長沢芦雪展 ミニツアー

カテゴリ:ミニツアー 投稿者:editor


今回の参加者は28名。愛知芸術文化センター12階のアートスペースEで約1時間、愛知県美術館の深山(みやま)美術課長の解説を聴き、その後は自由観覧となりました。

◆深山課長の解説(抜粋)
〇展覧会について
 長沢芦雪の展覧会は2013年の「応挙展」終了後から「次は芦雪」と、温めていた企画。
芦雪の展覧会は、2000年(千葉市美術館、和歌山県立博物館)、2011年(MIHO MUSEUM)以来の開催となる。開催当初の入場者は一日1500人程度だったが、SNSで「かわいい」と、人気が出てきて、11月3日には3400人の入場者があった。東京だったら、もっと多くの入場者となり、入場制限をする事態になっていたかも。展示室の作品解説も、「わかりやすい」と評判。

○長沢芦雪は、どんな人
 長沢芦雪は1754年生まれ。1799年に数え46歳で死去。円山応挙の弟子1000人の中でも「一番うまい」とされる人物。先生の真似だけでなく、新たな境地を拓いている。
今回の展覧会では応挙の入門する前の作品を4点展示。《関羽図》を見ると「面白い線を引きたい」という意欲を強く感じる。もともと表現意欲一杯だったが、十代の頃の技術は未熟。応挙の弟子となって表現技術を身に着け、大きく成長したと言える。

〇応挙との比較
《牡丹孔雀図》は応挙・芦雪ともに描いているが、応挙の孔雀は「動きが止まった一瞬」を描いているのに対し、芦雪は「動いている途中の姿」を切り取っている。《楚蓮香図》でも応挙は小柄で優しい女性を描いているが、芦雪は髪の毛が乱れた色っぽい女性を描くだけでなく、足元に蓮華草を配し「蝶は、花ではなく蓮香の香りに惹かれている」ことを表現。いずれも、先生である応挙の真似にとどまらず、工夫を加えた作品となっている。

〇和歌山県串本町・無量寺の空間を再現
 今回の展覧会では愛知県美術館の広い展示室を活かして、無量寺の空間を再現。
現在の無量寺ではレプリカの襖を使用。本物は無量寺の展示施設あるが、奥行きが足りないので、残念ながら虎も龍も、最後の襖は他の4枚と直角に交差する位置に展示。
展覧会では本物による襖絵の空間を体感してほしい。本尊の前に立つと、部屋の奥から虎と龍が出て来て両側から迫ってくるように感じる

○かわいい生きもの
 かわいいのは子犬だけでなく、子どもたちやスズメ、カエル、ナメクジなども。また、全身は黒色で、首と足先だけが白い子犬の後ろ姿が多くの作品に登場しているので、注目。

◆自由観覧
 お昼時にも関わらず、深山課長から話があったとおり、展示室は大勢の入場者で込み合っていました。とはいえ、鑑賞の妨げになるほどではありません。でも、土・日は朝一番を避けた方が良いかもしれませんね。

○無量寺・方丈の空間再現
 深山美術課長による解説のとおり、無量寺の空間再現は圧巻でした。3室分を再現しているので、《虎図》の裏に「魚を狙う猫」が描かれていることがよくわかります。《唐子遊図襖》ではネズミの姿もしっかり確認できました。
愛知県美術館における「空間再現」は、2013年3月~4月の「開館20周年記念 円山応挙展」における兵庫県美方郡香美町・大乗寺客殿以来。「開館30周年記念」というだけに、力が入っていますね。

〇《月夜山水図》はじめ、満月が4点
 深山課長「芦雪は、塗り残すことにより満月を描写。技術が無いとできない表現」と、解説していましたが、月夜の絵が見事に4つ並んでいました。

○《白象黒牛図屏風》エツコ&ジョー・プライスコレクション
 白象の上にカラス、黒牛の脇に子犬。対比が面白いですね。愛知県美術館で展示されるのは2007年4月~6月の「プライスコレクション 若冲と江戸絵画」以来でしょうか?

○《方寸五百羅漢図》
 一寸角の画面に五百羅漢が描いてあるというのですが、小さすぎて見えません。隣の拡大図を見て、「これだけの人物を、どうやって一寸角の画面に納めたのだろう。」と、感心してしまいました。

◆最後に
 長沢芦雪は茶目っ気たっぷりというか、絵にいろいろな仕掛けを凝らすのが大好きな人だったようです。数え46歳で亡くなったのは、あまりにも惜しい。北斎ぐらい長生きしたらどんな絵を描いたのか、見てみたかったですね。
北斎といえば、「長沢芦雪展」の終了(11/19)と入れ替わりに、「北斎 だるせん!」が名古屋市博物館で始まります。(11/18~12/17)こちらも、楽しみです。
           Ron.

深山学芸員による1時間にも及ぶ解説、ありがとうございました。

深山学芸員による1時間にも及ぶ解説、ありがとうございました。

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