「あえかなる部屋 内藤礼と、光たち」

カテゴリ:ムービー 投稿者:editor

 名駅前の映画館で中村佑子監督の「あえかなる部屋 内藤礼と、光たち」を観た。タイトルにある「内藤礼」という作家の作品は、名古屋市美の常設展でも、時折、展示され、多少の興味を持っていたからだ。

主な舞台は瀬戸内の豊島。
とはいえ、この映画は「内藤礼」の作品紹介でもないし、制作にまつわるエピソードをまとめたドキュメンタリーでもない。
作家の「内藤礼」は、映画の冒頭にちょっとだけ出て、あとは彼女以外の数名の女性が代役(?)のように、彼女たち自身のエピソードを語る。
やりたいこと・・・。こわかったこと・・・。私以外の誰かのために・・・。
大人になったら・・・。子どもだった頃・・・。

第一印象は、「とてもきれいな映像作品」であるということ。
それ以外の印象は、まだぼんやりしていて、「なにかを包み込む力」とか「なにかに共鳴する力」のようなものを感じた。頼りないが、そのうち、もう少しちゃんとした言葉になるだろう。
そういえば、偶然、美術関係の友人にも会えたし、観る機会があってうれしい一本だった。

杉山 博之

2015 名古屋市美術館協力会 秋のツアー

カテゴリ:アートツアー 投稿者:editor

和歌山県立近代美術館にて(和歌山城をバックに)

和歌山県立近代美術館にて(和歌山城をバックに)


2015年の名古屋市美術館協力会秋のツアーの目的地は、和歌山市と堺市。参加者は30名。二日とも快晴に恵まれ、舌でも、目でも、耳でも楽しめた満足度の高いツアーでした。

Ⅰ 先ずはフレンチのフルコース
初日は、交通渋滞のため予定の30分遅れで昼食。会場は和歌山城の南のJOY味村。市美の清家学芸員のお勧めです。一時間以上かけてフレンチのフルコースを満喫。ワインを注文したい気分ですが飲んだらおしまい、「ツアーは後回し」になってしまいます。ここは我慢、我慢。

美しい盛り付け!

美しい盛り付け!


Ⅱ 建物の設計は黒川紀章
 昼食会を楽しんだため、遅れは1時間に拡大。10分ほど歩いて和歌山県立近代美術館(以下、「和美」といいます。)へ。次の見学先、和歌山県立博物館(以下、「和博」といいます。)は隣の建物。ともに設計は黒川紀章。埼玉県美、名古屋市美、広島市美に続き4番目に設計したものです。和美で見たのは和美のコレクションによる特別展「ここだけの日本画」。展示の柱は和歌山出身の作家である野長瀬挽歌(のながせばんか)、川端龍子(かわばたりゅうし)、稗田一穂(ひえだかずほ)。ほぼ貸切状態で若い女性の学芸員、藤本さんのギャラリートークを聴きました。
和博では特別展「高野山開創1200年記念 弘法大師と高野参詣」を見ました。こちらもほぼ貸切状態で、学芸課長竹中さんのギャラリートークを聴きました。
和歌山県立博物館学芸課長の竹中さま

和歌山県立博物館学芸課長の竹中さま


和博の見学後、和美に戻り常設展を鑑賞。市美の山田学芸課長が岸田劉生の代表的作である《黒き帽子の自画像》の前で佇んでいました。また、メキシコルネサンスの雰囲気を持つ作品があったので、解説を読むとメキシコ壁画運動に参加した石垣栄太郎の作品でした。他に、木版画家の逸見享(へんみたかし)の特集があり《「新東京百景」聖橋》等が目を引きました。

Ⅲ 夕食は二千坪の豪邸
夕食はがんこ和歌山六三園。がんこ寿司ですが、元は二千坪の料亭。我慢していたお酒を注文し、和食を楽しみました。料亭になる前は大阪の相場師の豪邸だったとのことで、食事後はライトアップされた庭園を散策。足元が暗く歩きにくかったことを除けば、大いに満足しました。

盛り上がる宴会、日本庭園を見ながら

盛り上がる宴会、日本庭園を見ながら


Ⅳ 和歌山城
 見学コースに入っていませんが、宿泊ホテルが和歌山城(以下「お城」といいます。)の向いだったので二日目の朝に歩きました。案内板によれば、お城の名称は「虎伏山竹垣城」で、伏虎城、虎伏城とも言うそうです。24時間開放ですが、朝早いため天守閣には登れません。なお、現在の天守閣は1945年7月9日の空襲で焼失後、1958年に再建されたものです。

