『山本富章|班粒・ドット・拍動』のワークショップ

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:members

豊田市美 山本富章_ワークショップにて

豊田市美術館で開催中の『山本富章|班粒・ドット・拍動』のワークショップに参加しました。
山本富章氏は平成17年から作製している協力会オリジナルカレンダーの最初の作家です。
美術館のエントランスから2階の展示室に階段を上がって行くと『bugs』という作品があります。14000個の洗濯ばさみにドットを配し、白と黒の洗濯ばさみが規則正しく配置されています。自然光の中、ジョゼフ・コスースの「分類学#3」という作品と向かい合わせの吹き抜けの大空間に先ず圧倒されます。そして展示室に入ると山本氏の最大の作品を見ることが出来ます。

山本富章_ジャンボクレヨンで影を描こう

ワークショップは「ジャンボクレヨンで影を描こう」というタイトルで、小学生から大人まで21名が参加しました。
プロジェクターの青い光を当て、影を作り、紙に写します。その紙をはさみで切りポジとネガのように分けてパネルの上に置いて、後はただひたすらクレヨンを塗る作業が続きます。
山本氏のお手製のジャンボクレヨン、色の三原色の赤・黄・青を重ねると黒になるはずですが、私の場合は上手くいかなくて残念でしたが楽しい時を過ごしました。最後に作品を持って展示室に戻り全員で山本富章氏の作品の前で記念撮影をして終了しました。クレヨンを塗ったのは何十年前かと思いながら帰路に着きました。

松本裕子

藤田嗣治展

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:editor

藤田嗣治展を見終わった兄妹が、カフェでおしゃべりをしている.美術が大好きな兄貴と、ファッションからワインまで好奇心のかたまりの元気な妹である.どうやら,藤田嗣治の乳白色の裸婦像と戦争画を話題にしているらしい.二人の会話に耳を傾けてみよう.

兄[♠]今回の展示は,フジタの若いころの作品から晩年までを,ほぼ年月順に整理されて,画風の変化が見やすいね.
妹[♥]ええ,そうね.フジタといえば,私の中では,透き通るような肌の裸婦像を描く画家というイメージが先行していたけど,迫力ある大画面の戦争画も,フジタという作家の代表作の一つと思うわ.
[♠]今回,戦争画が3点しか展示されていないけど,フジタ自身はかなりの戦争画を残しているよ(1).
[♥]《サイパン島同胞臣節を全うす》と《アッツ島玉砕》は群像の作品なのね.
[♠]そうだね.パリで“乳白色の肌”を描くジャポネとして有名になって,次の作風を模索するなか,西洋美術の本流である群像に挑戦したらしいね.戦争画を描く以前にも,いくつか群像の作品があるよ.
[♥]そうなの.群像というと,レンブラントの《夜警》やダヴィッドの《ナポレオンの戴冠》が有名ね.
[♠]うん.それにしても,《アッツ島玉砕》は圧巻だね.ドラマチックだ.
[♥]怖いくらいね.アッツ島も南洋の激戦地だったところ?
[♠]違う,違う.当時も現在もアメリカ・アラスカ州のアリューシャン列島の一つ.極寒の地.侵攻した日本陸軍の守備隊2千人強が全員戦死.当時,玉砕といわれ,英雄視されたらしい.その様子を想像で描いたフジタは,これらの戦争画制作を非難され,石もて追われるごとく,戦後日本を離れることになる.フジタには,口では言えない曰く因縁ある作品だろうね.
[♥]そう,それで,戦争画の展示されている壁面が青色で,鎮魂色なのね
[♠]そうか.この作品は,太平洋戦争末期1943年に完成し,戦意高揚のために全国に巡回したそうだ.ある東北の会場では,観客からお賽銭が上げられたとか.それだけ,当時の国民感情として感動的だったわけだ.
[♥]う~ん.ところで,裸婦の作品の壁面は赤よね.興奮色?
[♠]ハァ? 赤は白が合うのだろう.《五人の裸婦》や《タピストリーの裸婦》はきれいだね.いくつか裸婦像が展示されているけれど,なかでも《タピストリーの裸婦》の輪郭線はすばらしいね.面相筆(めんそうふで)の一本線が美しい.まさに一発勝負で,書き直しが無い!
[♥]ピタッとくっついている両脚は境界の一本線だけで描かれているわ.セクシーね.乳白色の頬にピンク色が差してるのは,かわいいわね.
[♠]ホ~.乳白色はフジタ独特の技法だね.最近の研究によると,キャンバスに炭酸カルシウムを溶き油で溶いて,下塗りして,この時点では化学変化を起こして濁色になるだろうと思うけど,そこはフジタマジックで,タルクと呼ばれるケイ酸マグネシウムと白油絵具を混ぜて塗りこみ,つや消しの白い肌を生み出したそうだ.
[♥]フジタさんて,研究熱心なのね.炭酸カルシウムとかケイ酸ナントカって何?
[♠]ははは,炭酸カルシウムは石灰だ.ケイ酸マグネシウムは,早い話がベビーパウダーだよ.パリで認めてもらうために,オリジナリティを追及したわけだ.制作数も半端じゃない.私生活では,奥さん,恋人を取っかえ引っかえ….羨まし~い….
[♥]フジタには人間的魅力があったのよ.スケールが大きいのよね.
[♠]はいはい.ところで,群像を描いた話だけど,秋田県立美術館に《秋田の行事》と題された横20mほどの超大作があるらしい.時間を作って,見学に行きたいね.
[♥]うわ~うれしい,連れて行って!きりたんぽ鍋と大吟醸!

