ギャラリートーク「村上友晴」展

カテゴリ:協力会ギャラリートーク 投稿者:editor

6月13日、日曜日、協力会総会の後に開催された学芸員の山田さんによる「村上友晴」ギャラリー・トークに参加した。実は総会前に一度見て、総会に出てギャラリー・トークに参加した。
展覧会は一言で言うと圧倒される内容であった。久し振りに涙が出そうになる作品群に出会った。最初のうちの作品は無題で,だんだんキリスト、十字架,マリアに変わっていく。それで作家がキリスト教と関わっているのだなと分かる。でも、作品の近くには作品の題、使われた絵の具等を示す小さなパネルは無く、鑑賞ガイドを見て、それを知る。時々はパネルが鑑賞の邪魔になることがあるので鑑賞には少し面倒かもしれないがいい試みだと思う。一回目の時はお客も少なく「静か」に鑑賞できた。


山田さんの解説の中の「版画」が村上にとって転機となっているという説明には頷かされた。版画を転機にその前後では作風が変わっていく。版画はどんなにやっても「人任せ」「運任せ」「神任せ」の所がある。彼が無彩色である「黒」をほんの少しずつ積み重ねていくやり方,白いアクリルを塗りそれを鋭く削った鉛筆で取るけれども本当に細い鉛筆の線が残るやり方、更には鉄筆を使って取っていくやり方は緻密な人のわざと限りない時間が要求される。

彼が黒と赤を使った作品は赤を十字架との関係で「血」と短絡的に考えやすいが、有彩色の代表と考えた方がいいとの説明にも頷かされた。無彩色の黒と白、そして有彩色の「赤」。赤は当然「明るい」に繋がる。でもどちらかというと彼の赤は漆の渋い赤に似ている。
最後の締めくくりとして、山田さんが披露した彼は結婚しているという事実、奥さんは側で鉛筆を削っているという作者との話には驚かされた。でも村上も人の子なので当然なのだけど。
また、現在、村上は白い作品を制作しているという話には何か救われた気がした。恐らくは白のアクリル絵の具を塗った紙を鋭く削った鉛筆で少しずつ白アクリルを剥がし、その残った鉛筆の跡を鉄筆で削っていく作品であろう。

山田さんの解説の一端は図録の解説で知ることができるので、今回の展覧会が「分からない」人は図録をぜひ買って読んで下さい。それと山田さんの言う様に作品の前に長いこと立って時間を掛けて見ていると何か開けて来るかもしれません。色々な知識を吸収する「お勉強」も大事かもしれませんが、それで何かを分類してしまって分かった様に思う危険もあります。今回はボランティアによる作品解説も無いので、ぜひ来て、作品と「静かに」対峙して見て下さい。

イクトス(会員)

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