術館で開催される展覧会としては、「ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜」(豊田市美術館 2018.4.24~7.16)、「モネ それからの100年」(名古屋市美術館 2018.4.25~7.1)、「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」(名古屋市美術館 2018.7.28~9.24)が紹介されています。

「ブリューゲル展」の記事は「ブリューゲルといえばピーテル1世の《バベルの塔》の来日が記憶に新しいですが、じつは彼亡き後も代々続いた画家一族だって知ってました?ここでは3世代8人の画家を紹介しましょう。」と、始まっています。

「モネ それからの100年」の記事の出だしは「本展はモネの作品と後世の作家の作品を一堂に集め、モネのエッセンスがのちの美術にどう伝わったかに光を当てる。というわけで、ここでは出品作家のひとり福田美蘭さんにモネ作品の見方を教わり、彼の『遺産』に思いをはせます。」です。

 「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」の記事の表題は「騙され盗まれ、波乱万丈? ビュールレ氏の収集ライフとお宝絵画」で、「印象派やポスト印象派をメインに、名画を集めまくったアート・コレクター、E.G.ビュールレ氏の秘蔵の作品が一挙来日!あの作品も、実はこの人が持っていました(時に盗まれもしましたが)。」と、続きます。

 東京と京都だけの展示になりますが、「没後50年 藤田嗣治展」の記事もあります。
Ron.