Ⅴ 仁徳天皇陵
二日目最初の見学先は、大仙(だいせん)公園内の堺市博物館。展示は仁徳天皇陵と堺の歴史で、特別展は「堺復興」。徳川方と見られた堺は、大坂夏の陣の際、豊臣方の焼き討ちで焼け野原になり、その後復興。特別展では、堺炎上とその後の復興の模様を展示していました。
堺市博物館の次は、NPO法人堺観光コンベンション協会のガイドボランティア川上さん(以下「ガイドさん」といいます。)の案内で、大仙公園、仁徳天皇陵、堺市役所21階展望フロア、昼食をはさんで千利休屋敷跡、堺伝統産業会館と見て回り、ミュシャ館でガイドさんと別れました。
仁徳天皇陵では、観光客をはるかに上回る人数の清掃ボランティア「仁徳陵守り隊」が活動しており、保護活動の底辺の広さを見せられました。また、遥拝所から仁徳天皇陵を望むと、その大きさに圧倒されます。これは、現地に来ないと経験できないことです。来てよかった。
市役所では、仁徳天皇陵、応神天皇陵を含む百舌鳥・古市古墳群(もずふるいちこふんぐん)の世界遺産指定を目指すキャンペーンが掲示されていました。世界遺産に指定されたら、観光客が殺到して、ゆったりと見ることができなくなるでしょう。いい時に来ました。
堺市役所21階展望フロアは休日も開放されており、東西南北360度の眺望が楽しめます。ただ、仁徳天皇陵の全貌を見るには、まだ高さが足りません。300メートル以上の上空なら全貌が見られるそうですが、そのためには飛行機かヘリコプターに乗る必要があります。
また、ガイドさんの話では、仁徳天皇陵の南の履中(りちゅう)天皇陵(仁徳天皇の長男の墓)の方が古い形式の墳墓であるため、どちらが仁徳天皇陵か争いがあるとのことです。家に帰り、平成19年発行の地図帳を見ると「仁徳天皇陵」ではなく「伝仁徳天皇陵」となっていました。

Ⅵ 掟破りの昼食
アゴーラ リージェンシー堺の龍鳳での昼食は20分遅れで開始。飲茶料理ですが、時間がないため、「早く食事が終わるようにして欲しい。」と注文したところ、「出された料理をお客が取り分けて食べる」という方法ではなく、最初から一人前ずつ取り分けた料理が出ました。お店の人は「飲茶料理の食べ方ではない」と、渋い顔をしていたようです。確かに、ベルトコンベアーで運ばれる料理を次から次に食べている感じで余裕がなく、優雅さに欠けます。しかし、スケジュールを考えると文句は言えませんね。おかげで、お土産を買う時間が出来ました。

飲茶ランチ

飲茶ランチ


Ⅶ 質問攻めの利休屋敷跡
利休屋敷跡は元の屋敷の一部で、井戸と植木、塀だけの狭いもの。見学時間10分の予定でしたが、ガイドさんへの質問が多く、見学時間は倍の20分に延長。ガイドさんは喜んで質問に答えてくれましたが、「この団体は、一体なにものだ。」と呆れていたかもしれません。

Ⅷ 堺伝統産業館でのプチ爆買い
お土産を買いたいというリクエストに応えるため、ガイドさんの紹介で堺伝統産業館にも立ち寄りました。滞在時間20分。お目当ては餡入りの餅を芥子の実で覆った「けし餅」や青大豆の餡に白玉をくるませた「くるみもち」など。そのため、菓子類は売り切れ続出。なお、ガイドさんによると「けし餅」の小島屋は千利休が通った菓子屋だとか。堺伝統産業館では、外に堺打刃物や線香、醤油なども販売しており、和菓子製造の実演、試食(持ち出し不可)もありました。
Ⅸ ガイドさん
ミュシャ館まで同行してくれたガイドさんは知識豊富で、話術も達者。バスの中での「堺は鉄砲製造の技術を生かして日本で最初に自転車の製造を始めた町。国内生産自転車の半分以上は堺で生産されたもの。」「アサヒビールは堺が発祥の地。」など、様々な「堺自慢」は、とても勉強になりました。ですから、ガイドさんからの「皆さん、堺の街を好きになっていただけましたか。」という質問には、参加者一同、感謝の気持ちを込めて「YES!」と回答したものです。
なお、「ラジオ深夜便に出演している。」など、ガイドさんが「ただ者ではない」オーラを出していたので、「この人誰?」と思い、家で調べたところ、なんと、NPO法人堺観光コンベンション協会の理事長さんでした。それなら、納得です。理事長さん、ありがとうございました。

堺観光コンベンション協会理事長、川上さん

堺観光コンベンション協会理事長、川上さん


Ⅹ ミュシャ館
最後の見学は、「堺市文化会館 堺アルフォンスミュシャ館」でした。堺市文化会館は、高層住宅の2階から4階までを使った施設で、「カメラのドイ」の創業者、土井君雄氏から寄贈を受けたコレクションを展示する堺アルフォンスミュシャ館とギャラリーとの複合施設です。
堺アルフォンスミュシャ館は小さな施設なので歩く距離が短く、また、展示されている作品も華やかで美しいものが多く、仁徳天皇陵などを歩き回って疲れ切った体には丁度良い見学先でした。癒された感じです。

最後に
名古屋までのバスの中は、お約束の山田学芸課長によるトーク。舌と目だけでなく、耳でも満足できたツアーでした。 
                                 Ron.

仁徳天皇陵前にて

仁徳天皇陵前にて