(1) 東京国立近代美術館所蔵作品展 特集:藤田嗣治,全所蔵作品展示.2015.9.19-12.13.戦争画14点を含む同館が所蔵する藤田嗣治の作品26点がまとめて展示された.

入倉 則夫(会員)

「春のアートツアー」に参加しました

カテゴリ:アートツアー 投稿者:editor

5月29日(日)名古屋市美術館協力会主催の「春のアートツアー」に初参加しました。
今回訪問したのは、①国立国際美術館「森村泰昌:自画像の美術史」展 ②大阪市立東洋陶磁美術館「宮川香山」展 ③アサヒビール大山崎山荘美術館「終わりなき創造の旅」展の3つの美術館。アート三昧の充実した一日となりました。

①森村泰昌の作品を観るのは、昨年、名古屋市美術館所蔵のゴヤ作≪1808年5月3日、マドリードにて:プリンシペ・ピオ山での銃殺≫をオリジナルとした2作品≪兄弟(虐殺Ⅰ)≫と≪兄弟(虐殺Ⅱ)≫(1991年)以来です。
今回の展覧会は、約130点の作品(約50点が新作& 未発表作)と75分の映像作品で構成され、森村が美術史の中の著名な自画像に扮し「私/わたし」とは何かを探求しています。いろいろな解説や難しい理屈は抜きにして、とにかく面白かった!が私の感想です。でもこの展覧会を一番楽しんでいたのは森村本人ではないでしょうか。どの作品も細部まで考え抜かれていますので、作品のオリジナルや歴史的背景などを知っているとより楽しめると思いました。
私が一番興味深かったのは、ベラスケスの≪ラス・メニーナス≫をテーマとした8枚連作≪侍女たちは夜に蘇る≫(2013年)です。画家とモデルと鑑賞者の視線が複雑に絡み合う空間を縦横無尽に行きかいながら、作品と展示される場所(美術館)との関係も問い直しているようでした。

森村泰昌≪侍女たちは夜に蘇る≫会場風景

森村泰昌≪侍女たちは夜に蘇る≫会場風景


②陶磁器とは思 えない超絶技巧の宮川香山の作品に釘付けになりました。どのようにしてこれらの作品を創ったのでしょうか???タイムスリップして香山の工房を覗いてみたくなりました。

