とある美術館にて

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:editor

「えー、入場料高いなぁ」
「これで単位くれなかったら、もう美術館なんか行ってやんないから!」

 良く晴れた休日。とある美術館の入り口でアニメコスプレと思われる銀髪、金髪、黒の和服、腰に刀(?)の一団と遭遇した。10名ほどの団体らしく、少し離れたところで、普通に洋服の女性が帰りの集合時間、集合場所を大きめの声で説明していた。内容からすると芸術系大学の課外授業のようだ。せっかく来たのだから、展覧会と庭園を楽しんでもらいたいと思いつつ、彼らを追い越し、館内へ。

 しばらく静かに鑑賞していたのだが、先ほどの学生たちが追い付いてきたらしく、後ろの方が賑やかになってきた。聞こえてきた会話からすると、この展覧会はレポートの課題になっていること、その採点はかなり厳しいこと、展覧会に来るのは半年ぶりらしいことがわかった。その他にも、アルバイトのシフトが忙しいこと、近々の旅行の話題と一緒に冒頭のセリフが聞こえてきた。5分くらいで彼らは展示室から出ていき、静かになった室内でふと思い出したのが、昨年のあいちトリエンナーレでの出来事だ。

 その時も、観客として来場した作家や、若手の出品作家から「最近の展覧会は入場料が高い」、「入場料が高く、気になる展覧会があっても、なかなか観に行けない」という悩みを聞いた。確かに、2人で出かければ、入場料、交通費、ランチ代で5千~1万円くらいの出費になるわけで、安くはないかも(?)と思ったものだ。

アニメコスプレの彼らは、無事にレポートを提出し、単位をもらえるだろうか?
展覧会の入場料がもっと高くなるとしたら、個人的に払える限界は?
そもそも入場料が千円を超えたのは、いつ頃?
美術館のカフェに行列する人々を眺めながら、ぼんやりとそんなことを考えた。

杉山 博之

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