「画家・櫃田伸也、自作を語る。」 講演会

カテゴリ:記念講演会 投稿者:members
あいちトリエンナーレ2010プレイベントとして愛知県美術館、名古屋市美術館共同開催「放課後のはらっぱ 櫃田伸也とその教え子たち」の展覧会の主役である櫃田さんの講演会が10月12日(月)午後2時より市美術館で開催された。
1960年代に流行した雑誌やゴダールの映画「気狂いピエロ」、唐十郎の演劇などの話題を織り交ぜながら自身の絵画への入り口を説明し、初期の壁の絵を描くに至った当時の心境を語る。
その表現方法を写真や自身の作品を例にして、わかりやすく解説。自分の住居の近所の風景から壁、草、地面、草、フェンス、山、工事現場などからヒントを得てそのイメージを切り取り、実際にそれらを絵の中に再構成し表現していく手法が語られた。
その説明が難なく私たちにも理解できたのは櫃田さんの教師としての力量の高さであると思う。斜線のある絵が「源氏物語絵巻」からヒントを得たものであったとか、風を描こうとするとワイエスの絵のようになってしまうとか、涅槃図からの着想など興味深い話が続いた。あっという間の1時間半であった。
この講演で櫃田さんの作品をより深く理解した人が多かったように思う。櫃田さんの芸術に対する真摯な姿勢と相まってその芸術的センスのするどさを実感できた講演会であった。
櫃田さんが愛知県立芸術大学で教員だった時代には、櫃田先生の授業は大人気で学生たちが我れ先にと選択を熱心に希望したという話を聞いた。納得できる話だ。彼は真の芸術家であり、また人を育てる教育者であることを強く印象づける講演会でもあった。
子供や学生からの質問にも真正面から受け入れまじめな態度で、適度なユーモアを交えて答えるなど本当にチャーミングな画家であった。
谷口 信一