③大山崎山荘美術館で一番気になった作品は、モディリアーニ≪少女の肖像≫です。この作品は、名古屋市美術館の看板娘と同じ1918年頃に制作されました。モディリアーニが亡くなる一年ほど前で、恋人との間に娘が生まれ、子供の肖像をたくさん描いていた時期の作品です。≪少女の肖像≫は、少し大人びた優しいお姉さん風の姿で描かれていますが、美術館ホームページによると「少女が誰であるかは不明ですが、ジャンヌ、あるいはユゲットとよばれていた」そうです。
次回の来訪時には素敵な庭園の散策も楽しみたいと思い ます。

「終わりなき創造の旅」展チラシ、右下がモディリアーニ≪少女の肖像≫

「終わりなき創造の旅」展チラシ、右下がモディリアーニ≪少女の肖像≫


最後になりましたが、ツアーを企画してくださった協力会役員の皆様、大変お世話になりました。ありがとうございました。
会員  境 徳子

春の旅行2016感想

カテゴリ:アートツアー 投稿者:editor

5月29日、春の旅行2016に参加しました。
今回は大阪。国立国際美術館、東洋陶磁美術館、アサヒビール大山崎山荘美術館を3館を日帰りでまわるという、美術館巡り好きの私には堪らない濃密なスケジュールです。

国立国際美術館は森村泰昌展。
過去の有名な画家になりきった写真作品で有名ですが、生でその作品を見るのは初めて。まず写真の大きさに驚きました。で、でかい!
メイクも美術もカメラも、どうやらプロが加わっているらしい。なるほど細部まで作り込まれてクオリティが高いわけだ。
作品ごとに写実っぽいものや、ザ・油絵ってものだったりで、雰囲気は違うのだけれど、わたしは共通して森村の瞳に目がいきました。
森村の顔には写真を絵っぽく見せるために肌に絵具?(ドーランかも)を塗っていますが、さすがに眼球には塗れない。つまり眼球は偽りのない森村自身のもので、その濡れた瞳がゴッホの神経質な性格や、フェルメールの愛人?の色っぽさをより感じさせる。
瞬きを一切しない女の動画作品や、アイラインを引いた目をクローズアップした小夜子シリーズから、目力を意識して制作しているのを感じました。また、カーロ本人になりきって演技していたり(大阪弁なのに笑った)と、わりと演技派なのもおもしろかった。
浮世絵シリーズで写楽!とか、合いそうだなーと勝手に思いました。

3館をめぐるハードスケジュールの合間にランチ

3館をめぐるハードスケジュールの合間にランチ


デザートも付きました

デザートも付きました


東洋陶磁美術館は宮川香山展。
初めて見ました。宮川香山の超絶技巧、ただただため息をこぼしながら眺めていました。素晴らしいですね。
陶磁器の、ゆっくり眺めてじっくりとその良さを感じる、というのがまだ個人的には楽しめず、退屈に思っていましたが、宮川香山の作品のインパクトはすごい。
半立体の鳥、蛙、鼠、猫!そして、蟹……!!どれをとっても見ごたえがあり、楽しんで観賞しました。
きっと、当時の万博に向けて、宮川香山が力を入れて、入れて、入れまくった作品なんでしょう。どうだ、この技術!というドヤ顔と共に、彼のサービス精神を感じとりました。

あっという間の大山崎山荘美術館。
急勾配を登った先にある、しっとりと佇む和洋折衷の山荘。安藤忠雄の無機質なコンクリートの階段を降りた先にある半円の美術館。現実の喧騒からトリップしてしまいます。
しかし、入館したのは閉館30分前。超特急で部屋を出たり入ったりしながら鑑賞にまわる44名の会員たち。
確かに、山田学芸課長が語ったとおり、この美術館は夫婦や恋人と肩を寄せ合いながらじっくりゆったりと見てまわるところですね。
山荘美から芝生の庭を見下ろしながら、できたてのスーパードライを一緒に飲んでくれる方と、次は一緒に来てまったりしたいなあ……。
                                    会員 れい子