ポジション展ギャラリートーク

カテゴリ:協力会ギャラリートーク 投稿者:editor

不思議な作品、見上げる会員たち

不思議な作品、見上げる会員たち


  今回のギャラリートークではこの展覧会自体が個性ある作家たちの作品展示ということでいろいろな種類のアートに触れることができた。従来のポジション展は絵画というか平面的な作品が多いのだが今回は針金、陶器、米粒、糸、紙などを使った立体的な作品が多く地元の作家たちの力作が並ぶものとなったと思う。自分たちでも購入できそうな作品も多く協力会のメンバーで購入した人もいるという話も聞く。日常生活にアート作品を持ち込むなんて素敵な選択だと思う。つい先日シャネル銀座のギャラリーでフランスの作家の作品を見てきたがあまり興味を抱かなかった。作家の意図はあるのだが日本人にはピンとこない。しかしこの展覧会では地元作家のセンスのよさがひかる。学芸員の中村さんによる話でさらに作品に対しての深い理解ができたと思う。
美しい雨の中にいるような作品

美しい雨の中にいるような作品



  水谷さんのかわいい猫たち、水野さんの蚊帳のある部屋の展示、中谷さんの提灯をつかった哲学的な作品、稲葉さんの糸を使用した鳥の巣、徳田さんの未来的なカップ、KIMさんの遊び心満載の作品、そして米山さんの自分の名にちなんで米粒にこだわるのかどうかわからないが米粒を使った大変な作業時間を要する作品、白居易の詩を使った作品など細かく丁寧に見れば見るほどいろいろな発見ができる展覧会である。まだ見ていない人たちにぜひ見てほしいと思う展覧会である。参加者は30人ほどであった。
                              谷口 信一
丸テーブルを囲んで

丸テーブルを囲んで

名古屋ボストン美術館 ヴェネツィア展 ミニツアー

カテゴリ:ミニツアー 投稿者:editor

レクチャを聞く会員たち

レクチャを聞く会員たち


名古屋ボストン美術館で開催されている「ヴェネツィア展」(以下「本展」といいます。)のミニツアーに参加しました。参加者は16名。1階の壁画前で待ち合わせ、美術館5階のレクチャールームで解説を聴いた後は自由行動です。
◆ヴェネツィアの歴史
 本展について書く前に、ヴェネツィアの歴史を簡単におさらいすると、5世紀にゲルマン人の侵略を逃れて北イタリアの住民が湿地帯に避難してきたことから、ヴェネツィアの歴史が始まります。東ローマ帝国に属しながらイスラム帝国との交易で国力を拡大し、13世紀に第4回十字軍とともに東ローマ帝国の首都コンスタンティノープルを攻略して、東地中海最強の海軍国家となります。
15世紀後半から16世紀にかけてヴェネツィア・ルネサンスが花咲く一方で、オスマン帝国の進出により海外領土が奪われ、ヴェネツィアの衰退が始まります。更に、貿易の舞台が東地中海から大西洋、太平洋に移っていくことで、ヴェネツィアの貿易における影響力も低下。ヴェネツィアはガラス、レースなどの工芸品で対応しますが、やがて1797年ナポレオンの侵攻でヴェネツィア共和国は崩壊。1866年にイタリア共和国に併合され、現在に至ります。
◆本展の見どころ
 「魅惑の都市の500年」という副題のとおり、本展の対象は15世紀から現代までの500年です。レクチャールームでの解説によれば、見どころは①ヴェネツィア・ルネサンスの三大巨匠(ティツィアーノ、ティントレット、ヴェロネーゼ)の作品、②印象派の画家たちを虜にしたヴェネツィアの風景画、③ヴェネツィア様式の織物やレース、ヴェネツィアン・ガラスなどの工芸品とのことですが、個人的には、ルネサンス期だけでなく近代や現代の作品も展示していること、絵画や工芸品だけでなく写真も展示していることも見どころだと思いました。
◆ヴェネツィアの魅力、キーワードは「衰退」か
 本展ではモネやホイッスラーの作品も展示されています。彼らを虜にしたヴェネツィアの魅力とは何かと、いろいろ考えてみたのですが、最盛期には地中海の交易を支配しながらも、現在は「衰退」し「かつての栄華を偲ぶ場所」になっていることが、ヴェネツィアの魅力ではないかと思いました。
◆わずか2点だが、気になる吉田博
 本展ではモネやホイッスラーの作品に交じって吉田博の版画が2点ありました。調べると、吉田博は明治、大正、昭和にかけて風景画家の第一人者として活躍したそうで、欧米で知名度が高かったようです。2017年1月14日から2月26日まで名古屋ボストン美術館でMOA美術館所蔵の木版画会が開催されるので、ぜひとも見てみたいですね。                      Ron.
解説してくださった宮永郁恵学芸員

