瀬戸内国際芸術祭2010(2)-李禹煥×安藤忠雄 in 直島

カテゴリ:アート見てある記 投稿者:members

1970年前後に、石、鉄板、木材などの素材を大きく加工することなく、そのままのような状態で展示する作家たちがいた。後になって、「もの派」とカテゴライズされ、戦後の現代日本美術の一潮流となった。その代表的な作家の一人が李禹煥(Lee U fan、リーウーファン)氏である。氏の代表作を常設展示する個人美術館が、瀬戸内国際芸術祭2010の開幕に合わせて、直島に6月15日(火)開館した。設計は安藤忠雄氏である。
直島には、安藤忠雄氏の設計によって、既にベネッセハウスミュージアム(1992年)、地中美術館(2004年)の2館が、安藤作品らしい打ちっぱなしのコンクリート壁を多用して作られている。この2館は、名古屋市美術館協力会のアートツアーとして、2006年秋に訪問し、参加者にたいへん好評であった。
さて、李禹煥美術館は、山腹のバス停からコンクリートの壁に沿って下ると、広場があり、コンクリートの垂直柱と鉄板、巨大な石塊が迎えてくれる(写真下)。ベンチに座ると瀬戸内海の穏やかな海原を借景に、氏のトレードマークである鉄板と自然石が、心地よく芝生の上に配置されていることがわかる(写真上)。異質な物質を比較対照させることによって、より素材の実感を提示しているのであろう。
入館料1,000円を払って館内に入る。半地下のような館内は涼しく、靴を脱いでゆっくりと坐って鑑賞することができるスペースがある。そこは「出会いの間」と名付けられており、横になりたくなるような心地よい空間で、150号クラスの平面作品7点と出会うことができる。名古屋市美術館にも所蔵されている「線より」、「点より」シリーズの作品は優しく、理屈抜きに楽しめる。
氏の平面作品は余白が多いことから、東洋的、静寂感の極美などと論評されているが、私は、緊迫した筆致の一瞬を切り取った時間性を感じる。「線より」は薄いクリーム色の下地に、上から一気に、書き下ろした青い岩絵具による線分が、列方向に繰り返されている。システマティックと言えよう。システムとは通常、装置や組織・制度を意味するが、正しい手順や身体という意味もあるという。端正な筆致に、息を潜めた身体の規則正しい動きが推察できる。さらに「風と共に」では、筆致がより流動的となり、躍動感のある作品に昇華する。立体作品の重量感、平面作品の緊張感、いずれも見ごたえある作品である。

入倉 則夫(会員、写真は7月11日筆者撮影)

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