解説してくださった宮永郁恵学芸員

ポジション2016 作家を囲む会

カテゴリ:作家を囲む会 投稿者:editor

 新年おめでとうございます。本年も名古屋市美術館協力会をよろしくお願いいたします。

乾杯の音頭をとる佐々木会長

乾杯の音頭をとる佐々木会長


正月気分もまだ抜けきらない1月10日に、恒例の作家を囲む会が催されました。
今回の展覧会は、若手の作家を集めたポジション展。囲む会にもたくさんの作家さんが参加してくださいました。
普段、作家さんと話をする機会はなかなか持てません。しかしこの会では、作家さんと個人レベルの話をすることができるので、毎回楽しみです。

今回は2013年のトリエンナーレ出品作家でもある、米山より子さんとお話しさせていただきました。
彼女の作品は、絹糸にごはん粒を貼り付けて、まるでクリスタルのような輝きを生みだした糸を、何百本も吊るして幻想的な空間を作り出したインスタレーション。私も及ばずながら制作に加わらせていただいたので、ひと際思い入れのある作品でした。ご本人はとても気さくな方で、嬉しいことに私のことも覚えていてくださいました。また機会があればお手伝いさせていただきたいと思っています。

いつもながら、会員の皆さんが差し入れてくれる高級酒と、おはなカフェのお料理に大満足したひと時でした。
Izumin

今回も、おはなの伊藤さん手作りのお料理

今回も、おはなの伊藤さん手作りのお料理


おいしい料理に場も盛り上がります

おいしい料理に場も盛り上がります


作家のみなさんにもお話してもらいました

作家のみなさんにもお話してもらいました

「美術館の舞台裏 ― 魅せる展覧会をつくるには」 ちくま新書1158

カテゴリ:Ron.,アート見てある記 投稿者:editor

 高橋明也(たかはし あきや:1953年 東京生まれ 三菱一号館美術館初代館長)著

 名古屋市美術館協力会の楽しみの一つに、ギャラリートークや美術館見学ツアーなどに参加して、美術館学芸員から展示作品集めの苦労話や展示方法の工夫など展覧会の裏話を聞くことがあります。
 ただ、これらの裏話はあくまでも行事参加の特典(おまけ)であり、裏話をまとめて聞く機会はなかなか無いため、「何かないかな?」と思っていたところ、この本に出会いました。

 「はじめに」に書かれた「はたして、美術館と呼ばれる “ハコ”のなかにはどんな日常が繰り広げられているのか。上から下から右から左から、多面的な切り口で、普段一般の方にあまり馴染みのない美術館、展覧会の裏側をひも解いていきます。この書をきっかけに、美術館、ひいては一枚の名画の見方が変わるようであれば、それほど嬉しいことはありません。」という言葉に惹かれたのですが、期待どおりでした。

 著者の学芸員としての活動歴は35年。国立西洋美術館研究員から始まり、パリのオルセー美術館開館準備室にも在籍、国立西洋美術館学芸課長を経て、2006年に現職へ就任しています。
 「あとがき」に「筑摩書房の編集者から質問を受けながら文章をまとめるやり方をとることにした。」とあるように、「ゴッホの≪アルルの寝室≫は日本のものだった?―松方コレクション」や「日本独自の海外美術展の作り方―美術館と新聞社の深い関係」「盗難事件、まさか日常茶飯事?―コローの名画発見秘話」など、素人でも楽しめる裏話が満載です。

 なお、「素人でも楽しめる」とはいえ、力がこもっているのは学芸員の仕事に触れた「第2章 美術館の仕事、あれやこれや大変です!」です。「3 マネジメント力の重要性」を始め現職の学芸員に向けたメッセージが綴られており、「著者が一番書きたかったのはここかな?」と思いました。
 時間と懐具合に余裕がある方には、一読をお勧めします。ちなみに、この本は本体価格780円(税込842円)です。
                            Ron.